春秋に近づく
「何処で寝てるんだ。見苦しいぞ。」
秋月の睨む顔があった。
この義兄が少し怖くて怯えていた。
そんな私を守るかのように
春風は私の前に出た。
「そんなに声を荒立てなくても。
貴方の声はよく通りますので、
この子が怯えます。
冬花はまだ来たばかりなのに、
そんな顔してばかりでしたら、
心が休まりません。」
「それはそうと、
秋月、冬花に伝えなかったのですか。
私がいない時のことは
お伝えしておりますよね。
冬花の面倒を見るようにと。
普段の様子を見て分からないのですか。
この子の心の傷も不安も伝わりますよね。
それを放置するだなんて、
自分勝手が過ぎます。」
少しの沈黙。
突然の秋月の強い口調がそれを破る。
私は思わず目を閉じて、姉にしがみ付く。
「まずは言葉だろうが。
辛かろうが苦しかろうが
伝えようとしなければ伝わらない。
それをこいつはしようとしない。
そこからだろう。」
秋月が私に関わらない理由は
何となく分かっていた。
でも、私は……。
「貴方はいつも他人に
要求を押し付け過ぎです。
家族だからと
遠慮なく仰るのは良いことですが、
来たばかりの冬花に、事情を考慮せずに
私や夏鳥のように要求するのは酷です。
もう少し冬花に寄り添った
方法を考えてください。」
それから、
秋月は何も言わずに去っていった。




