6.ここが私の『現実』だ。
ふっ、筆が進まないっ・・・・・・!
私のせいじゃない、他の作家さん達のせいだ‼ 面白い小説一杯書くから!!!(責任転嫁)
基本読み専な気質が抜けない作者、弔イノ焔です。
ぶっちゃけ、書くのも良いけど読む方が好き。そんな気持ちで早数ヵ月。読む方を優先しすぎてストックとかゼロですよ。
定期更新? んなものあるわきゃないでしょうが。
あ、実は今までの5話分、ちょいちょい手直しして微妙に変わってます。大筋に変化はないので、興味がないなら無視でも一応大丈夫ですよ?
5ヶ月かけてこれだけ?とは言わないでください。短めです。
ここは、私にとっては異世界でも電脳世界でも同じ事、ただ生きるだけだ。『ログアウト』はもう私には関係無い、ここが私の『現実』だ。
さて、私にとってこの世界での3日目を始めよう。
とりあえずは、冒険者ギルドで依頼の確認だ。何をするにしても、とりあえずはお金を稼がなければ。『現実』ならば尚更重要である。公衆浴場に入る為にもっ!
説明していなかったが、冒険者ギルドは王都の中心に位置する神殿から東西南北の門に伸びる4本の大通りのうち、南の通り沿いにある。ちなみに、道を挟んだ反対側に商業ギルドがある。素材運搬の利便性とか、そういった理由があるのだろう。
ぼんやりしながら歩いていると、いつの間にかギルドの前に到着。周りからはなんかザワザワ聞こえるけれど、気にしてたらキリがない。
スイングドアを開けつつ入ったら、ギルドの依頼掲示板を確認する。これは入り口から見て右側の壁にある。
正面は冒険者登録や素材買い取りを行う受付カウンター、左はギルド運営の食堂兼居酒屋となっている。比較的安い値段で食事ができて登録した冒険者以外でも使える為に、この世界の住人達が大抵いる。まあ、朝早い訳でもないこんな微妙な時間にいる奴らは基本、飲んだくれだ。ジョッキ片手に騒いでいる奴らばかりである。
閑話休題。
掲示板には、『ホーンラビットの討伐』『ゴブリンの討伐』『薬草採取』等の常時依頼が分かりやすい所に、期限が短めな依頼がその次、少々遠出が必要だったり面倒と思われる依頼はまあ普通に探せば見つかる位置に貼られている。
まあ、カウンターで聞いても答えてくれるそうだが。
ふむ、楽なわりに報酬が高い、所謂『オイシイ』依頼はとりあえず無さそうだ。当然ながら、そういうものは住人達に早めに取られていくのが常だろう。わざわざ『マズイ』依頼を取りたがる者など、早々いることはないはずだから、な。
もしかしたらログイン時間のためにまだ暗い中やって来たプレイヤーが持っていった分も含まれているだろうか。
それはともかくとして、常時依頼は受注の必要はないため、そのまま平原へ行くことにしよう。討伐系の常時依頼は、カードに自動的に記録された倒した魔物の表示を提示すればいいのだ。実に便利で、ズルのしようがないシステムである。本当に、地球にもあったら便利なのに、と切実に思う。そちらの体は既に死んだため、最早私には関係無いことではあるが。その内どっかの天才が完成させるかも知れない、とぼんやり思う。
まあ、地球でそんな獲物を狩りまくることなんざあり得ないが。動物保護団体とかがうるさいし、法律も条例もかなりあるしな。
◇◆◇
早速南門から出て、平原に到着した。
時間としては午前9時過ぎ、早くも遅くもない時間。ちらほらと人影は見えるが、まあ気にしなくていいだろう。
パッと見た範囲にはホーンラビットは見あたらないため、ポーションの材料となる薬草を【物品鑑定】で探しつつ移動を開始。まあ、近場には薬草も残っていないだろうから、暫くは【物品鑑定】のレベル上げにしかならんとは思うが。
と思ったらイキナリ薬草を発見。鑑定してみた所、品質は低め。サイズも小さい為、まだ若いのだろうか。
いい感じのモノだったら恐らくこの世界の住人の冒険者が片手間に取ると思われる(多分)。渡界人だったらこんな最初の街から徒歩1分もしないような場所には、若いとは言え薬草があるとは思わない、ということだろう(多分)。
どちらもカンの適当な考えだから、違うかもしれない。
品質が低くとも、まだスキルレベルの低い【調合】のレベル上げにはちょうどいいと思うから、全く無駄にはならない。そんな訳でちょいちょい生えている薬草を採取していく。
