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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第九十四回


 ************   ************



「いい、よおく見て、あなたがふたりを選びなさい。わたくしが残りを選びます。今回は、武君と正晴さんの分も必要よ。いいわね。」


「はい、お姉さま。つまり4人ですね。」


「ううん・・・・・数はね、実は、あくまでも、わたくしの好みなんだな。多くなっても構わないの。誰も文句は言わないわ。実際、おいしそうだったら、欲しかったら、全部選んだって、かまわないの。」


「みな、おいしそう・・・・・」


「そうよ。昔から純粋に培養管理され、また、特に厳選された人間たちだもの。おいしくないわけがないわ。」


「すぐにも、食べたいですわ。」


「我慢しなさいな。王女のたしなみですわ。」


「はい、お姉さま。」


「近づいて、しっかり品定めをしてもいいわよ。あなた、初めてだから、そうしましょうか。」


「はい、お姉さま。」


 王女二人は、巨大な椅子から降りた。


 優雅な姿で、男たちに近寄った。


 とても、17歳とは思えない。


 そうして、たくましく、また美しい男たちを、ひとりずつ確認して回ったのである。



    **   **   **



「さわっても、いいのよ。」


 姉は、妹にささやいた。

 

「はい、お姉さま。」



 第2王女は、最初はいささかためらいがちではあったが、男たちの体を、徐々に触ってみているうちに、少しずつ慣れてきた感じがしていた。



「いい感じですわ。・・・あの、どうやって、実行するのですか? どこの部位を選ぶの?」


「そうね、まあ、よく考えなさい。二人に付いては、あなたに任せるから。リリカさまが、最高の機械を開発してくれたのよ。お気に召すまま、なのよ。」


「まあ、そうですの。」


「まあね。まだ火星にいる最後の時期でした。あのかたの、最高傑作と言ってよいでしょう。」


「まあ。」


「あとで、見に行きましょうね。いま、まず、そなたがするべきことは、選ぶことじゃからのう。」


「はい。お姉さま。・・・わしの好みで良いのじゃな。」


「そうじゃ。ほほほほほ。」


 第1王女は、片手で、男の深く削られた胸のあたりをなでながら、もう片方の手を口に当てて、軽く笑った。


 第2王女も、それに倣ったのである。



    *******   *******



「これは、見たくない光景だな。」


 彼は言った。


「魅惑的ですね。」


「女にとっては、そうなのか?」


「まさか。まさか。録画は、ばっちりしています。」


「議員は、趣味が悪いよなあ。こんなの、証拠にするかい。」



   **     **     **



 彼女の意識の中の映像が、そのまま可視画像に落とされている。



「しかし、実際は、まだこれでは、決定的な証拠にはならないな。 もし彼が選ばれなかったら、そこでおしまいだな。きっとね。」


「ええ。そこは、もう『運』ですね。」



 二人が見ていた映像は、10人のうちの、ひとりが見ていた映像である。


 彼は、目線を動かすことは、ほぼできない。


 視界は限られている。



 しかし、そこに、ついに、二人の王女が、やって来たのであった。


 彼女たちは、いまや、スパイの体を、細かく品定めし、あちこち撫でまわったのである。


 その感触も、きちんとデータ化され、端末から実体験できたのだ。



「きもちわるいなあ。絶対に嫌だ。むしずが走るな。」


「あら、そう?」


 彼女は懐疑的に彼を見た。


「いいんじゃないの? 王女様よ。」


「ばかな。結局はきっと、ばらばらにされるんだろ? ぼくは、病院の治療では、いささか慣れてるが、これはいくらなんでもどうかしてるさ。」


「火星では、当たり前だった。公衆の面前で、堂々と調理が行われてた。そこに比べたら、こそこそと、かわいいものよ。」


「きみは、体験者だからな。そこは、ぼくには、歯が立たないよ。」


「でもね、これは重要な事実です。火星では、怪物ブリューリにそそのかされ、気がおかしくなっていた『女王』が行った行為として、ある意味、気の毒な側面があるとされていた。でも、この行為は、こうして儀式化されて、ずっと継続していたことになるわ。それは、なにを意味するの?」


「なんだい?」


「さあて、そこは、まだ分からないわ。もしかしたら、これは模擬体験かも知れない、過去の忌まわしい記憶が引き起こした、模擬的な儀式よ。」


「それならば、適当に終わるはずだな。」


「そうね、でも、あまりに混み入り過ぎてるわ。ここまで、やる? 実際に、最後までやり通す儀式かもしれないわね。トラウマが生んだ、実体験の再現ね。十分あり得るわ。本当に食べてしまう。」


「いやあ・・・・確かにね。まあ、見ていればわかるさ。」


「見たいんでしょ?」


「ばかな。男にとっては、屈辱だろうに。」


「そうかな?」


「そうだと思うぞ。」


「ふうん・・・・」


 彼女は、また懐疑的に、彼を見たのだ。


「しかし、殺させるわけにはゆかないさ。準備はできてる?」


「ええ。まあ、何とかなるとは、思う。現場での予行演習は出来ないけど、こっちも、模擬試験はやったから。」


 男は、平然としている女を、あきれたように、見た。









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