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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第三百話 正妃は面倒くさい


 ルディの心底どうでも良い――まあ、本人的には幼馴染のアインツが義弟とか結構本気でイヤだが――アベルにとってはどうでも良いルディの発言に小さくため息を吐く。


「まあ、その辺りの所は置いておけ。ともかく、メアリはハインヒマン侯爵家の養女としてルディに嫁ぐ。これは決定事項だ」


「構いませんが……メアリの実家は大丈夫なのでしょうか?」


「大丈夫だろう。報告自体はこれからだが……イヤとは言わんだろう」


「権力的にも、家の為的にも?」


「そうだ」


 男爵家から見れば雲の上の侯爵家からの養子縁組、それも、次期国王の側妃含みだ。男爵家が異議申し立てなんて出来る訳も無いし、そもそも。


「……結納金は弾むか。流石に爵位を上げるのは難しいが……どこかの領地の一つや二つは王家領から出さなければならないだろうな」


「……ご迷惑お掛けします」


 王太子たっての希望での輿入れなのである。名誉は勿論、即物的な利益も、今後の家の『勢い』的にもこれ以上は無いだろう。


「まあ、そちらは任せておけ。それで……正妃について、だが……」


 アベルの言葉に、ルディが少しだけ困った表情を見せる。そんなルディの表情に、アベルはピンときた顔を浮かべて見せる。


「揉めているのか?」


「ええっと……まあ、はい」


 眉根を下げるルディに、アベルは苦笑を浮かべて見せる。


「まあ、そうだろうな。それならこちらで判断するぞ? 正妃はクリスティーナ姫だ。こればっかりは譲れん」


「……クリス、ですか」


「不満か?」


「いえ、不満では無いですし、その……やはり他国の第一王女ですから。家格的にもそれが一番かな、とは思っています。思っていますが……説得が大変だな、と」


 眉根を下げたままで言葉を続けるルディに、アベルの苦笑の色が濃くなる。


「そこを上手く説得するのが旦那の腕の見せ所だろう?」


「お言葉ですが父上? 父上はその様な『手腕』をお持ちなのですか? 父上の妃は正妃たる母上だけでは無いですか」


 じとっとした目を向けるルディに、アベルがそっと視線を逸らす。この男、腕の見せ所とか言いながら自分は妻一人なのである。そら、ルディに偉そうにああだこうだ言える立場では無いのだ。


「ま、まあそこの所は上手くやりなさい……と、言いたい所だが、今回は心配いらん」


「心配いらない?」


「ああ。アルベルトはクリスティーナ姫が正妃であることに関しては異論はないとの事だ。クラウディア嬢が側妃で問題ないと言質も取っているからな。家の問題は何もない。だから、お前がするのはクラウディア嬢の説得だけだが……まあ、お前の事が幼いころから大好きなクラウディア嬢の説得だ。簡単な仕事だろう? ルディが白と言えば、カラスも白くなるんじゃないか、クラウディア嬢は」


 アベルも小さい頃から――まあ、このころはエディの嫁としてではあるが、ともかく義娘になるディアの事を可愛がっていたし、何よりたまに見せる……なんというか、『情念』みたいなものが混じるクラウディアの視線を知っているのである。ルディ大好きっ子であるディアなら、ルディが『側妃でお願い』なんて言えば『喜んで!』くらいは言うのは知っているのである。


「……」


「……うん? なんだ? そんな難しい顔をして。クラウディア嬢だぞ? 正直、お前と結婚できるなら正妃だ側妃だなど、小さい問題だと笑い飛ばしそうなものだが……違うのか?」


 アベルの言葉に、ルディは小さく首を左右に振って見せる。


「いえ……そうですね。有難い話、ディアは僕の事を好いてくれているので……まあ、側妃だとしても問題は無いでしょう。どこのプレイボーイの話なんだ、という話ではありますが……」


「……ほんとだぞ、おい。なんだ、そのモテ男みたいなセリフは」


 ルディの、聞きようによればナルシスト要素満載の発言に少なからず引くアベル。なにが怖いって、クリス、ディア、メアリに本当にモテてて、王城内にファンクラブまであるから、あながちモテ男で間違いないのが怖い。どこが平凡王子だ。


「……まあいい。それでは問題が無いだろう? クリスティーナ姫が正妃で」



「嫌がるんです」



「――問題は……は? 嫌がる、とは?」


「だから……クリス、『正妃はめんど――じゃなかった、国外の者である私よりも、クララがなった方がよろしいでしょう? そもそも公爵家と他国の王家ならば、そこまで差もありませんし? それで良いのでは無いでしょうか』って……正妃になりたがらないんですよ」


「……はい?」


 ルディの言葉に、アベルの目が点になった。


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