表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/230

わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第九十三回


 ************   ************



 集められた20名の若者たちの中から、大奉贄典は最終候補者をさらに10名に絞り込んだ。


 これは、大奉贄典の重要な職務であり、今回は特別に弟子にも同席させた。


 弟子にとっては、たった1回しか許されない、極意を伝達されるための重要な儀式でもある。


 この機会に、全てを学び取らなければならない。


 候補者たちは、ただ、北島の地下深くにある秘密の部屋の中に招き入れられるだけで、自分が何をされているのかは、まったく分からない。


 着衣は一切、身に着けてはいない。

 


 大奉贄典とその弟子は、口承でのみ伝えられている『選考基準』に基づいて、最終候補者を絞り込んでゆくのだ。


 それは、もともとは、『女王ヘレナ』によって要求された基準である。


 初代から、現代まで、それは厳密に守られ、伝えられてきたのである。


 ただしヘレナは、抜き打ちで試験をすることとがある。


 大奉贄典がその在位中に、普通は2回だけ行われる。


 3回実施された例は、過去1人だけある。


 現在の大奉贄典は、もう300年も前に、1回だけ試験されたことがあった。


 それだけだった。


 女王の、彼に対する信頼は、非常に厚かったのである。


 

  *****   *****



 『最終候補者たち』は、全身のみそぎを済ませ、服は着ないまま、普段は完全に閉鎖されている海底の極秘の地下通路を、15人乗りのシャトルで通りぬけて、儀式が行われる島に入る。


 地上には決して現れない儀式担当者がふたり、同乗しているが、頭から足の裏まで、全身白のスーツで覆われていて、その正体はまったく分からない。


 人間であると言う確証もない。


 言葉は全く発しない。



 この島は、上から見たところでは、ただ、ジャングルばかりの島である。


 道路もなく、飛行場も、ヘリポートも、橋も、建物も、まったく見当たらない。



 かの議員が、巧妙に候補者の中にスパイを潜り込ませていることは、誰も知らないはずだった。


 普通は、そのようなことは不可能だからだ。


 もちろん、発信機のようなものは身に付けてはいない。


 そのような、幼稚な手段は、第1王女には到底通用しないと、パブロ議員は確信していた。


 それでも、この様子は外部に伝えられていた。


 そこに、ミュータントが介在していたことは、間違いが無い。


 スパイには、特殊な感応力が付与されていた。



 議員としては、そうした手段は取りたくはなかった。


 かえって、弱みを握られる可能性さえ、あるからだ。



 しかし、今回はそのプロジェクトのスケールが違う。


 今後の地球の未来の為にも、このくらいの妥協はやむ負えなかったのだ。


 とはいえ、果たしてこの方法だけで、完璧なモノかどうかも、議員は実際、疑問視していた。



 相手は、ただ者ではない。



  *******   *******



 候補者たちは、無言のまま、謎の島の地下に到着した。


 それから、決められた列になって、いささか不思議な、『エレベーター』のようなものに乗せられたのだ。


 重力は全く感じられなかった。


 上下に移動したのか、前後に移動したのかもわからない。


 実際は、そのどちらでも、なかったのだが。



  ********   ********



「む。空間移動したわ。」


 彼女が言った。


「追えるか?」


 男が尋ねた。


「ええ、このくらいなら大丈夫よ。甘く見ないでね。」


「甘く何か、見てないさ。君以外には誰にもできないんだから。映像は出せるか?」


「安定するまで待って、気がそがれるから。」


「ああ、わかった。」


 彼女の意識には、秘密の島の様子がはっきりと、見えていたのだ。



  ************   ************



 候補者たちは、第1王女と第2王女が待つ、巨大な部屋の中に導き入れられた。


 最高の美男子、強力な肉体美を誇る猛者、両方を兼ね備えるもの。


 その在り方は、まさに天にきらめく星のごとくであり、10人10色ではあるが、みな、きわめて魅力的な男ばかりである。



 王女、ふたりの目が、突然、爛々と輝いたのだ。



「では、古式にのっとり、『選ばれしもの』を、お決め下され。」



 大奉贄典が、うやうやしく、深々と頭を垂れて、そう語った。




  ************   ************



 



































 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