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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第八十四回


 *************   ************


 洋子は座り直して正座した。


「じゃあ、申し上げましょう。」


 ふたりはまだ、立ったままだった。


「まあ、まずは腰かけなさい。」


「ああ・・・どうも。」


 明子はそう言い、兄にも座るように促してから、高級な竹製の座椅子にさっさと座った。


「ふうん。まあ、私が思いますには、おそらくこれは女王様のご意志でしょうね。」


 姉は、ややしんみりと、そう切り出した。


「はあ? お姉さま、それ本気で言ってますか?」


 明子は少し呆れたように言った。


「もちろん。」


「あたくしは、『女王様』の実在を信じないのをご存知ですよね。」


「はい。あなたは昔からそうだった。女王は『潜在的意識の集合体』とか。」


「まあ、そうです、つまり『妄想』ですわ。それを利用して、どなたかが操っている。地球人をね。」


「誰も意識せずに、脳内に刷り込まれた『女王』に対する忠誠心に従ってきていた・・・と。」


「そうですよ。操っているのは、おそらくいわゆる『第1王女様』か『第1の巫女様』、あるいは『教母様』、あるいは、『他の誰か』、たとえば、お姉さまとか。いずれにせよ、タルレジャ教の指導者の誰かだった。ずっとね。まあ今の国王様ではないだろう、とは確信しています。でも、陰に隠れていたことがあったかもしれないけれども。まったく一般人に紛れていたかも。今回、その意識が顕在化された。」


「そいつが、地球人を操っている。」


「そうそう。」


「まあ、あなたの持論です。」


「そうそう。」


「それこそが、妄想だろう。」


 昭夫が口を挟んだ。


 明子が睨みつけている。


 どちらもあまり、人前では、普段こうした様子は見せないのだが。


「まあまあ、意見を持つのは良い事です。しかも、今の状況においても、そうした持論を展開できること自体が、なかなか大したことです。」


「ほう・・・意図的に許されている。とか。そう、おっしゃいますか?」


「そうです。きっとね。」


「あなたが許しているのですか、お姉さま。それとも、やはり、・・・弘子かな。」


 洋子は静かにほほ笑んだが、それには直接は答えなかった。


「ご質問に、お答えします。ここは、お父様をお助けしましょう。」


「なぜ?」


「私が思うに、もし皇帝陛下の今の行動に追随したら、まあ、それまでです。非難する人は誰もいないでしょう。でも、それまでです。そうではなく、我が社の明確で新鮮な意図を、はっきりと示すべきです。皇帝陛下、国王陛下、わが首相様、どちらも両立させるようにしなければ。きっと、多くの方は、まず批判するでしょうけれど、最終的には、それが正しいと認識されるでしょう。」


「独自性を示せ、と。」


「まあ、そうですね。あえてもっと言えば、わが社が動かすのです、世界をね。」


「まあ・・・お姉さまは、やはりけっこう、危ない方ですね。潰されますよ。妹に。」


「いや、姉上だから言えるのさ。下手したら、『背徳者』入りだ。」


 昭夫が、わざとらしく突っ込んだ。


「まあ、そうですわね。昭夫さんの、おっしゃる通りだわね。でも、私は、経営者として申し上げているのであって、それは『意識の自由な領域』なのです。」


「おもしろい。お姉さま。それって、つまり、個人の考えるやり方によっては、統制された思考も、かなり制御可能ってことかな? それとも、お姉さまは自由かな。」


「おいおい。」


「まあ、そうらしいですわね。でも、私は、不感応者ではございません。」


 洋子は昭夫を制しながら答えた。


「じゃあ、それは、もしかしたら、『経験』、からくるのかしら?」


 明子はちょっと試しに聞いてみたのだ。


「ほほほ。明子さんらしい。ほほほ。でも、ちゃんと回答しましたでしょう?」


「確かに。わかりました。では、その方向で考えましょう。」


「おいおい、ぼくは?」


「まあ、お兄様、なにか、ご異議があります?」


「・・・・・いや。ないよ。」


「じゃあ、結構ですね。」


 明子は、もう立ち上がった。


 しかし、こう付け加えたのだ。


「お姉さま、少しは表を見に行かいないと、お体に良くないですよ。」


「うん。わかってる。」


「そう・・・、じゃ、また。」


 明子は立ち去り、昭夫はそれを、見送った。


「どうしたの、昭夫さん。」


「いや・・・ねぇ、姉さん。弘子は、やはり本当に『女王』なのか?」


 洋子は、声には出さなかったが、小さくうなずいて見せた。


「そうか・・・。」


 昭夫は、つぶやいて、明子の後をそそくさと追った。


 尋ねている昭夫と、妹を追いかけた昭夫には、いくらか表情の齟齬があった。




 ************   ************



 吉田さんは、余計な事は言わない人だ。


 弘志は、もうそれ以上は何も尋ねられず、話もせず、巨大な自宅に帰り着いた。


 正門からは入らないで、裏口から地下の『専用駐車場』に入った。


 まあ、言ってみれば、お忍び用の専用駐車場である。


 コンピューターの管理が厳重になされてるが、人間はタッチしない。



  **  **



 弘志は、建物の中に上がって、そのまま双子の妹の部屋に行った。


「かえったよ。」


「ご苦労様です。」


 雪子は弘志にだけ聞こえる『声』で答えた。


 これは、弘子にでさえ、どうやら聞こえないらしい。


「失敗だよね。捕まりそうになっちゃったよ。」


「いいえ、それで良かったのです。お兄様は、正しく行動しました。」


「何の役に立ったの?」


「宇宙警部に、繋がりが出来ました。これが大きいのです。彼はきっと地球人の側に立つことでしょう。『紅バラ組』の秘密基地を発見しました。彼女たちにとっては、意表を突かれたのです。自分たちの守りは完全ではないと認識しました。『恐れ』が生じます。組長に報告が行くことでしょう。楽しみです。」


「楽しみ? 分からないなあ。」


「彼女たちの心は、操られています。『恐れ』は、その心に隙を生みます。」


「そうかなあ。」


「はい、そうです。」


「学校で、くっこに会うよ。明日には、きっと。」


「そうですね。きっと、お兄さまを殺そうとするでしょう。」


「おいおい、それは、いやだよ。いくらなんでも。」


「大丈夫です。手を打ちますから。」


「手を打つ?」


「そうです。任せてください。」


「ふうん。信頼はしてるけどね・・・」


「ユキコは何者だろう・・・と?」


「うん。」


「・・・ぼくを女の子に変えたのは、君かい?」


「いいえ、あれは、お兄様ご自身が、なさったのです。」


「はい?」


「弘子姉さまが、かつて、あなたの中に、その能力を植え込んでいたのです。それは、かつて金星の指導者だった、ビューナス様が持っていた能力なのです。あなたが、受け継いでいます。」


「あのね、それって、いつの話し?」


「まあ、2億5千万年より、もっと前の事です。」


「ぼくは、まだ高校生だよ。20年も生きてないんだから。」


「体は、そうです。」


「は?・・・・・」


「あ兄さまは、ビューナス様の生まれ代わりですから。」


「はあ?」




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