10/65
姿
妖である雨月の容姿は人間のそれとそう変わりはなく、すぐに妖だと気づかれることはない。
ただ、妖は妖でしかなく、いくら人間の体を取り繕っても妖は人間にはなり得ない。
それは雨月とて例外ではなく、それが世の理と言うものだ。
雨月の目は僅かに紫色を帯び、その瞳孔は猫や蛇のものによく似ている。
雨月はそれ以外、表だって人間と違うところがわからない妖だった。
だが、それはあくまでも人が目にすることのできる範囲の話なのだけれど・・・。
「雪は何も悪いことなどしておらぬ。私の物言いが悪かっただけのこと。気にするでない」
雨月の言葉に雪は生真面目な顔で頷き、小恥ずかしげにはにかんだ。
雨月はそんな雪を軽々と抱き上げ、ゆっくりと辺りを見回した。




