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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第八十三回


 ************   ************


 パブロ議員は、様々な形式で、かなり多くのスパイを北島に潜り込ませては、あまり長くならないうちに引き上げさせていたりもしていた。


 本人の身の安全を図るという事もあり、また、バレるのを防ぐつもりでもあった。


 そんな中で、アニアラは生粋の北島人であり、最高のエリートでもある。


 今回、『婚約の儀』に特別な役割を持つ『奉納人』に選ばれることが、現状彼の最大のミッションである。


 けれども、大きな問題があった。


 現場から、直に情報を送り出すことが可能なのか?


 また、どうやって、脱出するのか?


 実際のところを言えば、生還はあまり望めなかった。


 本人も、その覚悟だった。


 もちろん、一切極秘の作戦であり、パブロ氏は、なにがあっても関連は認めないだろう。



 ************   ************



 『奉納人』というのは、実のところ通常でもあったことがらだ。


 しかし、これは一般にはまったく公表されていない秘密の儀式で使われる。


 この儀式の存在を知っているのは、儀式そのものを司る『第1の巫女』さまと、あの『大奉贄典』と、その弟子、だけである。


 ただし、もう一人、それを知る存在はある。


 今は、マツムラ家のお抱え料理長さんになっている人物、である。


 彼は、永く『地獄』の番人だった。


 やがて、先代の『大奉贄典』として王女さまなど(王子もいたが)、に仕えた。


 本来ならば、『永遠の都』に入るはずだったが、彼には現世に大きな未練というか、憧れが残った。


 そこで、この世に留まったのだった。


 通常なら許されない事だったのだけれど、『地獄』を経験した『時間』を、女王は考慮したらしかった。



 この、『奉納人』というものの存在を具体的に知った、初めての一般人が、パブロ議員なのだ。


 彼は、毎月『奉納人』が、ひとりずつ、『第1王女様』に、捧げられているらしい、こと。


 捧げられた『奉納人』は、二度と村には帰ってこないらしい、こと。


 地元の認識では、彼らは務めを果たしたのち『真の都』という、未知の場所に赴くと信じられているらしい、こと。


 というような事柄であった。



 ************   ************



 『真の都』で、中村教授たちは、タールベルク氏のリサイタルを聞いた。


 そうして、ゆったりと隠遁していた、ショパンさんの自宅を訪ね、演奏論について講義を受けた。


 中村教授は、心に悟るものがあったのだ。


 ただし、和尚様はあまり楽しくないので、散歩をしていたらしいが。


 帰る段になって、消えていたレコード店のご主人が、再び現れた。


「楽しかったですかな?」


「まあ、ね。」


 教授は、あまりはっきりとは、答えが出来なかったのである。


「ほう。じゃあ帰りますか。」


「おや、貴方は帰るの?」


 和尚さまが尋ねた。


「そりゃあもう。ぼくは、あそこの幽霊ですから。まだ、楽しみたいものね。時に供養に来てくださいよ。」


「はあ・・・・そりゃあ、考えときます。はい。」


 和尚さんは、快諾はしなかったのであった。



 ************   ************



 アンジの父は、それはもう、生きた心地では、なかった。


 娘は、いわゆる障害もあり、なにかと反発する子だったが、子供にたいする親心というものは、巨大なものだ。


 ただ、その反応の仕方が、いささか問題ではあった。


 彼は、『不感応者』や『背徳者』が、娘の失踪に絡んでいると考えていた。(正解であったが。)


 そこで、自分の力をフル活動して、そうした人々の『刈り出し』を懸命に進めていた。


 さらに、長年の盟友である松村家にも、相当の援助を求めたのは、これもまた当然の事だったのだ。



 ************   ************



 あんじは、たまたま、弘志の姿を見かけた。


 そこで、あのビルの内部まで追跡していたのだ。


 彼女にとっては、こうした追跡は、もはや簡単なことがらだったし。


 そうして、『紅バラ組』の大きなアジトを発見した。


 けれども、彼女は賢明にも、単独行動には出なかった。


 あの弘志が隠した『銃』は、彼女がすぐに回収して、持ち帰ってしまっていた。



 ************   ************


 明子と昭夫は、洋子の部屋を訪れていた。


 実のところ、この二人も、洋子という存在が、姉以上のいったい何なのか、そこのところは知らない事柄だった。


 松村家のトップの二人でも、この部屋に入る方法は皆と同じだ。


 例外は、弘子一人だったのだから。


「ご相談です。」


 明子はコンピューターに告げた。


 さすがに、この抽象的な要望は、あっさりと受け入れられた。


「いらっしゃい。どうしましたか、そんな深刻なお顔をして、お二人とも。」


 洋子は、薄くて頑丈な、特殊な遮蔽の向こう側にいつものように座っている。


 洋子の周囲に防御なしで来た人々は、だれしも狂気に陥るが、洋子自身はきわめて冷静で、何者にも動じない。


「お姉さま、この世の現状は、よく、ご存知でしょう?」


 明子が、いんぎんに言った。


「まあ、そのつもりですよ。」


「では・・・いま王国の国王様が・・・つまり、お父様が拘束されております。それも第3王女様によって・・・つまり、ヘネシー、友子さまによって。」


「はい。そうですね。」


「あまり、ビジネス上も、良い環境ではないのです。何かの形でこうした状況は解消しなければなりません。」


「お父様は、会社の運営上、なんの権限もありませんよ。気にしなくても、よいのでは?」


「皇帝陛下のお気に召すままでよいと?」


「問題がありますか?」


「杖出首相が、お父様の拘束に異議を唱えたのです。ご存じでしょうか?」


「もちろん。メッセージもちゃんと読みましたよ。」


「それで、当家に、善処してほしいと要望して来られています。」


「開放させてほしいと?」


「まあ、そうでしょう。会社としては、当然皇帝陛下に逆らう意図などはございませんが、さすがに首相のご意向をむげにも出来ません。」


「なるほど。で、わたくしに、どうせよと?」


「お姉さまは、会社の最高経営幹部です。判断を、お聞かせ下さい。」


「まあ、父上を見捨てるかどうかを?」


「まあ、そうですわね。」





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