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怖い
「雨月様は本当にお優しいお方です。けれど、ふとした時に怖いなって思うことがあるんです・・・。本当に・・・本当にたまになんですけれど・・・」
雪の言葉に店主は無言で頷いただけで言葉を発することはなかった。
「怖いなんて思っちゃいけないのになのに・・・怖いなって思っちゃうんです・・・」
雪の大きな目から熱い涙がぱたりとこぼれ落ちた。
店主は雪の目からぱたりぱたりと落ち続けるそれを不思議そうに見つめ、小さな溜め息をふうーと吐き出した。
「意地の悪い質問でしたね。申し訳ありません」
「いえ・・・そんなことは・・・ありません。僕が・・・いけないんです」
雪の言葉に店主はただ苦い笑みを浮かべることしかできなかった。
店主は自分の性根の悪さに些か呆れもしたし、雪のその純真さには感服せざるを得なかった。
それと同時に雨月がなぜ、この人間の子供を未だ手元に置いているのかも何となくわかったかのように感じられた。
それから店主と雪は言葉を交わすことなく帰路についた。




