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第五十二話 女神解放! 聖剣・エクスカリバー

 ヴン!

 ヴヴゥンッ!!


 あまりの早さに、もはや音が遅れる始末だ。

 ロイスは俺の攻撃を避けることが出来ず、一方的にサンドバッグ状態。さらには。


 スキル【超威圧(フルプレッシャー)】レベル5!!


 対象をロイスに限定した最大出力の【超威圧(フルプレッシャー)


「は、早い! まるで目で追えない!」


 ノエルの目には、俺の姿は数十から数百に見えているだろう。斬撃の数に関しては最早幾千、幾万にも錯覚する領域だ。そしてそれはロイスも同じ。


 さらには、俺のスキルの効果を受け、ロイスのスキルの効果は弱まっている。


 同等の力がぶつかり合えば魔法は打ち消し合うが、それはスキルも同じ。俺がサタナを倒した時と全く同じ道理で、ロイスの再生速度が目に見えて落ちていく。


 ズババババッ!!


「あ……、ああ、小、賢しいな。ククク」


 スキル【超再生】×100!!


「……なに?」


「ん? なにをそんなに驚く。別に同じスキルを付与できないだなんて言っていないだろう? 同じ効果を持つスキルを付与剤で付与、その効果を増強剤で強化すれば、その効力は通常の数百倍から数千倍にまで跳ね上がるんだよ。そして僕が持つスキルはなにも回復系だけじゃない。こんなのもある」


 言いながら、ロイスは闇魔法でノエルを瞬間移動させた。攻撃の軌道から逸らすためだ。そして放たれるは、


「【空気砲(エアガンナー)】×100VER増強剤付与数100」


 一瞬にして周囲の空間が消し飛んだ。

 カラドボルグでガードしたが、その衝撃はすさまじく。


 ボダボダ……。

 俺の右腕からは血が滴った。


「チッ」


 思った以上の威力。

 

 同じスキルを重ね掛けし、それを増強剤で強化したというが。これはもう、レベル50の次元を遥かに超えてるな。


「まだあるよ? 【膂力増強(マッスレイズ)】×100VER増強剤付与数80」


 パワーアップ系スキルのドーピング。

 俺と互角かやや劣るパワーだが、中々に重い一撃が繰り出される。


「どう? 普通の人間ならここまでドーピングしたら死んじゃうんだけどね。でも僕は耐えることができる。何故って? 簡単さ。僕たちが王家の血を継ぐ者だから。闇属性というだけで虐げられてはいるが、それはレイウス家憎しの嘘の歴史だ」


 昔、ノエルが口ずさんでいたからね。【エイミュの書】の一説さ。とロイス。


「黙れ。実の妹を道具としか見ていないお前に、ノエルの名を呼ぶ権利はない」


「ははっ! なんだよ、僕に挨拶もなしに恋人気取りか?」


 拮抗状態が続くな。

 なにかヤツの回復を打ち破る策が見つかればいいのだが。


「ないよそんなの! 重ねに重ねた再生スキルは異次元の修復力を以てして僕を守り続けてくれる。例え脳みそをぶちまけられようとも、細切れにされようとも、僕は再生し続けることができるのさ! つまりこの状態が続けば、いずれは君がスタミナ切れで倒れるという算段だ!」


 読心まであるのか。

 とことん面倒な奴だな。


「レ、レイン君……」


「大丈夫だ。奴が言う程スタミナは消耗してない。このまま十日だって粘れるさ」


(嘘ね。レイン様は相当無理してるわ。ああ、歯痒い! 我が完全開放さえされれば、あんな奴ゴミのように捻り潰せるっていうのにィ)


 カラドボルグは、内心で焦れていた。


「ねえ、いつまで続けるつもり? あっ、ちなみに言っておくけどリリルちゃんの方に居るのは僕たちが作ったクオンジって奴なんだけど、そいつは僕より化け物だから気を付けてね? 実験で一千人近くぶっ殺したのもそいつだし」


 俺はやれやれ、と溜息混じりに言った。


「それなら問題ない。あっちに向かわせたのも相応の化け物だからな。そいつは俺より強いと思うぞ?」


「ははっ! 下手な嘘つくね~」


 信じられるはずも無い、か。

 まあいい。とにもかくにも、今はコイツを切り刻み続けるだけだ。いくら回復するとはいえ奴は薬に頼っている。


 ならばいずれは効力が切れるはずだからな。

 かくして俺はヤツを刻み続けた。


 ザシュッ! ヴゥン!! ズバアッ!


「どう? もうそろそろ疲れてきたかな?」


「いや、普通に飽きてきた」


 どうしたものか。なにか手立てはないものだろうか?

 ノエルのスマホウ・フォンが鳴ったのは、俺がそんなことを考え始めた時のことだった。


「え? メアリさん? ……はい、聞いてみます」


 ロイスの猛攻を防ぎながら。

 俺はノエルの言葉を拾った。


(錆びた鍵? まさか、あの古代神殿で手に入れた奴か?)


