白露
早朝、草木の表面が湿る。
小太刀と成った竜骨の扱いを
秋月との打ち合いで調節をする。
相変わらず、
義兄に及ぶ技は何一つ無い。
私の繰り出す技は、
尽く遇らわれてしまった。
ただ、夏と比べると
涼しげな顔が険しくなり、
その上、
僅かな隙でも打ち込まれるようになった。
また、弾き飛ばされ、打ち飛ばされる。
そして、また立ち向かう。
右上、から 屈んだ姿勢、ということは
次は上体が前へ。 もう、左に逸れて。
そして、打ち込まれる。 その前に、
足は左に、 逆手に持ちかえで
それは遅い。 ならば、
刀を秋月が振る木刀の軌道上に放る。
峰は腕にめり込むが、木刀は当たらない。
その瞬間に手に収めようとしたが、
取り損ね、すかさず打ち込まれる。
と思ったが、
柄は手のひらにあった。
驚きはしたが、
そこに止まっている暇はない。
足を軸に回り込み、
顳顬を狙い振るう。
しかし、紙一重で躱されてしまい、
百は優に超えたまた、......。
叩き込まれて、
体は床に倒れ込んでいた。
あと少しという悔しさよりも、
あの、掴み取れなかったはずの柄が
手の中にあった、
不思議な感覚が頭から離れなかった。
「ようやく引き出せたか。」
草木の表面は既に乾いていた。




