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Ⅰ 1-4

 実はあれは日頃から節制していないと着こなせない、プロポーションがダイレクトに反映される為にキレイに見せられない。…のではあるが、実は其れ以前に着ること自体も中々に難しい衣装なのである。そこのところはSpeed〇社のレ〇ザーレ〇サーを着用する場合を考えてみるが良い。体重が数百グラム違う事で着用の難易度が激変してしまうので、此の貴教が着こなしてきたうちで最も有名な、あの幅広の黒いゴムテープを全身に巻き付けた様なコスチュームでの出演オファーに関しては彼自身が――当時はまだ痩せっぽちだったにもかかわらず――「時間に余裕を頂けますようお願い申し上げます」と発信していた程である。

「それとも何か? ゴ〇ウの方が好みだってか?」

 この場合のゴ〇ウとは孫〇空の方では無い。あの有名な亀〇流のオレンジのやつでは無いのだ。オレンジは貴教のフェイバリットカラーではあり、今現在日本でパーソナルカラーがオレンジであるところの二強といえば、ザック・セ〇バーJr.と彼以外ではあるまい。だが、ここでいうところのゴ〇ウとは風林寺〇空の事である。貴教は裸ジャケット&裸ネクタイの着こなし手としても世に名を馳せているのだ。人前に出る時、自分の中で針が降り切れていないと出来ない恰好ではあるのだが。

 しかしここでまた、保守的な土地柄の公務員の両親譲りの、どうしようもない位の生真面目さが彼を思い止まらせる。

 T.〇.R.は貴教一人のみならず――

「…俺は沢山の従業員とその家族を抱えているし、支えられている…」

 何がどうなってどういう事になっているか全く察しがつかなかったが、ここは自重すべきだと判断した。敏腕経営者としての感であろうか?

「短慮はいけない」

 貴教はいちロックシンガーとしてよりも代表取締役社長として振る舞う事とした。

「“あの方”というのも気になるし」

 スーツに身を包みネクタイをキュッと締め、ウオークインクローゼットから出てくると、

“テ〇アイ”達が姿勢を正し横一列に整列して待ち構えていた。嫌な予感がする。だって此れはまるで、鶴〇浩二が出演していそうな任侠映画の一場面――ムショでの刑期を終えた兄貴の鉄扉の外でのお出迎えするシーンを連想させたんだもの。だけれども、同時に貴教には解る。例え黒服どもが黒のサングラスをしていようとも。その奥底に在る瞳というものが。

(俺を見張る奴らの眼にはこちらに対する敬意などない。

奴らにとって俺はアニキじゃあない)

 「だとしたら」、と貴教は思った。

(何でこいつらこんなにキッチリしているんだ?)

 後ろに手を組んでいるところなど、まるでフリーキックに対して作られた壁である。だとすれば、ゴールマウスに相当する位置にあるのは玄関であった。

(視野を閉ざしている? 何かを隠しているのか?)


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