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第三十九話 特別講師のサティちゃん☆ ②

「やっぱお前とサティをやらせたのは正解だったな~」


 サティとの模擬戦を終えた俺は、自由時間を言い渡されていた。他の生徒と比べて随分と好待遇だなぁなどと思っていると、レックはしれっと核心を突いてきた。


「お前、的当ての時魔法で射抜かなかったろ」


 やはりバレていたらしい。

 

 だが、あの状態の俺の速度は人間の目に追えるとは思えない。さらには水玉(ウォーターボール)の水膜と舞い上がった砂塵による目隠し。


「気付いてましたか。どうやって見抜いたんですか?」


 気になって問いかけると、レックはスッ……と丸眼鏡を外した。初めて見る眼鏡なしのレック。二重切れ長のイケメンフェイス、こりゃあ人気が出る訳だ。


「この眼鏡は魔道具だ~。一度視た映像を半永久的に記録しておける。魔力を込めることによって、好きな場面をスロウで見たりできるんだ~。邪魔だと感じた映像……例えばお前が巻き上げた砂塵とかな~、ああいうのも取り除くことができる」


 なるほどな。ノエルが言っていた通りというわけか。

 どうやら、この学園はこと魔道具開発に関しては相当に力を入れているらしい。


「お前は異常な強さだからな~。模擬戦の時はどうしようかと思ったよ。お前だけ排除するってのも不自然だろ~? そしたら昨日、学長から通達があったんだ。二人の特別講師が一週間だけ二年の面倒を見るってな~。まさかその内の一人があの忌々しいメアリだとは思わなかったが……」


 俺はさらりと口に出された名前を耳に、驚きの表情を浮かべる。

 

 そんな俺の顔をレックは訝しむように覗き込む。


「……今度はなんだァ~?」


「あ、いえ。なんでもないです」


 誤魔化そうとしたが。

 レックは丸眼鏡をかけ直し「まさか」と切り出した。


「お前、メアリとも知り合いだとか言うんじゃないだろうな~?」


「あー、ははは。はい、その人とも、まあ。冒険者やってたんで。ほら、冒険者って色々な出会いと別れがあるじゃないですか。そんな感じですよ」


「そうか。ま、何を企んでるかは知らんが、何事もほどほどにしておけよ~」


 そう言ってレックは他の生徒の元へと向かっていった。

 まるで全てを見透かされてるみたいだ。そんな印象を抱きつつ、俺は「はぁ」と一息吐いた。


「なんじゃ、溜息なんぞ吐きおってからに」


「ああ、サタナか。言っておくが、今の俺の精神的疲労、その原因の八割方はお前にあるんだからな? せめてそこは自覚してくれ」


 サタナはむぅっと頬を膨らませて反論してきた。


「何を言うか! 妾らはしかと成果を出したのだぞ!? レイン、お主と違ってのう。特別講師というのはあくまでもお主に成果を告げる為の口実に過ぎぬ」


 成果を上げた、ねぇ。

 メアリさんも来るらしいしそれは間違いないのだろう。だが。


「本当にそれだけか?」


 俺が睨みながら聞き返すと、サタナは目に見えてギクッ! と後ろめたそうにした。


「どーせお前がワガママ言ったんだろう? 「レインに会わせろ~! 人間! お前のコネを使えば学園に行けるのではないか~!?」とか言って」


「うぐっ! まさか読心術まで身に着けていたとは……。レインには敵わぬな」


「いや、お前の行動なんか読心するまでもないよ」


 俺とサタナ(サティ)との会話を数人の男子生徒が恨めしそうに遠い目で眺めている。が、俺からすれば知った事ではない。本当なら目立つ行動は避けたかったし、レックからもそう言われていたが。


 サタナと俺を戦わせたという事は、もうその辺のことはどうでも良くなったのだろう。


 多分、デス・オークの牙を持ってきた辺りで、いずれ俺の異常性は白昼の元に曝されると判断したに違いない。サタナが来ようが来まいが、遠からずこうなっていただろう。


 アイツは何者なんだ?


 そんなクラスメイト達の疑問の声が今にも聞こえてきそうだが。まあ、そういう意味ではサタナには感謝だな。


 サタナの持つ美貌は男子生徒の心を射抜き、その双眼と心とを釘付けにして離さないのだから。


「して、成果っていうのはなんだ?」


 俺が言うと、サタナは「ふふん」と人差し指を立てた。自慢げな態度に腹が立つが、ここで余計なことを言って情報をお預けにされる方が腹立つので、俺は黙っておくことにした。


「あのふざけた数の書類、それに記載されたダンジョンの四割近くを妾は攻略してきた!」


 さらっととんでもないことを言う奴だ。

 やはり魔王なだけあって相当な化け物らしい。


「だが!」


 サタナは眉を八の字に、口をへの字に曲げた。

 なんともワザとらしい演技だ。


「そのダンジョンの全てに、お宝は無かった」


「は? 全て?」


「そうじゃ」


「一つも?」


「そう、一つも」


「そんな……」


 そんなバカなことがあり得るのだろうか? 


 おそらく、メアリさんが友人に頼んでリストアップしてもらったダンジョンの数は千にも及んでいた筈。四割……少なく見積もって三百のダンジョンを踏破したとしよう。


「そんなバカなことある筈がないだろう」


 俺は真顔で断言した。三百、三百だ。尋常でないほどの数のダンジョン。その全てにお宝がないなどという話は聞いたことがない。


「まっ、この件に関しては明日あの人間から説明があるらしいから楽しみにしておくとよい。正午、学園の食堂にて待ち合わせとのことじゃ」


「そう、か。ところで、メアリさんはどの科目の特別講師をやるつもりなんだ?」


「んん~? 確か魔法史とか言っておったぞ? 魔法史科の教師にしか立ち入れない秘密の部屋があるから学長に頼み込んでみた、的なことを言っておったなぁ」


「そうか、分かったよ」


 そう言ってサタナに背を向ける俺。やはりというべきか、サタナは慌てた様子で静止してきた。


「なんじゃ! どこへ行く!」


「どこへって……。俺の今の身分は一応は学生なんだぞ? 自由時間を与えられた身とは言え、万が一の時に備え内申点は確保しておきたい。ここを追い出されたら全ての作戦がパーだからな。お前は他の生徒に魔法のなんたるかを、リアリティのある範囲で享受してやるといいさ。他の教師からの信頼も得られれば、目的の達成もし易くなるだろうからな」


 言いながら、俺はサタナの耳元で囁いた。


「俺の為だと思ってさ。頼むよ、サタナ」


 サタナは頬を赤らめモジモジと体を揺らした。

 ふうん、コイツこんな普通の女の子っぽい反応もするんだな。ちょっと意外だ。


「わ、分かったのじゃ。妾は妾の役目を果たす。レイン、お主の為にな!」


「ああ、頼むよ」


 そう言って今度こそ俺はサタナの元から立ち去った。

ここまで読んで頂きありがとうございます!!

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