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秋夜の箏曲
静かな夜。
鈴虫たちの鳴き声が微かに聞こえる。
庭先を見ながら春風と共に座る。
「私は、
眠れない時はいつもこうして居ました。
聞いて居てくださいね。」
春風は自慢気に琴を構える。
息を吐き、
ほんの一瞬、全てが止まる。
そして、鳴る。
一枚の葉が落ちる。
風に流され、空を自由に揺れる。
そして、水面に降りる。
池に浮かぶ月は小さく波立ち、
葉が沈むと静かになり音は止む。
虫たちは騒めき始める。
やがてその騒めきは、
音に重なり一つの歌となる。
秋の月のように、優しく包み込む。
薄くあった雲は次第に流れ、
空は星たちで飾られる。
そして、輝きは少しずつ消え、
元の景色へと戻ると、
少しの淋しさを覚えた。
池の水面には月が浮かんでいた。
そして、一枚の葉が降りた。




