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第二百八十六話 国家存亡の危機!


 ディアの目のハイライトさんがストライキを起こし、メアリの部屋の空気が地獄の様相を呈していた同時刻。


「それで……ルディが王位を継ぐのか?」


 ルディの私室に遊びに――というより、とある相談に訪れたエルマーが紅茶のカップを傾けながらそう聞いていた。そんなエルマーの声に、少しだけ照れた様に視線を逸らしてルディも紅茶のカップに口を付ける。


「……軽蔑する?」


「なにがだ?」


「なにがって……ほら、アレだけ王位なんて継がないって言ってたのに、急に王位を継ぐって言いだして、しかもその理由が……」



 女の子の為だなんて、と。



「別に構わんだろう?」


 そんなルディに何でもないようにそう返して、エルマーは紅茶のカップをテーブルに置いてじっとルディを見つめる。その視線に少しだけむず痒そうに身を捩らせてルディは口を開く。


「……なに? そんなじっと見つめて? 僕、そんな趣味は無いけど」


 あくまで冗談。そんな冗談に、エルマーは慌てた様に手をバタバタと振って見せる。その動揺した仕草に、ルディの視線に疑惑の色が混じる。


「………………え?」


「ち、違うぞ!! ルディ、勘違いするな!!」


「あー……いや、うん。人の趣味嗜好は自由だし、恋愛の形は色々とあると思うから……別に問題は無いけど……あの、さっきも言ったけど、僕にそんな趣味は……」


 エルマーが男色でもルディ的には問題ない。現代日本で教育を受けた事もあるルディ的には人それぞれ、それはそれで別に否定はしないが、自身が思いを寄せられるとなると話は別だったりするのだ。


「……その、エルマー先輩の事は嫌いじゃないんだけど……そういう目では見れないっていうか……」


「だから!! そうじゃないと言っているだろう!!」


「……んじゃなんで慌てたのさ?」


 ルディの言葉とジト目に、エルマーは何かを伺うように視線を左右に揺らして。




「その……ユリア嬢が」




「――把握」


 エルマーのその一言でルディもエルマーの現状を把握する。把握して、その上でエルマーにジト目を向ける。


「……っていうか、ユリア先輩が僕とエルマー先輩の仲を疑うとかあるの? 流石にそれはエルマー先輩が邪推しすぎじゃない?」


 もっともと言えばもっともなルディの言葉。その言葉に、エルマーは小さくため息を吐く。


「……まあ、普通に考えてあり得ないだろう。俺とルディは小さな頃からの幼馴染だし、きちんとお互いに友人として接して来たという自負がある。お互いに……まあ、なんだ? 女の子が好きだしな」


「そうだよね。まあ、エルマー先輩からそんな言葉が出てくるとは思わなかったけど」


「俺もそう思う。まあ、それは良いだろう。少しばかり照れくさいしな。それよりも問題はユリア嬢の方だな。こう……なんだ? ユリア嬢は俺に対して……なんというか……」


「ベタ惚れだね」


「べ――……ま、まあ有難い話、俺の事を好いてくれているとは思う」


「あれ、好いているってレベルじゃないでしょ? もう結婚一直線じゃ無いの、エルマー先輩? もしかして反対……というか、あんまり乗り気じゃなかったりする?」


 ルディのその言葉に、エルマーの頬が引き攣った。その引き攣った頬のまま、エルマーは言葉を継ぐ。



「……今更そんな事を言ってみろ。明日の朝、ラージナル大橋の下で俺の体は冷たくなっているぞ? 主に、バーデン家の手の者に寄って」



「……酷い」


 酷い話である。


「……ねえ、エルマー先輩? もし、本当に乗り気じゃないなら言ってくれればなんとかするよ? ユリア先輩はそりゃ、ちょっと可哀想だけど……でも、それって別にエルマー先輩のせいじゃないしさ?」


 流石にエルマーが乗り気じゃないのに、ユリアと無理矢理結婚は可哀想だ。貴族社会、政略結婚は当たり前だとしても、である。そんなルディの言葉に、エルマーは苦笑を浮かべて見せる。


「……心配と配慮に関しては礼を言っておくが……まあ、ユリア嬢――ユリアとは幼いころからの知り合いで……俺も、その……す、す……す……憎からず思ってはいる!!」


「……このヘタレ陰キャ」


 ルディのジト目に、思わず『うっ』と息を呑むエルマー。それも一瞬、コホンと咳払いを一つ。


「ま、まあそれはともかく、だ! 俺だってユリア嬢の事は憎からず思っている。思っているが……」


 愛され過ぎている様な気がして、と。


「…………なに? 自慢? 『俺、こんなに愛されているぜ!』みたいな事を言いたいの? そういう話なら他所でやってくれる? そんな話――」




「――考えて見ろ? 俺とお前の間ですら邪推するんだぞ、ユリア嬢。不本意ながら、俺も近衛騎士団への就職が決まった。近衛だぞ? 幾ら第二、技官とはいえ、演習や野営には付いて行く必要はあるだろう。いや、むしろ故障のリスクがある演習なんかは付いていかなくてはいけないだろう? いいか? もう一度言うぞ? ユリア嬢は俺とお前の間すら疑ってるんだぞ? そんなユリア嬢に、『野営で数日間、留守にする。寝泊まり? 雑魚寝だな』なんて言ってみろ?」




「――それは早急に解決する必要があるかも知れないね!!」


 ガチでヤバ目の話だった。主に、近衛の存続にすらかかわるほどの。



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