「あったか王国」
「あったか王国」
暖かい風が電気ストーブから出る。
おばあちゃんちの和室は古くてホコリ臭い、壁も薄いから、冬はとても寒いんだ。蛍光灯の優しい明かりが和室に広がる。こじんまりとしたこの部屋の中では、電気ストーブの周りだけが暖かい。夜七時のおばあちゃんちは静かで、ストーブの周りの暖かい空間は僕だけのものだ。だから、何だかとっても居心地が良いんだ。
ガチャっと扉の開く音が聞こえた。おばあちゃんが買い物から帰ってきたんだ。電気ストーブ王国を捨て、おばあちゃんの元へ走る。
「にゃあにゃあ」
おかえり、おばあちゃん。
おばあちゃんは「ただいま」とゆったり言うと、僕の背中をわしゃわしゃと撫でた。