わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第七十七章
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「では、もうあまり時間がなさそうです。弘志さま、帰りましょう。ヘレナ様と出くわすとまずいわ。と、あの警部さんお願いなのですが。」
「はいはい。なんですか?」
「道子に・・・タルレジャ王国第2王女様に、会いに行ってくださいません?」
「ほう。」
「それで、シモンズ様と一緒に行ってほしいのです。で、今の状況を話してやってください。」
「ほう! それはまた魅惑的な。」
「あの子を、味方に置きたい。ぜひにです。」
「ぼくは、やるよ。」
シモンズが乗り気で言った。
「いいでしょう。じゃあ、連れて行って差し上げます。」
警部が即答した。
「あああ、また王国に逆戻りかあ。」
シモンズがついでに、いささか愚痴った。
「わたくしは、監禁場所に帰ります。シモンズさん一旦付き合ってください。警部さんはついて来ることが出来ますか?」
「まあ、大概大丈夫でしょう。念のため、これ専用通信機です。はい。」
「ども。ふうん。開けて見たいな。」
「あとでどうぞ。」
警部は、またまた気楽に答えた。
「ほおお・・・・さすが地球の警察とは懐が違いますね。」
「懐の深さ・・・ですわ。」
「ああ・・・まあ、それね。」
「弘志は勝手に帰りなさいね。」
「ああ、もちろん。でも、すぐヘレナ様には見破られるよ。」
弘子は、少し意味深な感じで言った。
「そうかしらね・・・・まあ、やってみましょう。」
「あたしは、なにしたら、いい?」
女将さんが言った。
「きっと、警部さんとビュリアさんは、ここで会う事になるでしょう。その時、よろしくお願いいたしますわ。」
「え? ビュアリアが生き返ると?」
「そうだと思います。」
「まああ・・・・・・・」
結局のところ、弘子は肝心な秘密は、あまり語らずに済ませてしまった。
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「さあ、なにがどうなってるんだか、話してほしいな。」
教授は、教え子を見ながら強気で言った。
この子の気性から言うと、強気で迫った方が上手くゆくことが多いと、教授は経験上知っていたからである。
「はい、先生。でも、どこから聞きたいですか?」
「どこから? そりゃあ、最初から。」
「まあ、大変。何千億年もかかりますわ。」
「あのね、かいつまんで、話してほしい。」
「ふうん・・・・・かいつまんでですか。じゃあ、抱いてくださいな。」
弘子は、ワンピースを、脱ぎ始めた。
住職が、即座に固まってしまった。
「こらこら、ば、バカ言うな。やめんさい! 大人をからかうんじゃない。」
「まあ、わたくし、もうすぐ婚約の儀を行いますのよ。それは、結婚と同義です。まあ、単に、試用期間みたいなものですもの。その内容は、まったく同じですわ。」
「なおさらよくない! まったく君はときどき、信じがたい事をする。」
「ふうん・・・でも、それが一番早いのに、ですのに。わたくしと一体化すれば、すべてが良く分かる様になりますわ。なんでもわたくしの言う事を、素直に聞くようになるしね。」
「なおさらよくないだろう! まったく、ぼくを何だと思ってるんだ。ほら、普通にかいつまんで、話しなさい。」
「はあい。先生じゃ、しょうがないですわ。わかりました。」
「あの、拙僧もおりますぞ。」
「ああ、そうですわね。和尚様。いいでしょう。ごいっしょにどうぞ。」
ヘレナは、身の上話を、かなり大幅にかいつまんで、始めたのである。
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シブヤの高級喫茶を出たあと、弘志はまたひとりで駅前に向かった。
大きなホールを通り過ぎ、もう表通りに出ようか、という場所の、あまり人目にはつきにくい小さな公園で、彼は少女たちが円になって、不気味に話し合っているのに出くわした。
「むむう。なんか、やばいかな。あらら、あれは、もしかして有名な『紅バラ組』じゃないかな。裸足だし。姉さんたちと同じだが。しかし、あらららららら、あれはなあんと、『あんじ』先輩じゃないかなあ。化粧が派手で解りにくいが、ぼくの目はごまかせないぞ。あとのふたりは、まったく知らないけど。ううん。・・多分そうだよ。」
そこには、くっこはいなかった。
それは、けんかをしてる様子じゃない。
笑ったり、缶ジュース(麦酒じゃないみたいだ)を飲んで、通りに放り投げたりしている。
みな、だいたい、やや古風だが、いかにも、飛んでる子たちの格好をしている。
あんじも、なぜか、そんな服装をしていたが、・・・弘志は、姉と一緒にいるあんじを何度も見ているが、こんな派手な恰好してるのは、初めて見る。
