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第五十三話 ノエルとロイス

 聖剣・エクスカリバーを。

 俺は振るった。軽く、な。


 その衝撃波はすさまじく、天井にめり込んでいたロイスは。


「うぐっ! ぐわぁああああああッッ!!」


 お気の毒様としか言いようのない有り様になってしまった。


 死んではいないが、まさか衝撃波だけで決着が付くとはな。スキル付与剤とか増強剤とはなんだったんだよ、と言いたくなってしまうが。


 まあ、それはこの女神ヴィーナの力だ。

 かなりスタイル抜群で、胸は爆弾のように大きい。

 

 ので、それを押し付けられると結構、苦しい、のだが……。


「解放者様ァ~~~! 我のことを二度も解放してくれるだなんて! やはりレイン様は存在している次元が違うってコトよね~~!」


 う~ん、二度目の解放者様とやらはノエルじゃないのか? なんか超級より難易度の高い魔法を詠唱していたみたいだし。


「ノエル、とりあえず、お前の手で決着をつけてやれ」


「え?」


 首を傾げるノエルに、俺はスマホウ・フォンを指差した。


「先生に連絡すればすぐに憲兵を呼んでくれるだろ。場所も分かりきっているし。こんな奴でも家族なんだろ? だったら、お前の手で終わらせてやるべきだ」


 俺が言うと、ノエルは目元を赤くした。

 ああ、泣き虫な女の子だな。


「辛いだろうが、それこそがロイスの為だと思うぞ? きっといつか自分の過ちに気付く時がくるはず。そうしたら、その時こそ言ってやればいいんだよ。「お兄ちゃん」って」


「……レイン君、優しすぎだよ」


 そう言うや否や。

 今度はノエルが俺に抱きついてきたではないか。

 おいおい、随分とフレンドリーだな。


「ありがと、レイン君」


 さらには、頬に口づけまで。


「きゃーーーっ! 我の解放者様になんてことを!」とヴィーナ。

「そ、そうですよっ! まだ学生じゃありませんか!」とメアリさん。


 二人とも何をそんなに騒ぎ立てている。

 

 サタナみたいに無理やり唇にキスしてきたわけでもあるまいし、これくらいのスキンシップは友達として普通じゃないのか?


 しばらくはそんなふうに騒いでいたが。

 やがて意を決したように、ノエルがスマホウ・フォンにて連絡。


 たったの数分で魔法局直属の憲兵がやってきたのだった。意識を失っていたロイスは、水をぶっ掛けられて目を覚ました。


「あ、うう……。ここ、は?」


「ロイス・レイウスだな? お前を誘拐及び教唆の罪で逮捕する! 二年前のあの事件のことも詳しく聞かせて貰うぞ!」


「……待て。僕は、上流、貴族だぞ」


 などと宣っているが。

 目は虚ろで声もボソボソ。

 全く覇気が感じられない有り様である。


「黙れ。お前には今日一日で三枚の上位警告書が発行されている! 地下牢行きは免れんぞ!!」


「そ、そんな……」


 かくして、ロイス・レイウスは憲兵に引っ張られていった。

 

 だが、その間際に。


「待って!」


 ノエルが叫ぶ。


「ん? なんだ、小娘」


「えっと、その人の……妹です。少しだけ、時間もらえませんか?」


 その言葉に、憲兵はしばし逡巡していたが。


「一分だけだぞ」


 それくらいならいいだろう。

 そう判断を下したようだった。


「お兄ちゃん……」


「……」


「私の、目を見て」


「……今さら、なんだ」


 パシンッ!


 ノエルによる一発のビンタ。

 まあ、これくらいは当然だな。


「お兄ちゃんのバカ」


「ああ」


「バカで……あほ!」


「ああ」


「で、でも」


 ノエルの声が湿り気を帯びていく。

 耐えかねて、瞳からは大粒の涙がポロポロポロポロと零れ落ちていた。


「それでもっ! そんなバカなお兄ちゃんでも」


 大好きッ!!


 そう言って、ノエルはロイスに抱きついた。


「バカ! バカ! バカ! だけど好きなの! ずっとずっと大好きだったの!」


「……そう、か」


「しっかり反省して!! もうずっと地下牢から出られなくたって、もうずっと会えなくたって! 自分がしたことなんだから自分で責任取って!」


「……」


「大丈夫、私たちは家族だもん。離れていても、遠くにいても、会えなくても、ずっとずっと家族だから!」


「……憲兵さん」


 ロイスが力無く呟いた。


「あ?」


「五秒でいい。この縄を解いてくれないか? 見ての通り今の僕にはなんの能力もない。あったとしても、レイン君には敵わない」


「ああ、クソが。面倒くせえな」


 言いながら、憲兵は苛立った様子でロイスの要望を呑んだ。とはいえ、それはノエルの姿に感化されての行動だろうけど。


「ノエル。僕が君を愛していたことに、嘘偽りはない」


「うん」


「ずっと好きだったことも本当さ」


「うん、知ってる」


 また、ノエルの瞳から大粒の涙が。

 そしてその光景を見ている俺も、実は結構目頭にキテたりする。


「ごめんね、ノエル。バカなお兄ちゃんで」


 そう言って、ロイスはノエルを抱きしめた。

 一筋の涙を零して。


 ノエルは、


「うわああああああああ! お兄ちゃん。ずっとずっと大好きだよお!」


 取り乱したように、泣き喚いていた。


「そこまでだ。そろそろ行くぞ」


 五秒以上待ってくれた優しい憲兵が、ロイスに縄をかける。

 

 お供の憲兵の方はというと、顔をぐしゃぐしゃにしながらロイスの後ろを歩いていった。前後で挟んでの連行だろうが、あれでは役目を果たせていないのではないか?


 まあ、ロイスに抵抗する気力が全くないみたいだから、問題はないか。

 

 なにはともあれ、だ。

 これにて一件落着、という事だな。


     ☆     ☆     ☆


 その後、俺たちはサタナと合流した。

 なんでもサタナの相手、クオンジという人物はコピー能力を有していたらしく。


「いやあ、限界突破(オーバーリミット)をパクられてしまってな。ヤツのレベル65だったからのー。久しぶりに良い勝負が出来たわ」


 どうやらリリルの方ではレベル700VSレベル650の超次元バトルが繰り広げられていたらしい。


「で、どっちが勝ったワケ?」


 人の姿を取り戻したヴィーナが問うと、サタナはバツが悪そうな顔をした。まさか負けたのか? と思ったが、どうやらそうではないらしい。


「決着は付かなかった。そうこうしているうちにクオンジが撤退すると言い出しての。なんでも「ヴェッジ」とかいう人間の指示らしいが」


 サタナが言うと、ノエルが「それ、私のお父さん」と口にした。


「なるほど。自身の息子がやられた事を知って、今回の作戦を断念したというわけか」


「でも、とりあえずは良かったです」


 メアリさんが満面の笑顔で言う。


「本来の目的であるカラドボルグ……ヴィーナさんを復活させられたのですから」


 まさにその通り。

 というわけで、俺は早速ヴィーナにお願い事をしてみることにした。


 以前にもいったが、俺はただ善意のみでヴィーナの解放を手伝っていたわけではない。俺には俺なりに相応の目的があるのだ。


「何でも言って下さい! 解放者様のお願いとあらばこの我、力の限りを尽くす所存ってカンジなので!」

ここまで読んで頂きありがとうございます!!

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