運命という名の地獄
突然だとは思うが、キミは『運命』というものを信じるだろうか?
『運命』
それは生まれた瞬間、もしくはこの世に生まれるよりもずっと前からこうなることが決まっていたかのように思える事象を指し示す言葉だが、人はこの言葉を恋愛ごとに対してよく使う。
運命の人だとか、運命の赤い糸だとか、運命の出会いだとか……。
そんなドラマチックでロマンチックでありながら、どこかドグマチックでもある『運命』という言葉。
けれど、人によっては『運命』というのが必ずしもいいものであるとは限らないと思わないだろうか。
全ての人が自分の人生において「満足だった」と「幸せだった」と言って終われるわけではない。
死ぬほど努力しても夢が叶わなかったり、何か特別悪いことをした訳でもないのに人より不幸な目に合ってしまう人はいる。
病気や不慮の事故などで若くして亡くなってしまったり、中には何かしらの理由で自ら自分の人生に終止符を打ってしまう人もいる。
いい人生を送っている人からすれば、自分とは関係のない話で実感が湧かない絵空事のような話に聞こえるのだろうが、世の中にはいい人生を送れなかった人というのは必ず存在している。
この世に生まれ落ちたその瞬間からその人が辿ることになる未来は決まっていて、その未来が幸せで恵まれた人もいれば、酷く残酷で悲惨な人もいる。
こうして文章にして書き出すと、『運命』というのはまるで『呪い』のようなものだとつくづく思う。
そして――ここにも一人。
背負いたくもない『運命』を背負わされ、溺れ、嗚咽を吐きながらも、必死に足掻いている男がいる。
これから綴り、語るのはこことは違う別の世界で悲惨で過酷な『運命』を押し付けられた一人の男の物語――。
*
もし、『運命』というのが本当に実在するのなら、きっとこれが俺の『運命』なんだろう……。
目の前に全身傷だらけで、息を切らし、震える手足に精一杯の力を込めて立っている男がいる。
ボロボロでふらふらになりながらも、俺を曇りのない目で真っ直ぐに見てくるこの男。
名前はロウ=メディウム。
俺のライバルであり、家族であり、一番の親友だ……。
ロウは自身を奮い立たせるために雄叫びを上げ、こちらに剣を片手に駆け出してくる。
――もう……やめてくれ……。
――もう……諦めてくれ……。
――もう……立ち向かってこないでくれ……。
俺はもう……お前を殺したくない――。
目を背けると、目の前で親友の体がドーム状の光に包まれ、その光の中で生成された無数の氷の槍に全身を貫かれた。
悲鳴を聞けばさらに辛くなるのを知っている。
だから、悲鳴なんてあげられないほど一瞬で命を絶った。
ロウを取り囲むドーム状の光が消え、中にいたロウは事切れたように膝から崩れ落ち、地面に倒れる。
今回もダメだった……。
これで九回目。
俺は何度……何度この手で親友を殺せばいいんだ……。
俺がいったい何をした……。
『大切な人をもう二度と失いたくない』
本当にただ、それだけだったのに……。
……もう……嫌だ……。
……いったい……どうすればいいんだ……。
もし、こんなものが俺の『運命』だと言うのなら、俺にとってこの世界はただの地獄だ――。
まずは、プロローグ『孤独の観測者』を読んでくださってありがとうございます!
話の流れは既に考えてあるので、完成しだいこれから投稿していきたいと思います。
理想は毎日投稿!
おそらく現実は2日に1度か3日に1度の投稿頻度になりそうです(笑)
少しでも面白いと思ってくれたら感想とか評価して貰えると嬉しく思います。
誤字・脱字なんかがあったら報告してもらえると助かります。
気長に『籠の中の人、籠の外の蒼い鳥』をよろしくお願いします!m(_ _)m