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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第九十八回


 ************   ***********:


 『婚約の儀』に選ばれた、肉体派で、しかもなかなかの美男子でもあるかの青年は、ひとりだけそこから連れ出された。


 もちろん、彼は普通に会話ができるのだが、ここでは一切の会話は禁じられている。


 一言でも発したら、失格である。


 もし、失格になったら、どうなるのか・・・・・


 そうした実例は、村にはまったく伝わってはいない。


 なかったことなのか、どうか、ということさえも、何ら情報は、まったく、なかったのである。


 ただし、選に漏れたという以外の理由で、つまり、『失格』して帰って来たというような話は、一切伝わってはいなかった。


 彼は、そうした話がないこと、は当然知ってはいたが、自分が『失格』するような行動をとった覚えは、それこそ、まったくないのだ。


 もしあるとしたら、自分が情報提供者であると言う、絶対に知られてはならない事実だけである。


 なので、彼は当然覚悟を決めていた。


 おそらく、王女様に見破られたのだろう。


 それは、実際に、正しかったのだけれど。




  ***   ***   ***



 真っ白な人間三人に引きずられるように、これまた真っ白な通路を歩かされた。


 照明もないのに、通路自体が、白く淡く輝いているのだ。


 やがて、行き止まりになった。


 そこには、タルレジャ教団の紋章がはめ込まれていたが、それ以外は、白い行き止まりである。


 これが、あまた宇宙に張り巡らされた、時空トンネルの一部であることは、ここにいる誰も、まだ知らなかった。


 実際、誘導者たちも、何も話さない。


 これも、儀礼である。 


 不思議なことに、・・・・といっても、ここは不思議な事しか起こらないが、・・・壁がすっと消滅して、大きなエレベーターくらいの空間が空いた。


 白い誘導者は、そこに入る様に手で合図をした。


 男に、逆らう余地はない。


 協力者が見てくれているに違いないと言うこと以外に、彼にはよりどころとなるものは無くなっていた。


 本来ならば、『信仰』というものが支えてくれたはずだが、余計な情報を知ってしまったおかげで、かなり、役に立たなくなっている。


 『信仰』は、余計なことを知らないことと、大切な何かを失うことで成り立つ側面が大きい。


 もちろん、それを、どう評価するかによって、さらに大きな価値を生み出すこともあるのだが。




  *****   *****



「さて、失った信仰を、取り戻させてさしあげましょう。」


 第一の巫女=第一王女≒ヘレナ=弘子、が言った。


「取り戻す? 彼は不感応者ですか?」


 第二王女が確認した。


「作られた不感応者ね。もともとはそうじゃなかったのですわ。でないと、北島の住民にはなれないですものね。感応者を不感応者に改造する悪魔がいるのです。秘かにね。それは、しばらく前から分かってはいたの。罪のない我が子たちを、病気に感染させる、まあ、ブリューリみたいなものだけれど、もっと違う性質のミュータントですわ。」


「誰、なのですか?」


「さああて、そこが問題なんだなあ。パブロ議員さんが噛んでるのは間違いないけど、実に慎重でね。日本の、変わり種警察官さんを『お池の女神様』のお婿さんにしてやって、さぐったりもしてたんだけどね。」


「ああ、あの『不思議が池の幸子さん』ですか。」


「そうそう。でも、なかなかしっぽを出さんのじゃ。今回は掴んでやる。シモンズ様も、ぼちぼち行き着いてるんじゃないかのう。」


「え? シモンズ様ですか。」


「そうよ。あたくしの、大切なしもべ『そのⅠ』だもの。本人は、そうは思ってないけどね。」


「なるほど。さすがは、お姉さまですわ。」


「ほほほほほ。あなた、普通にほめちゃだめよ。わかっとるじゃろが? わいは、けなされるのが大好きじゃけん。」


「じゃあ、さすがは、お姉さま、悪魔、鬼、悪い魔女さん、ですわ。」


「ほーほほほほほほ! うれしいなあ。最高じゃ。さて、そんじゃ、勢いが付いたところで、儀式に向かおうぞ。わし自身でもある、わが妹よ。」


「はい、お姉さま。・・・あの、なに、するのですか?」


「まあ、だまって、見とれ!」


「はい、お姉さま・・・」



   **********   **********



「おかしいなあ、ひとりだけ、外されたみたいだ。」


 男が言った。


「はあ、ううん・・・・ばれたかな。あやしいな・・・」


「いやあ、どうなんだろうかなあ。どこかに連れて行かれてるな。他に見えない?」


「いえ、この真っ白な虚偽の世界だけよ。あ、なにかエレベータみたいなものに入ったわ。まずい、空間を転移するわ。」


「ついてける?」


「ええ、大丈夫みたいね。ちょっとそっちの画像は乱れるかも。」


 たしかに、テレビ画面は大きく揺れた。


「どこに出るんだ?」


「待って、追ってるから。あの世に行くのかも。」


「まさか。」


「ううん・・・・・あ、止まった。ドアが開く。」




   **********   **********




 明るい光に満ちた、美しく花咲き乱れるという、そこは、まさに『天国』だった。



 向こう側に、緑の丘があって、色とりどりの花たちに囲まれたゆるやかな坂道が続き、その先には、『真っ白な家』が建っているのだった。




   ************   ************






























  *************   *************




「やた~~~~! 幸子出たあ~~~~~~~!!!ねねね、やましんさん、出た!」


「はいはいはい。出ましたねぇ。良かったねぇ。」


「はい・・うるうる・・・・・」


「感動的ですね。」


「次回です。問題は、幸子の準主役の座が確立されるのです!」


「ああ、・・そうです・・か。」


「はい! ぜったいに、そうです。」


「やましんも、多少期待した時期もあったなあ。ちょっとは、昇進するんじゃないかと。」


「しましたか?」


「いえ、20年近く、ただひたすら平行移動でした。」


「幸子は、負けません。絶対、準主役を取ります!」


「ああ、はい。はい。うん。そうですね。・・・・どうしよう・・・」





  ************   ************










































 





















 

 






 

 






 

 








 




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