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【機械の国】ナイトロール 前編

初めて小説を書きます。何かと文章力が書けるところがあるとは思いますが、頑張って書いていきますのでよろしくお願いします。

 僕はちっぽけだ。家族もいないし、友人もいない。小さな僕だけのアトリエと、人間にしては狭い行動範囲だけが僕の世界。友達は黒い猫だけ。一応商売はしているものの、アトリエがあるのは路地裏の人目につかないところだから人が来るはずもない。

「よお、アルト」

「やあ、アルティローテ」

 …言い忘れてた。僕の友達の黒猫。アルティローテは人間の言葉を話す不思議な猫。なぜ話すのかは本人…本猫?にもわからないらしい。

「客入りはどうだ?」

「いつも通り。平和だよ」

「ふふ、そんなことだろうと思っていいものを持ってきてやったぞ」

 そういったアルティローテの首に巻かれた風呂敷を外し、中の物を取り出し僕の目の前にある長机に置いた。

「…なにこれ」

「ブリキのロボットだ。腕がなまらないようにな」

「ありがと。これを治せばいいんだね?」

「そーいうこと」

 早速取り掛かろうとすると外から人間の足音が聞こえてきた。

『ここらへんに人間が来るなんて珍しい。まあ、すぐに引き返すかな…』

 そう思ったのもつかの間。足音は近づいてきて、扉の前で止まった。そして…

「すまない。今、店は開いているかい?」

 人が入ってきた。つば付きの帽子。黒の革で作られた旅人の服。藍色のロングコート。腰のあたりにある二丁の銃。髪は黒髪で長く後ろでまとめている。目は少し切れ長で、オッドアイとでもいうのだろう。左目が青く右目が黒い。整った顔に一瞬男性かと思ったが、胸部のふくらみと声でかろうじて女性ということが分かった。

「えぇ、開いていますよ」

 人と話すというのは本当に久々で、少し言葉がつっかえてしまった。

「よかった。これを直してほしくてね」

 そういって取り出したのは、今では全く見なくなった銃だ。それこそ、何十年前に作られなくなり、その名を知る人も指折り数えられるくらいの。

「エンドコア…。珍しいものを使っていますね」

 そういうと、その女性は顔を輝かせた。

「知っているのかい!?」

「小さいときに一度だけ持たことがあるんですよ。少し時間がかかると思うので、少し外で…」

「あ、ここで待っていてもいいかい?」

 言葉を遮られて発された言葉に驚いた。待つということはここにいるということ。時間を共有するということ。

「…別にいいですけど…。話すこととかありませんよ?」

「別にいいんだ」

「まあ、その分俺があんたと話してやるよ」

 急に話し始めたのは今まで気配のなかったアルティローテ。僕と彼女の間にあるカウンターテーブルの上に乗りなぜかドヤ顔をした。分かりにくいけど。そして、話しかけられた彼女は驚いてこそいたものの、すぐに笑った。

「今までいろんな動物を見てきたが、人語を話す動物は初めてだよ」

「そうか?あんたはほかにどんな動物を見てきたか教えてくれよ」

 話し出した一人に、椅子とミニテーブル。お茶を出し、一匹に背の高い椅子と猫用のお茶を出すと作業に取り掛かった。

 エンドコア。見た目は回転式拳銃に似ているが、一つ大きな違いがある。銃身とグリップの間にある大きく丸い石。人によって色を変えるその石は、持ち手の魔力を弾丸にする。弾を買ったりする必要や、いろんな所に薬きょうが散らばり動物がそれを食べ、死んだりする心配はない。いわば、環境にやさしい銃だ。だが、扱うことが難しいし、暴発による死傷事故や、魔力切れによる意識不明などがいくつもあったため、すぐに姿を消した。今、この銃を持っているのは、相当金持ちのガンマニアくらいで、持っていたとしても他の銃と一緒に飾られて、手に取り眺められるくらいだろう。それか、魔力の扱いが上手いハンター。

 ちらりと彼女の方を見る。服装からしておそらく後者。ハンターだろう。

『エンドコア使いの女性ハンター…』

 ハンターという、常に死と隣り合わせな職業に就くものは少なく女性はもっと少ない。

「よし、終わった」

 そう呟いて前を見ると、アルティローテとハンターさんがこっちを見ていた。

「…えっと、終わりましたよ。ハンターさん。あと、僕の顔に何か…」

「いや、鮮やかな手さばきだな、と思って。とても一度見ただけとは思えないな。他の技師は解体の仕方どころか名前まで知らなかったからな」

「な?言ったろ?アルトは凄いんだって」

「アルティローテ君の言ったとおりだな。それで…私も君のこと、アルトと呼んでもいいかい?」

「はい?」

 初めてだった。初対面の人には名前を呼ばれたことがなく、身内に呼ばれたのも数年前が最後。アルティローテが呼んでくれなきゃ忘れていたこの名前を、久々に来てくれたお客さんが呼んでくれるなんて誰が予想しただろうか。