「それなら手元にあると伝えてくれ!!」


 使いどころも分からないが、念の為。

 そう思い、常にコートの内ポケットに入れてあったのだ。


「ははっ、無駄話が好きなのかい?」


「無駄なのはお前の存在そのものだよ。ていうかお前、痛みとかないのか?」


「愚問! 痛覚遮断スキルも並行発動しているからね!!」


 痛みも与えられないか。

 いよいよ成す術なし……。

 そう思われたその瞬間に、


「レインさん!!」


 メアリさんがやってきたのだった。

 俺の顔を見るなり、メアリさんは「鍵を!」と叫んだ。


 よく分からないが、現状打開のヒントになり得る何かを見つけたのだろう。一冊の本を抱えているのを見るに、相応の成果有り、といった感じか。


「んん? 客人はお呼びじゃないんだけどな」


 闇魔法を用いてメアリさんの元へと瞬間移動しようとするロイス。

 だが、それには弱点がある。


 闇の渦が移動先に展開されること。

 出てくる場所が分かるならば。


 シュンッ!!


「よお」


「わっ!」


 先回りしてしまえばいい。俺はロイスの首根っこを掴み、渾身の力で天井目掛けて放り投げた。その後、例の鍵をメアリさんに渡した。すると、


 ガチャリ。


「やっぱり! この鍵がそうだったんですね!」


 メアリさんがそれを開いた途端、ノエルは驚きに目を見張った。


「こ、これは……、古代文字!」


「やはりそうですか。ノエルさん、内容を教えろとは言いません。ただ一つだけ問いたいのです。この文章の中に【リェーイス】という言葉は存在していますか?」


「【リェーイス】……復活という意味の言葉を、何故?」


「詳しいことを話している時間はありません。もしその言葉があるのならば、是非詠唱を」


「そうよそうよぉー!」


 突如としてカラドボルグが騒ぎ立てた。


「その【リェーイス】って魔法を唱えれば我は解放される! そしたらあんな奴けちょんけちょんにしてやれるんだから!!」


 カラドボルグが言うと、ノエルは必死に読書を開始した。

 普段から本を読んでいるせいか、速読を習得しているらしかった。故に。


 俺がロイスを足止めするのは十分程度で済んだ。


「あった!!」


 ノエルが叫ぶ。見付けたのだ。

 古代魔法【リェーイス】を。復活という意味を持つその言葉を。


「早く詠唱しちゃいなさァ~い! でも安心して? レイン様は優しいから殺さないって言ってたデショ~?」


「させるか!!」


 必死の形相で邪魔立てしようとするロイス。

 だが、それはこっちの台詞だ。

 単純なパワーで勝っている以上、足止めに難は無い。


「フンッ!!!!!」


 シュンッ、ドォオンッ!!


 俺が拳を振るうと、ロイスは遥か高くへと消し飛んでゆく。この【螺旋の白亜塔】の天井に直撃してしまうぐらいに。


「おっ、のッ……れェ!!」


 どうやら天井にめり込み身動きが取れないようだ。

 精々、膂力増強スキルでも駆使して足掻いていてくれ。


 俺はカラドボルグを逆さに、地面へと突き立てた。


「ノエル、頼む」


「ま、任せて!」


 ノエルは両手をカラドボルグへと掲げ、詠唱を開始した。


「天よ、海よ、大地よ。ありとあらゆる命の根源……我らが崇め奉る上位なる存在。――神よ! その神秘なる奇跡の施しを以てして、堅牢なる枷を解き放ち給え――神級魔法【リェーイス】!!」


 青白い光が【螺旋の白亜塔】の内部を太陽が如くの煌めきで照り付けた。耳が痛くなるような高音が鳴り響き、そして。


 ピシ……、バキ、パリィインッ!!


 カラドボルグが……否、カラドボルグの表層がひび割れ、弾け飛ぶ!


「あー、長かった~。やっぱりナマの空気っていいわねェ~」


 俺の目の前には純白の羽衣に身を包んだ一人の女性が立っていた。黄金色の髪にダイヤのように輝く瞳。聖女と見紛う程の美しさを持ったその女性……。彼女こそが。


「ああ、解放者様ぁ! 本当にアリガトー!!」


 カラドボルグ改めヴィーナは、空気も読まずに俺に抱きついてきた。


「おいおい、今はそれどころじゃないだろう? あの化け物をなんとかしないとならないんだから」


「ああ、そのことだけど、もう問題ないですヨー」


 そう言うと、ヴィーナは右手をロイスへと掲げ。

 そして――。


「はい」


 はい、と言われても反応に困るな。

 今、何をしたんだ?


「これでアイツのスキルは全部なくなりました」


 ヴィーナの言葉に、この場にいた三人が固まる。


「我の持つ力の一つ、没収(オール・ゼロ)! あ、ちなみにそのカラドボルグは我の封印に力を使っていたわけでありまシテ。今は本領を発揮できるようになりましたから。名称はカラドボルグ改め、エクスカリバーって感じですわネ!」


 なるほど。

 やはりあのサタナの幼馴染というだけあってもの凄いパワーを秘めていたようだ。

 

 シャキンッ!


 俺は床に突き刺さった聖剣・エクスカリバーを引き抜き、ロイスに睨みを効かせた。


「悪いが、ここから先は俺のターンだ」

ここまで読んで頂きありがとうございました!!

次話は15時更新予定です!

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[一言] チートや・・・チートがここにおる・・・。
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