36/138
虚
「よくある話だよ。
自分には過ぎた力を持って
悲劇が起こるなんて。」
「今は気にしてないよ。」
「この左目は、自由に使いこなせるし。」
そう、貼り付けの笑顔で話していた。
「ただ、
あの時、現実を受け入れるために
無意識に何も感じないようにしたから、
いまだにそうなんだよね。
それだけが残念かなぁ。」
「心の底からごめんなさいと言えないのは
なんだかね〜。」
青葉が一つ池に落ちる。
枝に止まる鳥は一羽でいる。
「僕は、この世の中で
誰かが誰かを助けてくれれば、
それでいいんだ。」
「こんな感じかな。」
「どうした?そんな顔して。
やめてよ〜。
僕は今の僕に満足しているんだから。」
そう言いながら、
私の両頬を横に引っ張っていく。
「じゃあ、次。
冬花の話を聞かせてよ。」




