わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第九十四回
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「いい、よおく見て、あなたがふたりを選びなさい。わたくしが残りを選びます。今回は、武君と正晴さんの分も必要よ。いいわね。」
「はい、お姉さま。つまり4人ですね。」
「ううん・・・・・数はね、実は、あくまでも、わたくしの好みなんだな。多くなっても構わないの。誰も文句は言わないわ。実際、おいしそうだったら、欲しかったら、全部選んだって、かまわないの。」
「みな、おいしそう・・・・・」
「そうよ。昔から純粋に培養管理され、また、特に厳選された人間たちだもの。おいしくないわけがないわ。」
「すぐにも、食べたいですわ。」
「我慢しなさいな。王女のたしなみですわ。」
「はい、お姉さま。」
「近づいて、しっかり品定めをしてもいいわよ。あなた、初めてだから、そうしましょうか。」
「はい、お姉さま。」
王女二人は、巨大な椅子から降りた。
優雅な姿で、男たちに近寄った。
とても、17歳とは思えない。
そうして、たくましく、また美しい男たちを、ひとりずつ確認して回ったのである。
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「さわっても、いいのよ。」
姉は、妹にささやいた。
「はい、お姉さま。」
第2王女は、最初はいささかためらいがちではあったが、男たちの体を、徐々に触ってみているうちに、少しずつ慣れてきた感じがしていた。
「いい感じですわ。・・・あの、どうやって、実行するのですか? どこの部位を選ぶの?」
「そうね、まあ、よく考えなさい。二人に付いては、あなたに任せるから。リリカさまが、最高の機械を開発してくれたのよ。お気に召すまま、なのよ。」
「まあ、そうですの。」
「まあね。まだ火星にいる最後の時期でした。あのかたの、最高傑作と言ってよいでしょう。」
「まあ。」
「あとで、見に行きましょうね。いま、まず、そなたがするべきことは、選ぶことじゃからのう。」
「はい。お姉さま。・・・わしの好みで良いのじゃな。」
「そうじゃ。ほほほほほ。」
第1王女は、片手で、男の深く削られた胸のあたりをなでながら、もう片方の手を口に当てて、軽く笑った。
第2王女も、それに倣ったのである。
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「これは、見たくない光景だな。」
彼は言った。
「魅惑的ですね。」
「女にとっては、そうなのか?」
「まさか。まさか。録画は、ばっちりしています。」
「議員は、趣味が悪いよなあ。こんなの、証拠にするかい。」
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彼女の意識の中の映像が、そのまま可視画像に落とされている。
「しかし、実際は、まだこれでは、決定的な証拠にはならないな。 もし彼が選ばれなかったら、そこでおしまいだな。きっとね。」
「ええ。そこは、もう『運』ですね。」
二人が見ていた映像は、10人のうちの、ひとりが見ていた映像である。
彼は、目線を動かすことは、ほぼできない。
視界は限られている。
しかし、そこに、ついに、二人の王女が、やって来たのであった。
彼女たちは、いまや、スパイの体を、細かく品定めし、あちこち撫でまわったのである。
その感触も、きちんとデータ化され、端末から実体験できたのだ。
「きもちわるいなあ。絶対に嫌だ。むしずが走るな。」
「あら、そう?」
彼女は懐疑的に彼を見た。
「いいんじゃないの? 王女様よ。」
「ばかな。結局はきっと、ばらばらにされるんだろ? ぼくは、病院の治療では、いささか慣れてるが、これはいくらなんでもどうかしてるさ。」
「火星では、当たり前だった。公衆の面前で、堂々と調理が行われてた。そこに比べたら、こそこそと、かわいいものよ。」
「きみは、体験者だからな。そこは、ぼくには、歯が立たないよ。」
「でもね、これは重要な事実です。火星では、怪物ブリューリにそそのかされ、気がおかしくなっていた『女王』が行った行為として、ある意味、気の毒な側面があるとされていた。でも、この行為は、こうして儀式化されて、ずっと継続していたことになるわ。それは、なにを意味するの?」
「なんだい?」
「さあて、そこは、まだ分からないわ。もしかしたら、これは模擬体験かも知れない、過去の忌まわしい記憶が引き起こした、模擬的な儀式よ。」
「それならば、適当に終わるはずだな。」
「そうね、でも、あまりに混み入り過ぎてるわ。ここまで、やる? 実際に、最後までやり通す儀式かもしれないわね。トラウマが生んだ、実体験の再現ね。十分あり得るわ。本当に食べてしまう。」
「いやあ・・・・確かにね。まあ、見ていればわかるさ。」
「見たいんでしょ?」
「ばかな。男にとっては、屈辱だろうに。」
「そうかな?」
「そうだと思うぞ。」
「ふうん・・・・」
彼女は、また懐疑的に、彼を見たのだ。
「しかし、殺させるわけにはゆかないさ。準備はできてる?」
「ええ。まあ、何とかなるとは、思う。現場での予行演習は出来ないけど、こっちも、模擬試験はやったから。」
男は、平然としている女を、あきれたように、見た。
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