平民少女は寝坊する
ふと目が覚めると、古ぼけた木の天井が目に入った。
「知らない天井だ」なんて、ゲームやアニメでよく見るセリフを呟いてみる。少なくとも自宅の天井ではないはずだ。ベットから体を起こし、ここがどこかを確認しようとするや否や部屋のドアが開き、金髪の女性が入ってきた。
「アリサ!いつまで寝てるの?今日はプライドちゃんと会う約束でしょ?」
「プライド?」(誰だそれは?)
「ほら早く起きて、待ち合わせ時間に来ないからわざわざ家に来てくれたのよ!」
わからない、彼女が言っていることは理解できるが、彼女のことを私は知らない。そもそもここはどこなのだろうか。
「あ!アリサ!まだ寝てるの!?私噴水の前でずっと待ってたのよ!?」
「ほんとよねぇ、いつもなら朝ご飯も食べずに約束の時間前にすっ飛んでいくのに…」
とても、とても騒がしい声を響かせながら少女が部屋に飛び込んできて、そのまま金髪の女性と話し始めた。本当に騒がしい。声量が人の数倍あるんじゃないかと思うぐらいのうるささだ。
「そうなのよマーサさん!レディをエスコートするなら約束の2日前から待ち合わせ場所で待ってるようにって再三言ってるのに!2日前どころか約束の時間にまだ寝てるなんて!」
「うんうん、その通りよ。その通りだからもうちょっと声抑えて、ね?」
「まぁ!いつも注意されてるからわかってるわ!ほら!この大きさなら小鳥すら起きないわ!」
「ほんとそうねー(棒)」
うるさすぎる。寝起きだからか頭にガンガン響いてくる声を聞きながら二人を改めて観察する。
金髪の女性の方は健康的に日焼けした美人だ。街では男性からひっきりなしに声がかかるだろう。
だが、それよりも目を引くのは騒がしい少女の方。声だけではなく見た目も騒がしい。まず、髪が虹色だ。生物としてありえるのだろうか?さらに髪の毛のインパクトの影に隠れているが、両目も赤と緑のオッドアイだ。しかも金髪の女性よりも数段美しい。
(こんな派手な少女見覚えが…いや待て)
そうだ、この少女には見覚えがある。プライド…そうだ、彼女見た目と名前、それにこの騒がしすぎる声には覚えがある。
彼女は乙女ゲームの悪役令嬢だ。