『二日目』
朝:ロイヤル流・ティータイムは戦場!
「殿下、本日は新しく入荷しましたハーブティーをご用意いたしました」
いつものように完璧な笑顔で、ロイヤルは湯気の立つカップをアレクサンダーの前に置いた。アレクサンダーはまだ寝ぼけ眼で、ぼんやりとカップを手に取る。その瞬間、カップの底から微かに、しかし確実に不穏な音がした。
「あれ?ロイヤル、このカップ……震えてない?」
「気のせいでございます、殿下。それよりも、このお茶はリラックス効果がございますので、どうぞごゆっくり」
ロイヤルはにこやかに答えるが、その手はすでに別のカップに用意されていた液体窒素入りのスポイトを握りしめていた。アレクサンダーが口をつけようとしたその時、カップの底が突然弾け、中から小型のドローンが飛び出した! ドローンはブーンと音を立てながら、アレクサンダーの顔めがけてまっしぐらに向かってくる。
「ひぃっ!まただ!」
アレクサンダーが悲鳴を上げる間もなく、ロイヤルは素早くスポイトを傾け、正確にドローンのカメラ部分に液体窒素を命中させた。 ドローンは瞬時に凍りつき、床に落ちて粉々に砕け散る。
「あらあら、失礼いたしました。どうやら、新商品の品質検査が不十分だったようです。代わりに、殿下のお好きなロイヤルミルクティーを淹れ直しますね」
何事もなかったかのように砕けたドローンを箒で掃きながら、ロイヤルは優雅にティーポットを傾ける。アレクサンダーは震える手で、改めて淹れられたミルクティーを口にした。今度こそ、ただの美味しいお茶だ。
昼:王子の図書館、今日も事件は隣り合わせ!
「殿下、本日午後は、ご希望の書物を探しに王宮の図書館へ参りましょう」
午後の穏やかな日差しの中、ロイヤルはアレクサンダーを誘った。図書館ならば、比較的安全だろうと安堵するアレクサンダー。しかし、彼の甘い期待はすぐに裏切られることになる。
図書館の広大な書棚の迷路を進むうち、突然、天井から大量の古びた書物が一斉に落下してきた!
「うわあああ!」
砂埃が舞い上がり、アレクサンダーは目を閉じて身をすくめる。しかし、衝撃は来なかった。恐る恐る目を開けると、そこには両腕で山のような書物を受け止め、涼しい顔で立っているロイヤルの姿があった。
「危ないところでございました、殿下。この書棚は構造が脆いようですね。後ほど、補強工事の手配をいたします」
ロイヤルは事もなげに書物を元の場所に戻していく。だが、書物を並べ終えたロイヤルの背後から、ひっそりと忍び寄る人影がいた。それは、図書館の管理人の服装をした男だった。男は無言で、ロイヤルの首元に鋭い刃を突き立てる。
しかし、その刃がロイヤルの肌に触れる寸前、ロイヤルはまるで背中に目があるかのように身を翻し、男の手から刃物を奪い取った。 奪われた刃物は、次の瞬間には男の首元に逆手に握られ、その動きはまるで舞踏のようだった。
「図書館内での刃物の使用は禁止されております。お静かに」
ロイヤルは微笑んだまま、男の襟首を掴み、そのまま図書館の窓から静かに放り投げた。 男は驚くべきことに、窓の外に広がる王宮の庭園の、柔らかい生垣の上にふわりと着地する。
「殿下、探していた書物はこちらでよろしいでしょうか?最新の歴史書でございます」
ロイヤルは何もなかったかのように、目的の書物をアレクサンダーに差し出した。アレクサンダーは、未だに震える手でそれを受け取る。図書館でのひと時は、今日もスリルに満ちたものだった。
晩:夜の静寂は束の間、ロイヤルの警戒は最高潮!
「ロイヤル、今日も一日お疲れ様……」
アレクサンダーはベッドに横たわり、今日の出来事を思い出しながら、疲れたように呟いた。ロイヤルは静かに彼の部屋を出て、王子の安眠を守るための夜間警備へと移る。
王宮の廊下は静まり返っているが、ロイヤルは微かな異音を捉えた。それは、壁の奥から聞こえる、機械仕掛けの歯車の音だ。ロイヤルは壁にそっと耳を当て、その音の発生源を探る。そして、王宮の最下層にある、滅多に使われない地下通路の入り口にたどり着いた。
入り口の扉を開けると、そこには天井から無数のレーザーが張り巡らされた、まるで迷路のような通路が広がっていた。レーザーに触れると警報が鳴り響く仕組みだろう。しかし、ロイヤルは表情一つ変えない。
ロイヤルは、まるで空気と一体化するように、わずかな隙間を縫ってレーザーの網を潜り抜け、複雑なトラップを次々と解除していく。 その動きはしなやかで、見る者を魅了するほどだった。通路の奥には、王子の寝室直下へと続く隠しエレベーターがあった。そして、そのエレベーターの操作盤の前に、厳重な警備服を着た一団が待機している。
「あら、ご苦労様です。夜分遅くに、一体何の御用で?」
ロイヤルはにこやかに話しかけるが、その目には一切の容赦がない。警備服の一団は、ロイヤルの突然の出現に驚き、一斉に武器を構えた。しかし、その動きはロイヤルの比ではなかった。
ロイヤルは一瞬で敵の懐に飛び込み、それぞれの武器を巧みに奪い取り、あっという間に全員を拘束した。 彼女の動きは、まるで熟練の職人が精巧な機械を組み立てるかのように、寸分の狂いもなかった。
「殿下のお邪魔はさせません」
ロイヤルは、拘束した一団を地下通路の奥へと閉じ込めた後、隠しエレベーターの機能を完全に停止させた。そして、再び王子の部屋へと戻る。
アレクサンダーは、今日も穏やかな寝息を立てている。ロイヤルは、彼が熟睡していることを確認すると、そっと窓辺に腰を下ろした。夜空には星々が瞬き、王宮は静けさに包まれている。
最強のメイド、ロイヤル・バッケン・ノヴァの夜は、今日も平和のために続いていく。