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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第七十五章 


 ************   ************

 ************   ************



 キッチンは、地球に向かうべきだろうと、判断するしかなかった。


 もう、ジャンプは出来ない。


 膨大で、特殊なエネルギーが必要なジャンプは、一度限りである。


 今となっては、生き続けるか、そうではないかを判断する以外にはない。


 彼は、失敗だったと思いながらも、自分の作った装置に関しては、いささかの自負もやはり捨てがたかったのである。


 きちんと確かめてから、さらに考えたって、遅くはならないだろう。


 きっと。そうだ。


 そこで、彼は宇宙船を地球の方向に向けた。


 太陽系内を移動する程度ならば、なにも問題はないだろうから。



 そんなキッチンを、猛スピードで空間を縫いながらここまで移動してきた警部2050が、誰よりも先に発見したのだった。


 ただし、アニー以外では、だけれども。


 もう地球は目と鼻の先であり、警部としては、やはり火星を見ておきたかったのだ。




  **********   **********

 


 マオ・ドクは永遠の命なんて、ばかばかしくて御免だぜと、思ってはいたものの、しかし、やはりお嬢の事は心配で仕方なかった。


 一方、デラベラリ先生のことを考えれば、これもまた、アマンジャとのことを、なんとかして、何とかしてやりたいとも思った。


 しかし、これは、意外と難問となってしまったのである。


 彼は、あれほどビュリアに懇願したのにもかかわらず、結局のところ、まだ何も実現していない。


 もちろん、ビュリアがお嬢であることは、マオ・ドクだってお見通しであったが、だからといって、ハイどうぞとは言ってもらえなかった。


 もっとも、拒否されたわけではなくて、結論から言えば、受諾されていたのである。


 しかし、まだまだ先の事だと、ビュリアは言うのだった。


「あなた方には、まだたくさん仕事が来るでしょう。急ぐものではありませんわ。」


 結局、うまい事言われて、『不死化』されてしまったのである。



 ただ、ビュリア=ヘレナからしてみれば、いくらかの『不死化』した人間を、秘かにだが、地球最後の日まで連れてゆくことには、大きな意義があると思われた。


 彼女は、全員ではないが、幾人かは太陽系の滅亡後も、次の世界にいっしょに連れてゆくつもりでいたのである。


 太陽系に来た時も、そうだったのだから。


 つまり、『金星のママ』は、その代表者だったわけである。


 いまは、『教母様』だけれども。


 しかし、ずっと連れて来ていたのは、彼女だけではないのである。





 ************   *************



 くっこは、きちんと学校には来ていた。


 まあ、もっとも、突然勉強が出来なくなるとか、逆に出来るようになったとか、そういう変化は見られない。

 

 授業中の小テストでも、特段変わった変化はない。


 ただ、やたら態度がでかくなり、おおへいになったということである。


 かといって、授業の邪魔をすることはなかったけれども、しょっちゅう、あっさりと、いなくなる。


 大概は、携帯に電話が入ったとか、メールが入ったとかのようだった。


 こうした逸脱行為は、当然御法度である。


 先生方が、黙っているはずがない。


 黙っているはずがないのだが、なぜか、くっこは、懲罰の対象にはならなかったのである。


 「不公平だろう!」


 と、一部の生徒は苦情の声を上げた。


 当たり前である。


 しかし、それでどうなるという事は、結局のところ、何も起こらなかったのである。


 数日で、くっこは、クラス替えされた。


 そうした生徒だけを集めた、別クラスが編成されたわけだ。


 つまり、【紅バラ組】の組員は、いまや、この学校だけでも急増してきていたのだ。


 当然、くっこが仕組んでいたわけだけれど。


 ミアは、くっこから、子分のように扱われていたが、弘子のとりなしが、なぜか非常に効いているらしく、拉致されて洗脳されると言う事態は免れていた。


 おかげさまで、ミアは、特に望みもしない、紅バラ組のコメントを外部に伝える、非公式スポークスマンのような存在になってきてしまった。


 「せんこうたちに、伝えておくんじゃ!ええな!」


 くっこは、ミアに命令する。


 ミアは、それを先生方に伝える。


 先生方は、校長や、新任教頭や、理事長に連絡する。


 理事長は、複雑な地位にある。


 各、権力側とのパイプも太い。


 日本政府とも、王国政府とも、である。


 【紅バラ組】は、ヘレナの影の群団であり、スパイ組織でもあり、またミュータントの動向を探る、地球帝国の『地下組織』にもなっていた。また強力な、体制側テロ群団にもなりうる。


 公式には行えない、異端分子の排除を実行するのだ。




 一方で、あんじは、その闇の地下組織を暴こうとしていた。


 彼女は、秘かに東京に戻って来ていたのだ。


 きれいな、良いマンションである。


 マツムラ・コーポレーションの息は、ここには、かかっていない。




 その夕方、彼女は夜陰に乗じて、街に出て行った。


 きょうは、シブヤに行こうと思っていた。


 あそこになら、どうせ、紅バラ組が出てくるだろう。


 めぼしい͡女の子を見つけたら、どこかのアジトに連れ込んで洗脳して、仲間にする。


 あんじは、そこを押さえて、逆に占領する積りでいた。




 ************   ************



 弘子たちは、警部2050の到着を待った。


「時間はかからないですよ。すぐ行きます。」


 警部はそう言った。


 そうして、実際、彼はすぐに来たのである。


 彼の宇宙船は、キッチンを乗せて来ていた。


 キッチンの宇宙船でも、地球の現在の技術から言えば、遥かに先進的なものだが、警部の宇宙船は、まったく隔絶した能力を持つ。


 もちろん、2憶5千万年前のものと、同じものだけれども。


 はっきり言えば、アブラシオでさえも、女王様抜きで、真正面から闘ったら、ちょっと歯が立たないかもしれない。


 キッチンの船は、火星の周回軌道に置いてきたのだった。




 さっきまで、宇宙空間にいた警部2050は、いまやシブヤの高級喫茶の玄関に立っていた。


「やあ、おまたせいたしました。」


「まあ、いらっしゃいませ。警部様。」


「いやあいやあ、お久しぶりですなあ、女将さん!」


 ふたりは、抱擁を交わした。


「あの、警部さん、ゆっくり思い出話もしたいのですけれども、とりあえず、こちら様には時間がございません。ます、先に聞いてあげてくださいな。」


 弘子と、シモンズ、それに弘志が立ち上がった。


「こりゃあどうも。これはまた、何とも、お美しい姫様ですなあ。夢の中に出て来そうだ。」


 三人は、顔を見合わせた。


 警部は、当然、ビュリアの事を、思い浮かべていたのだけれども。


 弘子がビュリアに似ていることは、女将さんは、よく分かっていたわけである。





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