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蜃気楼
夏鳥、私の下の義兄。
彼のことはよく分からなかった。
いつもふらふらと何処かへ行き、
数日帰らないこともある。
春風や秋月にはよく怒られていた。
「姉ちゃんは忙しいよね。
じゃあ、冬花は僕が面倒見るね。」
と言いながらも、これだったから
呆れ返っていた。
家にいる時は、
私を遊び相手に誘っては
圧勝し力量の差を揶揄って
楽しむなど大人気なかった。
いつも笑顔を向けながら、
「僕の心は壊れてしまったんだ。」
「だから許してね。」とよく言っていた。
お役目の儀式を教えるときも
私で遊んでいる気がした。
最後まで出来る様にしてくれはしたが。
ある日、普段は何も言わずに出ていくのに
「一緒に行く?」と誘われた。




