2.帰り道にてII
前回に引き続き、A君との帰り道です。
「俺、能力持ってるんだよね〜」
Aの謎の告白。
「へっ?今なんて?」
「だから、能力。」
皆さんも察していると思うが、この前と同じ流れである。
「どんな能力?」
いつも通り乗ってみる。
「えーっと・・・分解する能力。」
「具体的に?」
「細胞分解。」
細胞分裂は聞いた事があったが細胞分解は聞いた事がなかった。
「何それ?」
「えっ?知らないの?ほらなんか・・・(以下省略)」
「そ、それは細胞分裂じゃない?」
この言葉を使うと彼に殴られそうになるので、あえて言わなかった。
(ちなみにAは空手黒帯を持っている。)
「その能力の使い道って?」
「例えば・・・細胞分解を使って身長を100cm伸ばしたり・・・」
「ちょっと待った!!100cmも伸ばす必要性を感じないんだけど!!」
「そうだなぁ・・・例えば人にフンを落とそうとするカラスを追い払うとか?」
なんか微妙だなぁ・・・
「その言い方じゃカラスは狙って人にフンを落とそうとしているように聞こえるぞ!!」
「えっ?知らないの?」
「何を?」
「カラスは『あそこのトロそうな奴に落としてやろう、キッキキキキ・・・』とか思ってるんだよ!」
初耳だなぁ・・・
「マジかよ・・・カラスの奴、鬼畜すぎるだろ・・・てか、身長を100cm伸ばしたって届かない気がするなぁ・・・」
「細かいことは気にしない方が良いよ。」
そこは気にするとこだと思うんだけど・・・
「他には?」
「え〜っとね・・・道路を細胞分解して、毎日、形を変えるとか。」
形を何故変える・・・?
「え〜、って事は私達は日々、命ある物を踏みつけてるの!?」
謎の罪悪感。
「そうそう。」
「けど、全然形が変わってるように見えないんだけど・・・」
「あぁ、だって俺が毎日みんなの記憶を分解してるから。」
分解する能力、無敵すぎるだろ・・・
「あと、俺は正義の味方だから。」
「へぇ~、何から人類を守ってるの?」
興味本位で聞いてみる。
「バイキンマン。」
「えぇ〜!?あ、あの国民的アニメのキャラクターの敵ですか!?」
「あぁ、違う違う。」
「え~・・・じゃあ菌をバイバイする奴?いや、それじゃいい奴だし・・・」
もしかして菌を倍にする奴?それはめちゃくちゃな奴だしなぁ、と考えていると。
「違うよ、菌を『これ買わないかい?』って売買する奴だよ!!」
私は近所迷惑にならないか気にしながら笑いを堪える。
「ぷっ・・・えっ、菌を売買するの・・・?」
「そう、例えば覚醒剤や麻薬とかを売買してる。」
覚醒剤や麻薬は菌だけでできているものではない気がするなぁ・・・
「そういう事は警察に任しておいた方がいいと思うんだけど・・・」
「ダメだよ。」
絶対に意味わかんない能力を使う正義の味方よりも警察の方が任せられる気がする。
「なんで?」
「だって売菌マンは警察の心の中にいるんだもん。」
「うぉい!!日々日本の治安を守る警察が覚醒剤や麻薬を売買しちゃ駄目だろ!!」
「そうそう、だから大変なんだよねぇ・・・」
他人事だなぁ。
「もう、そこら辺はカウンセラーに任せちゃダメなの?」
「ダメだよ。」
謎の否定である。
「なんで?」
「だって、売菌マンはかくれんぼが上手だから。」
理由になっていないような・・・
「どうやって探し出すの?」
「大丈夫、俺もかくれんぼ得意だから。」
張り合う必要性の無さと理由になっていない件について。
「そうそう、売菌マンの菌を体に取り入れると体に目のクマがいっぱい発生するよ。」
「目のクマって何?」
もしかして、寝不足の時にできるクマか?
「違うよ、目の熊。」
「はあぁぁ!?目の熊って何っ!?」
「そのまま、目の熊。」
もうよくわかんない・・・
「で、目の熊は俺の味方。」
「えっ?ちょっと言ってる意味がよくわかんないんだけど・・・」
「だってほら、敵の味方は味方って言うでしょ。」
それは敵の敵は味方じゃないかなぁ・・・
「それはおかしくない?」
「だって俺は正義の味方じゃないから。」
聞いた話と違うぞ・・・
「ちょっと待てぇ〜!!さっき堂々と正義の味方って言ってだろうがぁ!!」
「あぁ、あれ嘘。」
何事もなかったようなセリフ。
「この野郎〜!よくも人を騙したなぁ〜!!」
一発殴ろうとするとAは逃げて行った。
ちゃんちゃん♪
細胞分裂ですよ?(笑)