ちなみに、道具屋で買った採取用ハサミを使った。テキトーにむしったりすると更に品質が低下する、流石にそうなったら使えないレベルまで行ってしまう。気を付ける所にはきちんと気を付けなければ。品質は作業難度にも出来上がるポーションの効果にも影響する……と思う。気にして悪いことはないだろうから、多少の手間は厭わない。
暫くしたら、薬師ギルドにも行こう。きちんと教えてもらわないと、ちゃんとしたモノは作れそうにない。
少し遠目に王都を見つつ、今日は王都の北東方面をなんとなく目指す。別に今すぐ何か目標があるという訳でも無し、暫くはのんびり予定。とは言いつつも、遠目に魔物を見たら仕留める方向へ。魔物は増えるのが早い、『狩りすぎ』は存在しない。だから常時依頼も出ている。
若い薬草と、それよりは少ない品質高めで育っているとおぼしき薬草を収穫しつつ暫くすると、森が見え始めた。王都からみてほぼ北東に位置するセラス森林は、何故か細長く北東方面に伸びているらしい。理由は不明。北東端は湖を囲うように円形に広がっているそうな。ゴブリンとその上位種(レベルアップして進化した個体)が多いため、女性は特に注意が必要だそうな。
渡界人は自殺すれば逃げられるが、住人は捕まれば苗床にされることもあるらしい。グロ注意。まあ私には関係無い……って、今は私も女だった。といっても、気にしすぎることはない、襲ってくるなら殺せば良いだけだ。襲ってこなくても討伐するが。高い訳ではないが、換金できるし。
たまに生えている薬草をちょいちょい採取しつつ、『はぐれ』なのか、単独で襲いかかってくるゴブリンの頸を刎ねつつ、スローペースで森方面へ。ちなみに、ゴブリンは『緑の肌に醜悪な顔をしたチビの薄汚いオッサン』のような魔物である。基本素手か、拾ったとおぼしき木の棒を持っているだけ、比較的弱い魔物だ。何故かは知らないが、腰に毛皮っぽいモノを巻いているだけマシ、とは思う。ゴブリンのアレなんぞ見たかない。
こういう主に弱い敵ばかりの時には、【始まりの竜糸】が便利だ。いつもは腰に装備しているが、魔力さえ通せば手に持つ必要はなくそのまま展開できるのだ。多目に魔力を込めて待機し、射程圏内に入ったところで頸に巻き付け、あとは絞めてポーンである。もしくは、真っ直ぐ伸ばして貫通。実にカンタン。
私は、弱い敵には余り興味はない。ナギ達と行った時は実験、威力チェックをしていただけ。片手間に済むなら雑魚は『処理』程度で十分である。多すぎると回収しきれなくなるため、程々にしておいてほしい。
街と森の中間地点程になった所で、正午くらいになった。まばらに生える木の側にシート──雑貨屋で購入──を敷き、弁当──宿屋の主人に作ってもらった──を食べる。今日はハム、レタス、チーズを挟んだサンドイッチ、シンプルながら実に美味しい。素材同士がケンカせず、調和している。
こういう時にこそ、あの宿屋を選んで良かった、としみじみ思う。王都に滞在する時は、可能な限り彼処に泊まろう。
食べ終わった所で弁当をしまい、また歩き出す。今日はそこまで時間がある訳ではないからな。またも実力差をわきまえずに襲いかかってくる魔物を糸で駆逐していく。既に流れ作業感が凄いが、素手や刀だと間合いが狭いため、この方が楽なのだ。あんまり近づきたくないし。ここらにはゴブリンがまれに投石してくる以外には遠距離攻撃は存在しない、大して気負う必要はない。
2時か3時くらいになって、森の入り口付近に到着。上がったステータスでこの時間なのでわりと離れている方、なのだろうか? この世界の感覚はまだ理解途中。さあ探索、と行きたいところだがまだ夜営の用意はしていない。これ以上外にいては門が閉まる前に帰れない、早く帰ろう。
◇◆◇
結局長めの散歩、という程度の一日だった、イベントは少ない。
街に着いたその足で冒険者ギルドへ。夕方の混み始めたカウンターで討伐報告、そう高い訳ではないが報奨金をもらう。依頼にはあったが、薬草は提出しない。品質の低い若い薬草だし、品質高めの薬草も自分で使うからな。
宿屋に着いた、夕食を頂く。今日はコクのあるビーフシチューとパン。これだけではあるが、十分に満足できる。流石の腕前、いつか自作できるように要努力、だな。食べられる魔物の肉とかを現地調理、というのも醍醐味だ。
「主人、おかわりだ」
おかわりは仕方ない。美味しいのが悪い。
もう暗いから、今日はもう出掛けるのは止め、素振りでもしようか。公衆浴場には行くが。
明日は図書館へ行きに調べモノをしよう。と、しっかり一口一口味わいながら予定を考える。
さて、明日はどんな日になるのか。
