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赤子
その赤子は耳障りなほど大きな声でただ、泣いていた・・・。
その泣く赤子は衣服を身につけておらず、その小さく弱々しい体には襤褸の着れ屑が悲しいほど丁寧に巻かれていた。
その襤褸の着れ屑以外、何も赤子を暖めてくれる物はない。
それも今日で師走も終わろうかと言う寒空の下でのことだ。
赤子がそこに捨て置かれてもう半刻以上が経った。
※半刻は昔で言う一時間。
いつの間にか降りだした雪はうっすらと凍てついた大地を覆っていた。
赤子の吐く息は白く、襤褸の着れ屑から僅かに覗いたその小さな手は熟れた果実のように痛々しく赤くなっていた。