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傍観者
このまま捨て置けばこの人間の赤子は幾ばかりも生きられまい・・・。
いや、その小さな命が尽き果てる前にこの赤子は狼の餌食となってしまうだろう。
遠くから聞こえていた狼の鳴き声はついそこから聞こえてくる。
深い闇の中に立ち並ぶ木々の合間からはキラキラと輝くものが数十ほど見えてきていた。
そして、そのキラキラと輝くものは必ず対をなして動いていた。
僅かに赤子の泣く声が小さくなった。
それは己の身に危険を感じてのことなのか、それともその小さな命が尽き果てようとしてのことかはただの傍観者の彼にはわからなかった。