表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

191/256

第百九十話 国家機密の仲


「……すみません、リーナ様。少し、タイムを」


 エカテリーナにそう断って、視線をクラウスに送りながらその場を離れるディアとクリスティーナ。きょとんとするエカテリーナを置いて、クラウスの側まで寄って。


「……喋りました、クラウス?」


「なにを? と聞きたい所だけど……あれだろ? クラウディアとルディの事だろ?」


 クラウスの言葉に首肯するディアとクリスティーナ。そのまま、ディアは口を開く。


「ええ。正確には、確実に当てられた訳では無いですが……え? クラウス、喋ったのですか?」


「喋れる訳ねーだろうが。喋れる訳、ねーんだけど……」


 そう言って視線を中空に送るクラウス。その仕草に、二人が首を傾げる。そんな二人の仕草にため息を吐きつき、クラウスが口を開いた。


「……なんて言うんだろうな? アイツ、こう……昔から勘が良いっていうか……あいつに隠し事してもすぐばれるっていうか……」


「そうなんですか?」


「ああ。なんだろうな? 野生のカンっつうか……ともかく、そんな感じで結構鋭いんだよ、あいつ」


「野生……」


 クラウスの言葉に視線をチラリとエカテリーナに移すディア。そこには相変わらずのきょとん顔でこちらを見つめる愛らしい令嬢の姿があった。


「……野生の対極の様な方では? リーナ様」


「あれ、猫被ってるぞ? 本当のあいつは……というか、俺と二人の時とかはもうちょっとざっくばらんというか……そんな感じだからな」


 そう言って再度ため息を吐くクラウス。


「だから喋ってねーよ。さっきも言ったけど、喋れる訳ねーだろうが。クラウディアがルディに惚れてる、なんてよ。下手すりゃとんでもねー事態になるかもしれねーだろうが」


「そこまではどうかと……でもまあ、決していい話ではないかも知れませんね」


 クリスティーナの言葉に、ディアも黙ってうなずく。弟の婚約者なのに、実は兄に懸想していました、なんてスキャンダルもいいとこだし、決して褒められた事では無いからだ。


「……一つお聞きしたいのですが」


「どうした、クラウディア?」


「その……リーナ様、口は堅い方でしょうか?」


「……喋るつもりか?」


「ええ。その……リーナ様とはこれからも『仲良く』して行きたいと思っておりますので。出来れば隠し事はあまりしたくないのですが……」


「そうですね。私もそれは思います。リーナ様はクラウスの幼馴染なんでしょう? クラスは違いますが、これからは共に行動することも多くなるのでは無いでしょうか? それなら、仲良くなった方がメリットが――」


 そこまで喋り、クリスティーナは口を噤む。


「――まあ、そういう話は置いておいても、純粋に私もリーナ様とは仲良くしたいですし」


 クリスティーナの言葉に少しだけ驚いた表情を見せた後、クラウスは嬉しそうに頬を緩ませる。


「……ああ。そうしてやってくれ。あいつ、殆ど領地に引き籠りみたいなもんだったしな。友達も居ないから、仲良くしてやってくれたら俺も嬉しい」


「あらあら? 保護者面ですか、クラウス?」


 そんなクラウスに、揶揄うようにそう言って見せるディア。そんなディアに苦笑を浮かべながらクラウスは口を開く。


「保護者って言うつもりは無いけどよ? まあ、心配は心配なんだよな。妹分みたいなもんだし、楽しく学園生活を――なんだよ、二人とも? そんな顔して」


 クラウスの言葉にディアとクリスティーナは微妙な笑顔を浮かべて目を見合わせる。


「これは……先が長いかも知れませんね、リーナ様も」


「まあ、朴念仁っぷりではルディと並びますからね、クラウスは。先も長くなるでしょう」


「……なんか馬鹿にされている気がそこはかとなくしないでも無いが……まあ、いいや。ともかく、少しでも仲良くしてやってくれたら俺も嬉しい。リーナも口が堅い……つうか、人が嫌がる事をする奴じゃねーし、黙っておいてくれって言ったらきっと黙っていてくれると思うぞ?」


「そうですか。それではお話しても大丈夫そうですね。お任せください、もっと仲良くなってきますので」


 クラウスににっこりと綺麗な微笑を残し、ディアとクリスティーナはエカテリーナの元に歩みを進める。


「ただいま戻りました、リーナ様」


「あ、お帰りなさい、クララ様、クリス様。さっき、クラウスの方に歩いて行かれてましたけど……何をお話されていたのですか?」


「リーナ様ともっと仲良くする方法ですよ」


 そう言ってディアはにこやかに微笑む。


「私ともっと仲良くなる方法……ですか?」


「ええ。古今東西、女の子は甘いお菓子と素敵な殿方のお話で仲良くなれると相場が決まっています。なので、私、もっとリーナ様とお話したいなと思いまして。今以上に仲良くなるために」


「あ、コイバナですか!! うわ、うわ!! 私、昔から少し憧れてたんです!! 領地の周りには同年代の女性の方はおられなかったので、コイバナってしてみたいと――」




「国家機密の話です」




「――謹んでごめんなさい。そして、国家機密で仲良くなれる仲ってなんなんですか!?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