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白粥
焔の弾ける音。微かな甘い香。
夢か現実か確かめるように目を開ける。
囲炉裏の鍋は煮え切っていた。
「ようやく、お目覚めでしょうか。」
目の前の女性は眠たげに話す。
どうやら救われてしまったようだ。
「粗末な物ですがどうぞ。」
鍋の中身を椀に注がれ、渡される。
ただの真っ白なお粥。
眺めていると、ふと涙が溢れた。
人から温かなものを渡されることは、
今まで一度たりともなかった。
彷徨う者の多い世の中。
仕方がないとはいえ、
小さな願いすら叶わないと思っていた。
泣いている事を悟られまいと、
椀の中身を掻き込んだ。
その様子を見てか安心したようで、
彼女はその場で眠り込んでしまった。