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冬花  作者: 忘憶却
第二章 家族(春)
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月影

 縁側を覗くと、

 秋月は庭の方を向いて

 板敷いたじきに足を組んで座っていた。


 月が辺りを照らす。


 秋月は庭先の自然と一体化していた。

 だがその背中は、

 少しさみしそうだった。


「まあ、座れ。」


 恐る恐る私は座る。


「外に意識を向け、

 内に取り込むようにする。」

「ここで教わったものだ。

 どういう意味かは自分で見つけろ。」


 草木がさっと音を立てる。


「俺のいた所は奪い合い掴み取ることが

 生きるために必要だった。

 弟はそれができなかった。

 ただ奪われ、死んでいった。」


「冬花、お前は弟に似ている。

 自分で掴み取ろうとしなければ

 何も得られない。

 失っていくだけだ。」


「俺には自分を守るだけの力しかなかった。

 だから弟を死なせた。」


「お前もいつかきっと

 自分を、自分の大切なものを

 守るための力が必要となる。」


「これ以上話すつもりはない。

 あとはどうするか分かるよな。

 俺は自らお前に関わる気はない。」


 そう坦々と私に語った。


 それからというものの

 私は稽古や修行を

 見様見真似でするようになった。


 私が話さないので

 何も言ってはくれないのだが、

 時々わざとらしく

 分かりやすいように見せてくれた。

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