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マギステル・ミリトゥム   作者: 佐紐斗 舞蘇
一章 東部戦線編
5/9

4話 若鳥の羽ばたき(4)

ダラ要塞攻防戦終幕!

「いいところにやってきた!ファラス、流石だ」

「ベリサリウス将軍を援護する!暴れるぞ!!野郎ども!!」

...(今朝の訓示の後)

「そんなに意気込まなくても大丈夫。無理と判断した時は無理でいい。僕の動きをよく見ておいてくれ。君なら最適な判断を下せるだろう」

...

ファラスは当初の予定通りに右翼側へ行けなかった時点で、中央の動きを見てベリサリウスの二つ目の策を察した。マルケルスと中央本隊による敵左翼の挟撃である。したがってファラスはもう一つ別の側面から急に戦場に入ることで敵の混乱を大きくできると考えた。そのためにダラ要塞の背後を駆けてきたのだ。こうして右翼はマルケルス、ベリサリウス、ファラスにより三方面からの包囲を形成し敵を打ち破った。


 右翼から狼煙が上がった。これを見た左翼は右翼の動きに呼応して追撃戦を開始した。敗走を始めダラ要塞から逃げていたペルシア軍の歩兵に東ローマ軍の騎兵が襲い掛かるのは時間の問題であった。騎兵も不死隊と呼ばれた精鋭歩兵も失って雑兵ばかりの三万の歩兵に出来ることなど何もなかった。追いついたローマ軍の騎兵は速さを活かし左右と前、特に前を厚くを塞ぎ、包囲を敷いていった。遅れて到着した軽装歩兵が薄く後ろを固め、最後に到着した重装歩兵が蓋をした。

「この若造がぁ、殺してやる!総員突撃だ!正面突破だ!ペルシア兵の、男の気迫を見せんか!戦え!」

ペロゼスの檄は三分の二を失って戦意を失った味方に虚しく響いた。ペロゼスは近くにいた味方の首を刎ねてさらに続けた。

「貴様ら、生きて帰りたければ俺に従え!死にたくなければ目の前の敵を殺して進まんか!」

この様子を苦々しく見ていたベリサリウスは前に出た。

「臭い口で喚き散らすな低脳が。死ぬ覚悟を人に示さんとするならば貴様が貴様の身を持って死ぬ覚悟を示すがいい!」

「何だとぉ!やっと出てきたな腰抜けが、ブッ殺してやるクソ餓鬼が!」

猛然と味方を騎馬で蹴散らしながら、凄まじい剣幕でペロゼスが向かってくる。ベリサリウスは淡々と背中から矢を取り弓につがえた。彼は静かに、しかし力強く弦を引いた。右腕の力こぶは隆起し、血管が浮いた。その目は眼前の怒り狂うペロゼスを冷たく見据え、ペロゼスがベリサリウスまで残りあと100mのところまで迫ってきたとき、ベリサリウスは引き絞った弦を放した。

「地に還れ。散れ、愚将」

雷光が空気を切り裂くように、矢はペロゼスの首を切り裂いた。矢を弾こうとしたペロゼスの努力も虚しく、彼の胴と首は泣き別れとなった。血飛沫が上がり東ローマ軍は歓声を上げ、ペルシア軍は抵抗する気力を失った。馬上からベリサリウスはペルシア兵を見下ろしながら言った。

「よく聞け、帝国の土地を蹂躙した罪深い蛮族ども!ここで抵抗をやめれば捕虜とし、いずれは国に返してやる。さもなくば今見た通り貴様らの将の二の舞となる!これが私が貴様らに見せる最後の慈悲だ。今すぐ選べ!」


ベリサリウスの言葉を聞き、ペルシア軍の一部の兵はまだ戦おうとしたが、敗残兵の大半が捕虜となった。

こうしてベリサリウスは二万五千の兵で五万の敵を地に伏した。この大敗北を受けてササン朝ペルシアは東ローマへの侵攻を躊躇するようになった。彼らは失った兵以上に東ローマに対する自信を失い、ベリサリウスに恐れ慄いた。



 



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