わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第九十三回
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集められた20名の若者たちの中から、大奉贄典は最終候補者をさらに10名に絞り込んだ。
これは、大奉贄典の重要な職務であり、今回は特別に弟子にも同席させた。
弟子にとっては、たった1回しか許されない、極意を伝達されるための重要な儀式でもある。
この機会に、全てを学び取らなければならない。
候補者たちは、ただ、北島の地下深くにある秘密の部屋の中に招き入れられるだけで、自分が何をされているのかは、まったく分からない。
着衣は一切、身に着けてはいない。
大奉贄典とその弟子は、口承でのみ伝えられている『選考基準』に基づいて、最終候補者を絞り込んでゆくのだ。
それは、もともとは、『女王ヘレナ』によって要求された基準である。
初代から、現代まで、それは厳密に守られ、伝えられてきたのである。
ただしヘレナは、抜き打ちで試験をすることとがある。
大奉贄典がその在位中に、普通は2回だけ行われる。
3回実施された例は、過去1人だけある。
現在の大奉贄典は、もう300年も前に、1回だけ試験されたことがあった。
それだけだった。
女王の、彼に対する信頼は、非常に厚かったのである。
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『最終候補者たち』は、全身のみそぎを済ませ、服は着ないまま、普段は完全に閉鎖されている海底の極秘の地下通路を、15人乗りのシャトルで通りぬけて、儀式が行われる島に入る。
地上には決して現れない儀式担当者がふたり、同乗しているが、頭から足の裏まで、全身白のスーツで覆われていて、その正体はまったく分からない。
人間であると言う確証もない。
言葉は全く発しない。
この島は、上から見たところでは、ただ、ジャングルばかりの島である。
道路もなく、飛行場も、ヘリポートも、橋も、建物も、まったく見当たらない。
かの議員が、巧妙に候補者の中にスパイを潜り込ませていることは、誰も知らないはずだった。
普通は、そのようなことは不可能だからだ。
もちろん、発信機のようなものは身に付けてはいない。
そのような、幼稚な手段は、第1王女には到底通用しないと、パブロ議員は確信していた。
それでも、この様子は外部に伝えられていた。
そこに、ミュータントが介在していたことは、間違いが無い。
スパイには、特殊な感応力が付与されていた。
議員としては、そうした手段は取りたくはなかった。
かえって、弱みを握られる可能性さえ、あるからだ。
しかし、今回はそのプロジェクトのスケールが違う。
今後の地球の未来の為にも、このくらいの妥協はやむ負えなかったのだ。
とはいえ、果たしてこの方法だけで、完璧なモノかどうかも、議員は実際、疑問視していた。
相手は、ただ者ではない。
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候補者たちは、無言のまま、謎の島の地下に到着した。
それから、決められた列になって、いささか不思議な、『エレベーター』のようなものに乗せられたのだ。
重力は全く感じられなかった。
上下に移動したのか、前後に移動したのかもわからない。
実際は、そのどちらでも、なかったのだが。
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「む。空間移動したわ。」
彼女が言った。
「追えるか?」
男が尋ねた。
「ええ、このくらいなら大丈夫よ。甘く見ないでね。」
「甘く何か、見てないさ。君以外には誰にもできないんだから。映像は出せるか?」
「安定するまで待って、気がそがれるから。」
「ああ、わかった。」
彼女の意識には、秘密の島の様子がはっきりと、見えていたのだ。
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候補者たちは、第1王女と第2王女が待つ、巨大な部屋の中に導き入れられた。
最高の美男子、強力な肉体美を誇る猛者、両方を兼ね備えるもの。
その在り方は、まさに天にきらめく星のごとくであり、10人10色ではあるが、みな、きわめて魅力的な男ばかりである。
王女、ふたりの目が、突然、爛々と輝いたのだ。
「では、古式にのっとり、『選ばれしもの』を、お決め下され。」
大奉贄典が、うやうやしく、深々と頭を垂れて、そう語った。
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