第三十二話 レック・オルタの最悪な一日②
「バカな……。私の爆発魔法は確実に貴方の頭部を消し飛ばしたはず。今の攻撃を受けて生きていられるワケがない」
「そうビビんなって~。別に殺しはしないからさあ~。さっきから「我々我々」ってさ、お前ら集団で動いてるんだろ~? だったら色々と情報引き出さないといけないし、殺さないというよりかは殺せないっていう方が正しいかな~」
「ぐっ! ……クク、フハハ! 何を勝ち誇ったつもりでいるのですか!?」
「いや、そもそも勝負になってないし」
「は?」
「ま~、さっきお前が言ったことは正しいよ。この学園に居る限り俺たちはバフ魔法の効果を受けられる。でも、それがあろうがなかろうが関係ない。俺と勝負できる人間なんてここの校長とヴェルモンドさん、あとはレインくらいだろうから。あっ、あとはお前らが狙ってるノエル・レイウスもか。ん~、そう考えると四人もいるのか~。なんかムカつくな~」
「黙れ! このゴールド・レイピアの恐ろしさを、その身を持って知るがいい!!」
男は何度も爆発魔法を放った。何度も何度も何度も。そして、爆発魔法を撃ちながら。
自分でも気付かないうちに、じりじりと後退していたのだった。
「どうして逃げる? 何をそんなに恐れている?」
「あっ、うぁっ、バカな! な、なぜ……なんで! どうしてっ!?」
「ん~、拷問したらぶっ殺すし、冥途の土産に教えてやるか~。つーか、俺のことは知ってるのに俺の異名は知らないんだなあ、お前。ははっ、なんかマジで使い捨ての駒って感じだな~」
怯えきっていた男の表情は凍ったように固まった。
直後、爆発を彷彿とさせるほどの剣幕で捲くし立て始めた。
「ふっ、ふざけるな!! この私が捨て駒だとっ!? 神様から愛されたこの私、ジェイ・ボルボトスがだと!? 舐めた口を利くんじゃないぞ、若造があ!!」
ジェイは全速力で駆け、レックの喉元にゴールド・レイピアを突き立てた。だが、ゴールド・レイピアがレックの命を断つことは無かった。
「ば、バカな」
「今ハッキリと見えたろ~? つまり勝負にすらなってないってのはそういうことだ」
絶避のオルタ――レック・オルタに名付けられた異名である。レックにはありとあらゆる全ての攻撃が、当たらない!
「【ペンローズ・デルタ】、それが俺のスキルだ。実現不可能な立体ってあるだろ? あの気色悪い三角形のヤツ。俺のスキルはそれを現実空間で再現するんだ」
「【ペンローズ・デルタ】だとォ?」
「ちなみに鑑定の結果、発現率は百億分の一らしいな~。つまり、お前よかぁ俺の方が神様に愛されてるってことだ。でもそう気を落とす必要もない。生きていればそういうこともあるだろうからな〜」
ジェイは憤慨した。自身の召喚スキルでありとあらゆる武器を召喚し、その全てをレックへと解き放った。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
しかし。
「死ぬのはお前だ~」
超級魔法・聖十字光!
光に密度を付与し、魔導砲のように発射するレックの得意魔法。
ヴゥンッ――!
文字通りの光速。
故に反応は不可能。
瞬く間もなく、ジェイの片腕は消し飛んだ。
「あがっ、ギャァアアアアアアアアッ!!」
「は~、マジで最悪な一日だ。こんなゴミを拷問しなければならないなんて」
気を失ったジェイを引き摺りながら地下牢を目指す途中。
レックはふと胸ポケットからあるものを取り出した。それはスマホウ・フォンと呼ばれる魔道具である。
「うわ、めっちゃ通知来てんじゃん」
戦闘中、常に振動していたのだが。
履歴の全てが生徒からのものであった。
「なるほど。コイツは学園内部の者しか持ち得ないスマホウ・フォンの存在まで知ってたってわけか~」
生徒から俺に連絡が来て、俺から学園に異常事態の発生が告げられる。それを防ぐための役割がコイツだったということか。
結果としてジェイの妨害行為は生徒を二人一組にしてしまった。悪手とはまさにこの事である。
「もしも~し。ん? ダンジョンの中で変な黒スーツに話しかけられた? ノエルについて? うん、うん。ふ~ん。転移石で消えた、ねぇ」
転移石はかなりレアなアイテム。
その辺の凡人に入手できる代物ではないが。
「とりあえず課題は続けてくれ。なにせ我が校の名誉がかかってるからな~。それに、お前らもちっぽけなトラブルで高評価もらえるチャンスを逃したくないだろ~? ……は~い、頑張ってね~」
数名の生徒たちと連絡を終えた後。レックはスマホウ・フォンの履歴を確認した。
名前がないのはレインとノエル・レイウスのみ。追われていてそれどころじゃない、ということか~?
いずれにせよだな。目星をつけたダンジョンに人員を先回りさせておくというイカれた執念深さ。
去年ヴェルモンドさんに喧嘩を売ったとかいうノエル・レイウスの兄。アイツが関係してるのは間違いなさそうだ。
ま~細かいことはどうでもいいか。
どうせコイツに全部喋らせるしな。
ここまで読んでいただきありがとうございます!




