第十六話 老ハンターの想い
悪魔が目覚め、この世界で蠢く。今日もひとり、新たな犠牲者が命を奪われる。
今はまだ夜しか顔を出さない魔性だが、近いうちに昼間にも出てくるだろう。
目前で繰り広げられる魔性の饗宴。止めようとすれば止められるのに、わたしの意志は揺れている。
新たな呪縛の中で、自分の想いに反して悪魔の手足となってしまう。あれの企みはわたしを完全に支配し、あまつさえ協力者に仕立てた。
わたしの行為をあの方はどのように感じているだろう。すべてを見透かすようなまっすぐな瞳に見つめられて、わたしは思わず顔を背けてしまった。
わたしはだれを守ろうとしているのだ?
彼女の魂はとうに捉えられてしまった。わたしの躊躇いが原因で穢され朽ち果てていったというのに……。
それでもわたしは、あれが同じ顔をしているというだけで、闇に還せない。
愚かな男。堕ちてしまいハンター失格となったこの身は、何をなせばよい?
死の影を感じるこの歳になって、今さら命が惜しくなったわけでもあるまい。年老いた身体で、夜の世界を彷徨うつもりなどない。
朽ち果てることに、恐怖を感じているのか?
魔性に導かれ、夜の世界に行きたいと望んでいるのか?
この期に及んで、命に未練があるというのか――?
あの方に頼ることはできない。これはわたしのやり残した仕事なのだ。まだ良心が残っているなら。まだハンターの誇りを失わないでいるなら。
わたしはわたしの手で、あれの息の根を止める。未来永劫、呪いを残さないために。
守れなかった人々の魂を救うために。
自分自身の尊厳のために。
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