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僕は捨てられた。けれど、僕は幸せだ。  作者: 小鳥遊 雪都
出逢い
4/65

無遠慮にガサガサと音を立て、茂みから出て来たそれらはそこに彼の姿を認めると隠しきれない困惑の色を個々ごとのていに浮かべた。


茂みから出て来たのは十五頭ほどの狼の群れだった。


その群れの中で最も大きな体をした狼が彼の前へと歩みを進めた。


その狼は大きな頭を僅かに彼へと垂れさせると暗闇の中でも怪しく輝く白い鋭利な牙をチラリと覗かせた。


『人間の浅ましきこと・・・。我が子を捨て置くか』


狼は低い声でそう言うとくつくつと笑い、冷ややかな視線を未だ泣き続けている赤子へと投げかけた。


その赤子の泣き声は先程よりも弱々しくなっていた。


彼は小さな溜め息を一つ溢すとゆっくりとその赤子の元へと歩を進めた。


彼のその行動に狼たちは小首を傾げ、彼の様子を静かに見守った。


赤子に近寄った彼は立ったまま襤褸ぼろの着れ屑に包まれた赤子を覗き込み、もう一度、小さな溜め息を吐き出した。


覗き込み見た泣き続けるその赤子は本当に小さく哀れなほど痩せていた。


それなのにここまで泣く力をその惨めな体の一体どこに隠し持っているのかと彼は不思議な心持ちにさせられた。


『その赤子はもうじき事切れる』


狼たちは遠慮がちに歓喜の声を上げ、爛々とした目で襤褸の着れ屑に包まれた赤子を見据えていた。


彼は小さく頷くとその場に屈み込み、襤褸ぼろの着れ屑に包まれた赤子をそっと抱き上げた。


それを見て狼たちがざわつきだす。

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