最終話 光り輝く未来へ
あれから一週間が経過し、俺たちは穏やかな日々を送っている。
相も変わらず俺はスライム狩りを続け、レベルは200を超えた。その傍らで、メアリさんにスキルの鍛え方を教えているのだが、これが中々に難しい。というのも、スキルというのは感覚的な要素が大きいのだ。
だから「ぶわあーっと!」とか、「ドッカ―ンっと!」みたいな、抽象的な言葉でしか教えられないのだ。メアリさんも頑張っているが、中々に俺の言う感覚を理解できずに苦労している。
リリルは御者の仕事をやめ、元々目指していた冒険者になるべく、俺の元で修行をしている。つまりは弟子二号といった感じだな。一生懸命な姿は実に可愛らしいものだ。
サタナとヴィーナはいがみ合っているように見えて、実は意外と相性がいいみたいだ。お互いにお互いを認め合っているというか、彼女らの口から発せられる毒は信頼関係が前提にあってこそなのだと、俺はそう理解した。
そしてノエルは。
マナクルス魔法学園で魔道具について学びつつ。
必ず金クラスのトップとして卒業してみせると俺に約束したのだった。
その際レックが放った言葉に、俺は思わず笑顔になってしまった。
「あ~、なんつうかアレだアレ。まあ、な。属性に人間性は関係ないっつ~か。ま~色々あって俺も教頭になるみたいだし? 差別がなくなるよう頑張るっつ~か。だからよ、お前も冒険者として……」
照れた様子のレックをノエルがつんつんと小突く。
レックは頭を掻きむしりながら、「だ~~~」と呻いた後、
「お前も頑張りやがれ! こいつの事は俺が責任もって面倒見てやる!!」
叫ぶようにそう言うのだった。
二人が仲良くなった、ということでいいのかな?
もし、その要因にほんの少しでも自分が絡んでいるのならば。それほど嬉しいことは無いな。
そんなことを、俺は思った。
☆ ☆ ☆
そしてある日。
俺たちはある衝撃的な事実に直面していた。
「そういえば、私たちってパーティ登録してなくないですか?」
メアリさんのひょんな言葉。
それがキッカケだった。
「そういえば、そうでひゅね」
「うむ。それは由々しき事態じゃの」
「めっちゃビビるんですケド~」
ああ、まさかこんな基本中の基本を忘れていただなんて。
俺自身がスカウトされた身であるということもあり、すっかり忘れていたのだ。
というわけで、ここからは長い長い会議がなされた。
何故なら、パーティを登録する為にはパーティ名を決めなくてはならないから。
様々な案が、それぞれの口から飛び交ったのだが。
各々が自分の主張を通したがるのでまるで話が進まない。
そんな時、酒場兼カフェに一人の少女がやってきた。
「おお! 久しぶりだな、ノエル」
久しぶりとは言っても、二週間ぶりくらいなのだが。
「どうしてここに?」
ノエルはあっけからんとした様子で言った。
「ん? レイン君の顔を見たくなってね。言ったじゃないの、時々は会おうねって」
そう言えばそんな約束もしたな。律義に守ってくれるとはいい子だ。
俺もたまにはマナクルス魔法学園に顔を出さなければ。地味に、レック先生のことも気に入ってるし。
「え? パーティ名?」
ノエルを含めた会議は、さらに二時間を要した。
だが、その甲斐もあって、ついにパーティ名が決まったのだった。
その名は。
光輝なる未来。
来年には俺のパーティに加入すると。
ノエルはそう断言した。
だから、それも踏まえての命名だ。
前世で神を冒涜?
闇を信仰する魔族の王?
過去に教え子を亡くした?
聖剣に封印されていた?
子供なのに働いていた?
……そして。
パーティを追放され殺されかけた?
それがどうした。
そんなの関係ない。
俺たちは今、生きている。
今を必死に生きている。
見据える先は未来。
どんな未来が待ち受けているかは分からない。
でも、どんな未来であって欲しいか。
それを願うことくらいはできるだろう?
暗い過去を消し去ってしまうくらいに明るい未来が。
そんな未来が待っていますように。
そんな未来をみんなで歩いていけますようにと。
そんな願いを込めて。
光輝なる未来と、俺は名付けたのであった。
☆ ☆ ☆
その後のことを少し語ろう。
パーティ名が決まったその日の夜。
酒場のテラス席にて、俺は二人の女性に告白された。
一人はメアリさん。そしてもう一人はノエルだ。
「ずっと好きでした。レインさんの相談に乗った、あの時から」
顔を赤らめながらメアリさんが言う。
「私も。レイン君は恩人だって思ってたけど、気付いたらその気持ちが好きに変わってたの」
ノエルの頬にも仄かな赤みが差していた。
正直に言うとかなり嬉しい。
舞い上がってしまいそうなくらいに。
だが、俺は――。
「ありがとう、二人とも。凄く嬉しいよ。でも、俺は誰か一人を選ぶことは出来ない。メアリさんのことも、ノエルのことも、サタナのことも、ヴィーナのことも、リリルのことも」
俺はみんなが大好きなんだ。
だから。
冒険者として、仲間として、これから先の生涯を共にしよう。
俺が言うと、二人は同時に吹き出し、
「レインさんらしいですね」
「レイン君らしいね」
と笑ってくれたのだった。
そんな俺たちを、互いに小突き合いながら、サタナとヴィーナが大声で呼ぶ。さらにはリリルまでもが。
「今日は朝まで飲むんらからぁ~~~」
「レイ~ン! はらくしろォ~~~!」
「みなさん、早くして下さいでひゅぅ~!」
俺たち三人は互いに顔を見合わせ笑った。
それから、仕方がないなといった様子で。
三人が待つ店内へと、歩いていくのだった。
とりあえずはこれにて完結です。応援して下さった皆様、本当にありがとうございました!! 一応、構想自体は出来ていて、未回収の伏線もあるので、書こうと思えば続きは書ける状態ですが、これにて幕引きとさせて頂きます。もし面白かったと思って頂けた方には、是非、★での評価・ブックマーク・感想・レビュー等頂けると嬉しいです。また、現在は次作
【侯爵家を追放された俺様錬金術師、追放理由が【女】だからと理不尽すぎたのでブチギレる。冒険者として成り上がり勇者パーティに加入し魔王を討伐して家族を見返してやる!と思っていたらなんか没落寸前らしい。ざまあ!】
を執筆&構想中です。一人称俺様の女の子が膨大な知識で酒場の冒険者たちにアドバイス、やがてビジネスパートナーとして協力し名を上げていく、という感じの話です。主人公は10万文字(一区切り)ついた辺りで自身のアトリエを手に入れる予定です。今作のような最強無双というよりかは、時間をかけて、莫大な量の知識を武器にじわじわと成り上がるタイプになる予定です。どうか応援していただけると嬉しいです。なにとぞよろしくお願いします。では長くなりましたが。
この作品を応援して頂いた皆様、改めて、本当にありがとうございました!!




