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春風の思い
「最初に助けた時、
もしかしたら貴方の運命を
決めてしまうのでは無いかと
私は怖かったのです。」
「あの状況では従う以外ありませんよね。」
「私は、
自分で決めてこそ生きているのだと
思っています。」
「その権利を
奪ってしまったのでは無いかと。」
「でも貴方は、
多くのものを得たようで何よりです。」
「今まで得たものを背負うのも、
捨てていくのもどちらでいいのです。
貴方は自由に生きてください。」
風は吹く。
桜の花弁を運んで。
「酔って、少し話し過ぎました。
気にしないでください。」
「それでは、おやすみなさい。」
枝には緑の色だけが残っていた。




