わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第七十二章
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『地球そのもの』は、タルレジャタワーの内部に侵入するのに、思っていたよりも手こずった。
「こんなはずではない。万能の自分に、このような障害があるはずがない。」
『地球そのもの』は困惑してしまった。
こんな姿は、誰にも見られたくはない。
どのような建物にも、通風孔がある。
でなければ、中の人間は生きてゆけないのだから。
しかし、この建物には、隙間というものが全くないのだ。
窓は完全に、密閉状態になっている。
どこにも入れるような空間がない。
あり得なかった。
そこで、『地球自身』は考え直したのである。
『人間どもが出入りできる場所がある。そこから、入ればよいのだ。ばかばかしい。自分はどうかしてい
た。』
そこで、『地球自身』は、もう一回地上付近まで降りて行き、正面玄関にたどり着いた。
そこまできて、彼は気が付いた。
『この建物には、玄関というものがない!』
そうだったのだ。
この建物には、いわゆる玄関がなかった。
『ふん、地下か。汚らわしいことよ。』
『地球自身』は、ばかばかしいと思いながらも、自分が長年住んでいた地下に潜りこんだ。
しかし、どう探しても、出入り口がないし、寸分の隙間もない。
『おかしい、では、この中にいる、愚かな人間たちは、どうやって入る? どうやって出るのだ?』
実際、『地球自身』が知るよしもないが、かの取調官長も、この建物の中に、易々と入って行った。
それが、入れないのだ。
完全な密閉体であり、どこにも出入りする余地がない。
『くそ。私をからかっているのか。』
『地球自身』は、豊かな感情を持っている。
それは、素晴らしい事だけれども、やっかいなものでもある。
一方『女王』には、それがない。
『女王』の決定的な強みでなのである。
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『なにかの、怪しい動きが感じられます。』
タワーの管理を任されている、集中コンピューターの『カイヤ』が、『第3王女』、すなわち『地球皇帝』ヘネシーに報告してきていた。
『カイヤ』は、アニーの兄妹である。
当然、アニーとは内密に繋がっているのだが、そこは『皇帝』の知らぬことだ。
もっとも、不意の情報漏れを嫌ったヘレナは、今のところは、アニーとカイヤの接触を禁じていた。
やがて、自分もこのタワーのひとつに引っ越して来たら、すべて解禁する積りでは、いたのだが。
ヘレナの失敗は、皇帝専用の『機密室』とやらを、作ってやってしまったことだった。
ここには、アニーもカイヤも、ヘレナの許可がなければ入れない。
それも、ヘレナは、実はまったく気に留めてもいなかったのだが。
それは、気休めを言えば、ヘレナは、万能だが、完璧ではないという証拠だけれども。
「なにごとじゃ?」
『第3王女』は、ダレルの指示で、ルイーザとともにヘレナを操るつもりでいたわけだが、最初の作戦は、すでに失敗してしまっていた。
次に指示されていたのは、『セレモニー』の日に、自殺する事だった。
ジャヌアンからしたら、歴史を元に戻すつもりでいた訳だし、ダレルはまた、火星の早期再興と、ついでにヘレナに対する、ある種の復讐を狙っていたわけなのだ。
それは、遠い昔の事だ。
それでも、ダレルはまだヘレナを許せないでいたのだ。
2億年以上が経ったのに!
しかし、そのダレルは、事実上、すでに監獄の中である。
『侵入者の気配があります。人間形態ではないものです。気体化しています。タワーの周囲をグルグルと巡回して、入口を探しているようです。しかし、この建物は、地球人類が作ったものとは、レヴェルが違いますから、入れないでしょう。』
「正体は?」
「不明です。既知の存在ではありません。新種または潜伏していたミュータントかと思われます。」
「ふうん。捕獲できぬか?」
『やってみます。どうやら、相当、甘く見てきているようですね。きっと、うぬぼれやさん、なのでしょう。すきだらけですから。』
「ふむ。まあ、さすがは、我が大きな姉上が作った建物という訳かのう。ルイーザ様は、どうしておる?」
『王宮におられます。』
「またか。まあ、仕方がない。呼ぶのじゃ!」
『はい。では、まずは、捕獲いたします。』
「うむ。」
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ルイーザは、王宮の自室にいた。
表向きは、タルレジャ教会の、お勤めをしに来ていたのだが、実のところは、ヘレナの指示だった。
教母様との面会を行いに、来ていたのである。
「教母さまの、お許しが出ました。どうぞ。」
教会の使者が、2名、うやうやしく、並んで伝えにきた。
『第2王女』、『第2の巫女』と言われる存在ではあっても、『第1の巫女』とは、天と地くらいの違いがある。
相手がヘレナだったら、教母様といえど、体が空いていれば、待たせることなどは出来ない。
教会内の位は上でも、全体的には『第1王女』で『第1の巫女』は、事実上国王と同じである。
顔の見えない国王には、その事実上の権限はない。
だから、ヘレナは、常に王国の絶対権力者である。
おまけに現在は、『国王特権』の発動もしているから、誰も口出しさえできなくなっている。
ヘネシーには、そこまでの力はない。
それでも、こうやって飛び込みで教母様に面会ができるのは、あとは彼女しかいない。
ただし、今ならば、皇帝陛下は、力ずくで面会も可能だろうけれど。
「よく来た。」
教母様は言った。
実は、教母様は、昔から(とはいえ、17年前からに過すぎないが・・・)ルイーザがお気に入りである。
ヘレナは扱いにくいのだ。
まあ、それは、当たり前のことなのだが。
「お座りなさい。」
「はい、教母さま。」
ルイーザは、ふかふかの椅子に腰かけた。
子供のころから、彼女はこの椅子が大好きである。
よく、この上で遊んだものだ。
教母様は、その様子を見るにつけ、遥かな昔の『パル君』を思い出すのだったが。
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「やましんさん、女王さまからの、お告げです。」
布団被って寝ていたぼくに、幸子さんが言いに来ました。
「はい。なんでしょうか。」
「早く消えたかったら、さっさと書き上げないさい。長生きしたかったらば、ゆっくりお書きになりなさい。とのお告げです!」
「はあ。それはまた、ありがたいことです。」
「もう、やましんさん、夏が来ますよ。月に一つしか書いてないじゃアないですか。」
「ふたつは・・・・たぶん、書いてます。他もあるし。。。。。ね。」
「幸子が出ないじゃアないですかあ!」
「あい。すみません。次回出します。」
「あらら、素直な・・・・なんか心配な・・・」
「どっち? 心配してるの? してないの?」
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