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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第七十六章 


 ************   ************


「ふうん・・・・なるほど。で、ぼくにあなた方の味方をしてほしいと、言うのですなあ。」


 警部2050は、低く言った。


 弘子が、じっと見つめて来ていた。


 しかし、もしこの子たちの味方をしたら、それは何を意味するのか?


 警部2050は、職務上の習いに準じて回答した。


「解りました。しかし、まずは調査させてください。その結果で判断してゆきましょう。」


 三人は顔を見合わせたが、今のところ、それで同意するしかないと思い合わせた。


「わかりました。ただ、わたくしは、まもなくヘレナ様と一体化します。その後はシモンズ様か、弘志にお話しください。危険ですから。」


「なるほど、でも、ぼくは、まずビュリアさんに会いたいのですが。」


 警部が、あっさりと言った。


「ああ、なるほどね。それならば、ヘレナ様に会うしかないですわ。まあ、もちろんお願いしているわたくしたちに、あなたを指図する権限はございませんわ。ただ、ヘレナ様は、誰でも支配してしまう方だから。」


「ああ、そこは、ご心配なく。ぼくは、不感症だからね。」


「あの、ビュリアさんのことなら、よろしければ、わたくしもお手伝いいたしますよ。なにしろ、ビュリアは私の娘ですから。」

 

 女将さんが、やや自慢そうに言った。


「おおお。そうでした、そうでした!それはいい。」


 警部2050が、突然思い出したように同意したのである。


『まあ、このひと、いや、ひとじゃないかも・・・大丈夫なのかしら・・・』


 弘子は、内心そう思ったが、もちろん、言いはしなかった。


 ただ、シモンズも弘志も、どうやら、同感だったらしいけれども。



 **********   **********




 正晴と武は、それぞれ王国入りの準備をほぼ完了してしまっていた。


 双方の親は、さかんに本人たちがなすべきことがらについて、しきりにお説教したがっていた。


 心配でしかたがなかったのである。



 まして、相手が、昔から決められていたとはいえ、王女様である。



 それが、いったい何を意味するのか。


 この子たちは、けっして、まだよく認識できてはいない、と、どちらの親も考えていた。


 正晴の母は、非常に話しにくい事柄を、言おうとした。


「いいですか。王女様は、大変早熟なお方です。つまり、非常に濃密な、というか、まあ、正常なと言うか、立派な夫婦関係をのぞんでおられるのです。そこを、つまり・・・」


「あのね、いいよ。言いたいことはわかるから。まあ、なるようになるから、大丈夫だから。」


「はあ・・・・それだから、心配で。。。」


 実は、正晴の母も、また武の両両親も、当然、知ってはいたのだ。


 そんな心配は、要らないと言う事を。


 実際は、正晴が言うように、なるよになるのである。


 すべては、王女様がリードして、きっぱりとやってしまうだろう。



 本当のところを言えば、親が心配しているのは、このふたりの行く末のことだった。



 実のところは、最近は、実例がなく、どうなるか誰にも分からない。


 ただ、昔から言われていることは、『王女様の夫は、みな早死にする』ということである。


 後継ぎが出来たら、数年以内に、みな亡くなってしまっていることは、歴史的資料が明確に物語っていた。


 しかも、その死因は、あまり明確ではない。


 と、言うよりも、まったく、公表されていない、のである。


 直近は、アヤ姫様の代までさかのぼる。


 アヤ姫様自体が、わずか23歳で、アヤ岬から飛び降り、入水しているが、これも伝説と事実が入り乱れていた。


 この悲しいできごとは、歴史的な悲劇として世界的に有名で、また大きな観光資源にもなっている。


 ただ、王国や、タルレジャ教会自体は、これを今でも、ある種の『殉教』のように捉えている。


 両親も、そう教えられ、そう、考えてきていた。


 ただ、アヤ姫様の夫は、その事件の前の年に、亡くなってしまっている。


 その真相は、いまだに深い霧の中である。


 タルレジャ教会庁は、・・・たぶん、教母様と、第1の巫女様は、事実をご存じなのであろうと言われているが、まったくそうした話は出ない。


 弘子さんや道子さんは、この国では、正晴や武の友人であり、クラスメートでもあったりした。


 だから、お互いの家への行き来は頻繁にしていた。


 だが、事前の了解事項として、王国や教会での、地位に関する話は、基本的には、お互いの家庭内ではしない、と言うことに、なっていたのだ。


 しかしながら、まあ、実際のところは、そこらあたりは、ある程度長年の習慣みたいなところでやってきた側面も大きい。


 多少は、そう言う話も、どうしたって出るのだ。


 それでも、この件は、大きなタブーのひとつである。


 とにかく、親は親であり、この子たちが、すぐに早死にすることに対する強い懸念は、当然に持っていたわけだ。


 しかし、だからといって、どうしようもないのが実情なのだ。


「とにかく、王女様のご意向に逆らわないで。いいわね?」


 正晴の母は、毎晩のように、念押ししたのである。


 武も、似たようなものであった。




 ************   ************




 『地球そのもの』は、地下からタワーに入り込もうとしたが、それも、やはりうまくゆかないのだ。


「おかしい。あり得ない。」


 地中を巡りながら、『地球そのもの』は考え込んでいた。


「いささか、甘く見たか。まあ、しかし、人類に完璧などはあり得ない。絶対にすきはある。」


 『地球そのもの』は、優秀だが、少し自惚れが強く、ナルシストでもあった。


 自分の求める行動が阻止されるなど、実際、今までは無かったし、これからもあってはならないことだ。


 なぜなら、彼こそが地球で最高の存在だから。


 『火星の女王』などというものや、ましてや、『地球皇帝』なんて認めるわけにはゆかなかったのだ。


 ついに、『地球そのもの』は、小さな空間を発見した。


 巧妙に基礎部分に隠し込んではいるが、何らかの配管ミスか、手抜きか、不注意か、見落としか、やりかけか、まあ、そうしたものだろう。


 人間がすることは、どんなにがんばっても、やはりこの程度だ。


 『地球そのもの』は、いささか喜んだ。


 「まあ、しょせんは、人類のすることだ。」


 しかし、それは、巧妙にできた、というか、かなり幼稚な、罠だったのだ。



 ************   ************



「捕まえましたよ。」


 カイヤが、すぐにヘネシーに報告してきたのである。


「ふん。あっさりとじゃのう。すぐに見に行きたい。」


「お待ちください、陛下。とはいえ、やはり危険です。まずは、こちらで調べますから、少しお待ちを。」


 カイヤが忠告してきた。


 ヘレナだったら、こうした忠告は、まず受け入れるだろう。


 しかし、ヘネシーは、その優雅な見た目に関わらず、気性がかなり強く、また正義感も強いが、とにかく、まっすぐに進もうとする。


 まあ、年齢も若いので、無理もない。


「いや、のんびりしては、おられぬのじゃ。」


「はい、陛下。ならば、直接ではなく、映像での対応にしてください。」


 カイヤは喰い下がった。


「ふうん。まあ、では、そうしよう。準備いたせ。」


「はい。いま少し、お待ちください。」


「5分か?」


「ああ・・・・いえ、10分お願いします。」


「わかった。10分じゃ。」




    *************   ************








  








 






































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