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夜明け
「私はお役目がありますので、一度出なければなりません。此処に居らしても構いませんが、ご一緒にどうでしょうか。」
行く当てのない私はその言葉に従った。
彼女は背丈ほどの箱を背負い、
扉を開けた。
夜更の雪山は暗闇に包まれていた。
冷たさが突き刺すように痛い。
踏み出すのが怖い。
そんな私の小さな手を彼女はそっと握る。
その手を私はぎゅっと握った。
闇夜を歩き続ける。
少し触れただけ彼女の暖かさ。
それを失ってしまいそうで足が竦む。
無我夢中で彼女にしがみ付いていた。
唐突に歩みが止まる。
何が起こったのかを確かめようと
恐る恐る目を開ける。
瑠璃の空、紫黒の大地、仄暗い雲。
黄金に照らされる。
私は目を離すことができなかった。