朔
先程の春風との会話や
今の二人のたわいもない会話、
私は二人の義兄が気になり、
それを考えながら、
食べ物を口に頬張っていた。
突然私の方を見て、秋月が言う。
「食べ物に失礼だ。
食べ物は腹を満たすだけのものじゃない。
それを考えろ。」
「最後まで説明したらどうですか。」
秋月は春風から目を逸らす。
そして、仕方ないという感じで
私の方を見る。
私の方は秋月など見れず、
食卓の大皿小皿を見ていたが。
「あのな、俺たちの役目は対話をするんだ。
どんな人、どんな神様かは分からない。
だから、相手に意識を向けるんだ。
魂は物にも概念にも宿る。
俺はその魂にも敬意を払いたい。」
「どんな食べ方をしようと構わない。
食事をしながら会話をしてもいい。
会話が弾み、議論が進むことだってある。
だが、上の空で食事を済ますことは
俺にとっては不快だ。」
「これでいいよな。」
それからは秋月は食事を終えるまで
一言も話すことはなかった。
ごちそうさまでしたと言い終えると、
自分の食器を勝手場に運んでいった。
「この時期の蕪や小松菜は美味いな。」
と、春風に一言伝えて去った。
「後で、縁側に行きなさい。」
春風は私にそう言った。