話の内容はわからないが・・・・
やがて彼女たちは、向こう側に歩いて行ってしまいそうになった。
ちょっと迷った弘志だったが、ここは追跡するべし、と判断したのである。
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杖出首相は、コメントを発表した。
『我が国は、間もなく開催される『地球帝国創立記念式典』には、当然参加する考えであります。また、式典には、わたくし自ら、出席の予定であります。我が国は、世界は、『地球帝国皇帝陛下』の御指導の下で、平和と繁栄を達成すべきであることは、他の諸国と共通の認識に立つものであります。しかしながら、皇帝陛下の母国において、国王陛下がいまだ軟禁状態にあることは、非常に懸念されるのであります。なぜならば、国王陛下は、世界の平和と繁栄に強い熱意と溢れる情熱を持って、これまで尽くして来られた方であるからであります。確かに、核兵器の即時廃棄に関して、いささかの意見の相違はあったかもしれませんが、それは、あくまで議論の過程における意見のひとつであります。『地球帝国皇帝陛下』は、各国国民が自由に意見を表明することを、御認めになると言うお立場を、すでに明らかになさっております。ゆえに、目出度い記念式典の日においても、国王陛下の身の自由が確保されていないとすれば、それは皇帝陛下のご意志に背くことにもなりまねません。ここは、配慮が必要と考えるのであります。なお・・・・・』
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「ふうん・・・・日本自体が核兵器の即時廃棄を認めるつもりが、あるのかないのかは、煙の中ね。」
明子がつぶやいた。
「我が皇帝陛下のご意志に逆らう格好になっている。好ましくないな。」
松村家長男の昭夫が、いかにも気に入らないという様子で答えた。
「ビジネス上も、あまりごたごた、させたくはないわね。」
「まあ、そうなんだよね。ときに、我が王女様はいかがなさっているんだ?」
「さあねえ。道子さまは、王国で政務に励んでおられる様子ですけど、弘子様は何してらっしゃるんだかねえ。でも、文句も言えないでしょう?」
「心配なんだよ。あれで、妹だからね。うっかり背徳者とか言われたら大変だから。まして、もうすぐ『婚約の儀』なんだから。
「まさかあ。第一王女様をつかまえて、それはないわ。」
「いやあ。国王が、つまり、父上が拘束されてんだぞ。これまた妹に。」
「まあ、そこは、いまだによくわからないのよねぇ。なんでだか。」
「父上と総理は、学生時代に友人だった。」
「まあ、そうらしいわねえ。噂では知ってる。」
「ならば、国王が背徳者である可能性も・・・・」
「兄さん、言っていい事と、そうじゃない事があるわ。」
「言い切れる?」
「いやあ・・・・・・でも、まあ、ね。」
「ふうん。君の言うように、会社に悪影響がないか、それが心配なんだ。」
「洋子お姉さまのご意見を聞く?」
「うん。そうしたいんだが。」
「いいわ、悪い考えじゃあない。」
ふたりは、洋子との即時面談希望を、専用コンピューターに打ち込んだ。
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「こんばんは!」
「あららら、第一王女様、珍しいなあ。」
「まあね。幸子さんがご迷惑してないかしら。」
「いやあ。いつも励ましてもらってますよ。」
「そう、ならいいけど。」
「なんか、君、酔ってない?」
「うん・・・・・・そうかな・・・・・はははは。」
「あのね。まだ高校生なんだから。」
「あら、王国では適法だもの。」
「まあ、そうでしょうけど。なにかあったのかな?」
「まあね。ちょっとここで気分転換。レコード聞かせて。」
「そりゃあまあ、いいですけどお・・・。」
「いいですけど~~~~~、ふうん・・・・おどりゃあ、なめっとるんかあ!」
「あこらこら、からまないでくださいよお。ぼくも、体中湿疹で気分悪いんだからあ。」
「まあ、お可哀そうに。一緒に飲みましょう。ほら。ババヌッキ酒持ってきたから。」
「ごっくん。禁酒ですが・・・・。」
「ふんふん・・・・・ほら。」
「まあ、一杯だけ。」
「ふんふん・・・・・・・」
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「あらああああああ。女王様あああああ~~~! ハイーパーお饅頭嵐い~~~!!」
幸子さんも、乱入してきました。
お饅頭が吹き荒れます。
「おあ~~。ここでやるなあ~!!」
以下、公開にそぐわないので、文書消去いたします。
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