今日も、主人に裏庭を使う許可をもらい、何かは詳しく知らないが照明に照らされる中、素振りをする。
まずは型を確認するようにゆっくりと。この女性としての身体にも多少慣れていてはいるが、完璧には程遠い振り。切り返しは筋力ではなく、関節の柔らかさと腱を使ったバネで弾むように、滑らかに。このような最適化の鍛練は、おそらく生涯終わりはないだろう。
続いて、仮想敵と切り結ぶように。仮想敵は、当然ながら師匠。人間とは思えない強さの達人。今回の想定は師匠の全力の6割、手加減をした状態の師匠である。手加減していたとしても、気を抜けば一瞬で殺られる。本気の動きをもって、全力で立ち向かう。というか、レベリングをしてステータスが上がった今でさえ勝てない師匠の異常さが際立つ。今はイメージ上でしかないとはいえ、本当に何者なのだろうか。
隙を見つけて仕掛けた袈裟斬りは師匠の刀、それも柄であっさり受け流され、僅かによろめきかけた瞬間私から見て右から横薙ぎが迫る。
師匠は間合いと〝間〟の読みの精度が異常なまでに高い、僅かな判断ミスは逆撃に直結する。それ故に、微塵も気を抜いてはいけない。カウンターだけに気を払っていても、それはそれでその意識の隙間を突かれる。
刀を盾にしつつのバックステップでギリギリ直撃を避けつつ受け流す、着地と同時に最短距離を狙って喉に放った突きは首を傾けただけで回避される。新撰組に伝わっていたという平突き、る○剣の○突に近いフォームで放っていたため、そのまま横薙ぎに繋げる。が、それも流れるように構えられた刀の上を滑らされ、カウンターのように振り下ろされる師匠の刀。それを、ようやくできるようになった魔力と氣力の瞬間的な操作で一瞬のみ強化した脚力で回避、そのままハイキックを見舞う。これも軽々と避けられるものの、立て直す隙を得るためなので問題ない。ハイキックの勢いのままバク転、一旦距離をとる。
地球には存在しない力も跳ね上がったステータスもようやく慣れ、それなりに組み込めるようにはなってきた。あとは、無意識レベルで使えるまで高めよう。
……いや、もしかしたらこんな力が地球にもあるのかも知れない。師匠の異常さはそれなら説明できる……かも?
なんて考え事をしていると、再び師匠が迫ってきた。
斬りかかってくる直前の隙ともいえない隙に刀を捩じ込み、体勢を崩す。軸がブレた一瞬を逃さずに追撃。軸をズラせば、いくら師匠とは言え〝完璧な〟反撃は不可能。が、刃に柄を当てて防がれ更に逆撃が飛んでくる。一瞬遅れて師匠がわざと体勢を崩したことに気付くも、追撃でズレた軸では避けも防ぎも出来ず、そのまま刀が迫り、斬られ─────
──まったく、戦いに夢中になるにも限度があるでしょう? ■■■様。………ぐすっ……
──あー……すまん。
──本当ですよ? 傷だらけの貴方を見ることになる私のことも考えてくださいよ……。
──すまんて! 私が悪かったから、あぁもう泣くな■■■!
──また泣かせましたねぇ、■■■。
──いや、お前も慰めに手伝え■■■!
──お前もそんなお前だからそうなるとわかっているだろう、■■■?
──追い打ちかけるな■■■■!
───突然、映像がフラッシュバックした。
戦い、傷ついてふらつく『私』の視界に映る、三人。
涙目になりながらその『私』を癒す暗い蒼色と明るい水色が混じり合う美しい宝石のような髪を持つ女性。
そんな『私』達を少し呆れながらも優しく見守る、白と黒が不規則に混じりあう毛並の狐耳と輪郭が少しぼやける複数の尾を持つ妖艶な女性。
追い打ちをかけるような少し厳しい口調ながらも苦笑する、中性的な見た目の人物。
〝涙目〟も〝優しい目〟も〝中性的な顔〟も見えているはずなのに、その顔と表情だけがわからない。
何故か私には、これが夢や幻覚等ではなく『記憶』だと思えた。声の中で名前だけは不思議と聞き取れなかったが、〝事実〟だと。
今日私は、なんとなく北東の森を目指した。それは本当に『なんとなく』なのか、それとも無意識の内にこの『私』の記憶に招き寄せられたのか。
まだ、謎ばかりだ。
………それはともかく、風呂に行こう。
書き上がった次の日の0時に投稿です。
出来れば失望せず、のんびり待っていただけると幸いです。
カムイの【刀】【魔力操作】【氣力操作】のスキルレベルの上がり方凄すぎ、と思うかもですが、『技量が高ければ上がり易い』という設定があったりします。つまり、カムイ以外も武術系リアルチートは優遇状態。