「…いいですよ」

 なぜこの時僕はこう言ってしまったのだろう。だが、悪い気はしない。

「それじゃあ、よろしくな。アルト。私の名前はイズナだ。君の言う通りハンターだ」

「よろしくお願いしますね。イズナさん」

「敬語はいらないよ。見たところ年も離れていないようだしね。私は十六だが、アルトはどうだ?」

「あ、同じだ」

 大人びた彼女は、僕よりも三つくらい上だと思っていたから驚いた。

「へぇ…十六の凄腕技師か…若いな」

「お互い様…だよ。エンドコアを使うハンター何でイズナくらいだと思うから」

「まあそうだな。私も他のエンドコア使いなんて見たことがない」

「やったな。アルト。やっと人間の友達が出来たじゃないか」

 話に入ってきたアルティローテの言葉に驚いたのは僕だけではなかった。

「友…」

「達?」

「え?違うのか?呼び捨てで呼び合う男女なんて、友人とかそういう関係の奴らだけだぞ?」

その言葉に、僕は少し黙り込んでしまったが、イズナの方を見ると僕と同じように黙り込んでいた。

「あれ?イズナもだった?」

「ああ。今まで友達どころか家族もいなかったからな」

イズナのその言葉に僕は黙り込んでしまう。だが、アルティローテはその逆で、笑い出した。

「なんだい。笑うなんて失礼な人だな」

「いんや、俺は猫だ。しっかし、お前ら似てんなーと思ってな。浮世離れした職業に就く一匹狼の凄腕十六歳って。まあ、笑うのは駄目だったな。すまない」

「馬鹿にされたことは何度もあるが謝ってもらえたのは初めてだよ。君は優しいな」

「そうか?俺はただ思ったことを言っただけ」

「じゃあ、私もだ。思ったことを言っただけ」

「それだったら僕の友達は同じくらい優しいってことだね」

 そうやって言うと、一人と一匹が笑ったから僕も笑った。

「もうこんな時間か…。そろそろ宿に戻るとするか。じゃあな、アルト。アルティローテ。…また明日。邪魔じゃなければ」

「いいよ。基本暇人だから。じゃあね」

「んー…じゃあ俺も帰るな。それじゃ」

「また明日」


 一人と一匹を見送った後、アトリエの隅にある工具タンスの一番下にある引き出しを開き木箱を取り出す。箱を開け、中の物を見る。その中には、二丁の回転式拳銃が綺麗に入っていた。手に取ろうとすると、背後から声がした。

「嘘つき」

 後ろを向くと、黒く小さな影がこっちに来ていた。

「何が小さいときに一度見た。だ。何回も見て、何回も使ってるくせに。…まだ、怖いのか?」

「…アルティローテ」

 本当のことを言いながらカウンターテーブルに飛び乗ったアルティローテは、静かに僕の目を見てきた。

「…正直、まだトラウマはぬぐえてないよ」

「まあ、人のエンドコアに触れることができるようになったんだ。結構な進歩じゃないか?」

「そう…なのかな…」

「そうだぞ。この黒猫、アルティローテの言うことが信じられないのか?」

「そういうわけじゃ…ないけど…」

「ならいい。お前は信じることがたまに欠けてるからな」

「うっ…」

「それじゃあ、行くなー」

「バイバイ」

 アルティローテの姿が完全に見えなくなったところで、一つ深呼吸して再びエンドコアに手を伸ばす。黒い銃が指に触れる。ひやりとした感触はあの時と同じで、楽しかった記憶と一緒に思い出したくない記憶までも、思い出してしまう。夜の砂漠。大勢の人の目。砂に吸い込まれていく大量の血。その中央に倒れている一人の男。ずっと奥に倒れていると輝もなく大きいモンスター。・・・悪夢のような、悪夢であってほしい記憶がフラッシュバックし、そのまま座り込んでしまう。

「う…おぇ…」

吐き気を必死に抑え、息を整える。

「本当に…嫌になる」

エンドコアを素早く箱にしまい、タンスにしまう。震える足で立ち上がり、水を飲みに行く。やっとのことで一息ついた僕は、ごめんねと呟きベットに入る。それでもこれはいつものことであり、今日のことがあったから少しは楽に寝ることができた。

いかがだったでしょうか?一応、初投稿だったので設定が間違っているところはありますが、楽しんでもらえたのなら幸いです。一応、ナイトロール編は前編と後編に分かれる予定だったので前編は全く冒険要素や他の要素が見つからないことがあります。後編からその後は、冒険要素や他の要素をたっぷり詰めていきたいと思います。読んでいただき、ありがとうございました!

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