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小さな功績
「何も謝ることなんてありません。私のもの言いが悪かったですね。店に客の気があったので帰りたいのです」
「お店に・・・お客様・・・ですか?」
「はい。戻ってもよろしいでしょうか?」
店主の申し出に雪は神妙な面持ちで頷き、自分で耕し、自分で種を蒔いた畑を振り返り、見つめ見た。
それは雪が成した小さな功績のあとだった。
また明日も手伝わせてもらえるだろうか・・・。
「また明日、手伝って下さい」
「え?」
店主のその言葉に雪は元から大きな目を更に大きく見開いた。
そんな雪に店主は優しく微笑む。
「お願いします」
同意を求める店主の言葉に雪ははにかみつつ頷いた。
その肯定の意に店主は屈託なく笑んで小さな雪をゆっくりと抱き上げた。
「・・・あの・・・僕、自分で歩きます」
「遠慮なく」
店主の言葉に雪は苦笑混じりに頷いたが、それと同時に何かがまた胸の内につっかえた。
雪はその胸のつっかえから逃れるように店主の身体から自分の身を僅かに引き離した。
それはほとんど雪の無意識のうちの行動だった。




