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第十話 アインツとクラウス


 ディアとメアリが二人で悪巧みをしていた同時刻、ルディは王城内を歩いていた。近衛騎士団長の次男であるクラウス・ルートビッヒと、宰相の長男であるアインツ・ハインヒマンの二人を探すためだ。


「……あ! おーい、クラウス! アインツ!」


 王城内を歩くことしばし、中庭にて目当ての二人を見つけるとルディはぶんぶんと手を振ってそちらに歩く。ルディの声に、中庭で話をしていた二人はそちらに視線を向ける。


「おう、ルディ!」


「どうした? 何か用か?」


 二人してこちらに振り向くクラウスとアインツ。その二人に笑顔を浮かべてルディは近付いて。


「……本当に似ているよね、君たち」


「……お前も人の事は言えねーだろうが」


「……私とお前らに血の繋がりは無い。そしてその話は止めようじゃないか。忘れたのか? あの惨劇を」


 疲れた様なクラウスの声と、視線を逸らすアインツ。そんな二人の言葉――主にアインツの言葉に、ぶるりとルディは体を震わせる。


「……酷い話だったね、あれは」


 彼らが初めて出会ったのは五歳、今から十年前。ルディとエディの御学友候補という事で二人が王城に出仕した時だ。国王陛下の『面を上げろ』の声に、クラウスとアインツが顔を上げて。



『『『『………………は?』』』』



 謁見の間の空気が凍った。クラウスとアインツ、ルディとエディの四人の顔が『四つ子』と言われても可笑しくないほど、そっくりだったからだ。


 ……ルディもある程度、覚悟はしていたのだ。


 この世界の元ネタである特級呪物乙女ゲー、『わく王』は『昭和ギャグ漫画の六兄弟』とか、『間違い探し』と言われるほど、キャラの描き分けが出来ていなかったのだ。ある程度似ているだろうな~と想像はしていたが……というやつである。



『陛下! この子たちは陛下の隠し子なのですか!!』

『ち、違う! 余は浮気なんかしていない! 誤解だ!!』


『これはどういうことだ!! まさか……お前!! 陛下と……』

『失礼な事を仰らないで!! 私は誓って貴方以外を愛していません!!』


『……』

『あ、貴方!! 違います!! 絶対に違いま――あ、貴方? い、意識が!! お医者さま!! お医者さまぁーーー!!』



 謁見の間は阿鼻叫喚の地獄絵図であった。謁見の間に詰めていた重臣たちも右往左往、この地獄が永遠に続くかと思われていたのだが。


「……ルディが居なかったらどうなってだろうな、あの時」


「……怖い事を言うな。私の父上はあれから三日三晩、寝込んだんだぞ?」


「俺ん所も母上が無茶苦茶怒ってな~……その後、なんかでっかい宝石買って貰ってホクホク顔だったけど」


「平和で良いじゃないか」


「……」


「……なんだ?」


「いや俺、弟いるだろ? こう……色々考えるとよ? 生まれた日にち的に、こう……あの日の夜が怪しいというか……」


「……それ以上は言うな。仲良きことは良き事ではないか」


「だ、だよな? ははは」


「ははは」


「……」


「……」


「「……はぁ」」


 仲直りした夜は色々とアツイ。もう初心な子供ではないクラウスとアインツ、二人して乾いた笑いを浮かべ、ため息。そんな二人に苦笑を浮かべて、ルディは口を開いた。


「まあ、その話はいいじゃん。それより! 君たちも知ってるよね?」


「知ってる?」


「ほら! エディの入学式での『あれ』!」


「「……ああ」」


 ルディの言葉に二人して顔を見合わせてため息。『お前から喋れ』と二人で顔を見合わせることしばし、アインツが呆れた様に口を開いた。


「……余計な事をしてくれたものだ、あのポンコツ王子。アイツのせいで父上は昨日から事後処理の為に王城に詰めっぱなしだ」


「お前ん所もか。ウチも父上が王城に詰めっぱなしだ。クラウディアの所が短慮起こすとは思えんけど……まあ、一応な。おかげで母上の機嫌が悪い、悪い。昨日の晩は久々に二人で観劇に行く予定だったらしいから……弟に言われたよ。『兄上ばかりズルいです! 兄上は明後日から学園の寮に入るから大丈夫でしょうけど、俺はずっと母上のご機嫌取らなくちゃいけないんですよ!』って」


「……なんか、ごめん。ウチの弟が」


 疲れた表情を浮かべる二人にルディが頭を下げる。そんなルディに、二人揃って苦笑を浮かべて見せた。


「気にすんな。ルディが悪い訳じゃねーしな」


「そうだぞ、ルディ。お前が頭を下げる必要はない。下げるならエディが下げるべきだ。無論、私達ではなく、我々の父上に、だが」


「その通りだ。それに……まあ、なんだ? なあ、アインツ」


「ああ……まあ、エディの気持ちも分からないでも無いしな」


 二人で顔を見合して微妙な顔を浮かべて見せる。そんな二人の表情に、ルディがきょとんとした顔を向けて首を捻る。


「ええっと……エディの気持ちが分かる? どういうこと? まさか二人……エディの味方なの? あんな酷い事したエディの味方するの?」


 段々ジト目になるルディ。そんなルディの視線に『うっ』と言葉を詰まらせ、二人は顔を見合わせる。


「いや、別にエディの味方をする……訳でもないんだけどよ……『あの』クラウディアの婚約者なら、まあ、分からんでもないというか……」


「……そうだな。エディの味方をする訳ではない。する訳では無いが……『あの』クラウディアの味方をするのも、こう……なんというか、今までのエディを見ていると薄情な気もして……」


 なんとも煮え切らない二人。そんな二人に、ルディは少しばかり不満そうな表情を浮かべ。




「なに言ってるんだよ、二人とも! 一番可愛そうなの、ディアじゃん! ディア、あれだけエディの事大好きなのに!!」




「「え? 何言ってんの、お前?」」



 二人の声が、綺麗にハモった。



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