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訪問者
冬は明けた。
私が何かをするまでもなく。
四季の神々の社は荒れ果て、
神様の気配も無かった。
あの事件を機に明らかに世界は変わった。
その理由を私から知る術はなく。
姉と2人の兄の亡骸を供養し、
屋敷を以前と変わらぬ風景に直し、
この家に居る巫覡は一人なのだからと
毎日身を清め、一人鍛錬を行った。
時々溢れる涙など気には止めず、
只管に励んだ。
そして半年が過ぎた頃、
あの魔法使いは訪れた。
「お久しぶりです。」
家の前には、喪服を着た魔法使いが居た。
「異世界の出自の上、
こちらの作法を深く知りませんので、
多少の無礼はお許しください。」
彼女は長い時間、墓前に手を合わせた。
「貴方にはこの一件を知る権利があります。
どうしますか。」
墓前を前に何を指しているのか、
私はその言葉を待ち望んでいた。




