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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第七十一章 

 **********   **********



 ヘレナ=女王は『真の都』へと降りて行った。


 ヘレナには、実体はない。


 気体でも、液体でも、この世のどんな物質でも、ない。



   ***  ***



 ネムルト・ダーは、実際に不思議な遺跡だった。


 中村教授は、以前からこの遺跡に、大変興味を持っていたが、訪れたことはない。


「これは、すごいなあ。なんなんだ、これは!」


 教授は、そににあった映像と、大きな石像にすっかり感心していたが、しかしいつの間にか、そこは遺跡の場所、そのものになってしまっていたのだ。


 実際に、そこにいる、・・・そういう状況に変わってしまっていた。


 巨大な建造物と、青い空が広がっている。


 まるで空間全体が、かつて作られたばかりの遺跡本体のある場所と、すり替わっているようだった。


 しかし、あたりに人の姿はない。


「先生、すごいでしょう?」


 そう、声がした。


「おおお、どこから現れたのか・・・。これは、第一王女殿ではないか!」


 住職が、突然目の前に現れた不可思議な光景と、さらにヘレナ=弘子の出現に、驚愕していた。


「どうも、ご住職さま、大変失礼申し上げます。」


「君は・・・・なんなんだい!?」


 教授が、なんの前触れもなく現れた教え子に問いかけた。


「先生、そろそろ、時は来ていたのです。わたくしが弘子である前に、他の何かであることは、おおかたご承知でしょう? 弘子さんのお体を、使わせていただいておりますのよ。」


 実際、弘子の本体は、東京にいる。


 つまり、この姿は、見せかけだけのものだ。


「わたくしは、ここに存在するように見えますが、身体はございません。あなたがたは、視覚だけではなくて、直接に脳でも見ているのです。」


「この、途方もない博物館や、この遺跡も、なのか? これは、幻なのか?」


 教授が、さらに問いかけた。


「単なる幻というものでもありません。ここは多くの死者たちにとっては実在の都であり、具体的に存在します。また、先生や和尚様のように、特別に招待された人にとっても、同じことになるのです。触ってごらんになれば、おわかりでしょう?」


 教授は、目の前の石像に手を触れた。


 明らかに、『ある』。


 触った圧迫感も、またひんやりとしたその温度も、明らかに、そこに、それは実在している。きちんと見えてもいる。


 頭脳は、そう判断しているわけだ。


 目を隠してみる、すると、どうなるのか?


 教授はやってみた。


 見えなくなった。


「そらみろ。見えなくなった・・・ややや・・」


 違う、途中から頭の中に、映像が浮かび上がった。


 手を顔からはなしても、こんどは何も変わらない。


「おもしろいでしょう? 先生? お豆腐の角と違って、思い切り衝突したら、ケガもしますわ。実物と何も変わらない。わたくしもね。」


「すべて、君が、そうさせている? これは、流行りの映画みたいなのモノか? 訳の分からない電脳世界とか・・? マンガの世界みたいな。」


「そうだなあ。でも、すべて同じではありません。ここは物質の世界ではないけれど、しかし、物質として認識は可能なのです。認識が可能ならば、あるということでしょう? 実際のところ、先生方は、元の世界では、行方不明ですしね。あそこには、今はいない。肉体ごと、移動してきているから。」


「どこに?」


「ここに。」


「わからないよ。さっぱり。」


「冥界のようなものですかな・・・」


「和尚様の方が近い! ただし、実際にあるのと、何も違わないのです。わたくしだって、まったくここに存在しないのにもかかわらず、存在しているように振舞っているだけなのだから。でも、明らかに、あなた方にとっては、存在している事と、何も変わりませんわ。」


「やはり、意味をなさないよ。」


「まあ、そうですわね、先生。でも、そうなのです。」


「意味をなさないと言ったろう。それでは、君が何であれ、物質と反応しないのならば、なぜ弘子君に入り込んでいる?」


「さあ。わたくしにだって、わかりませんわ。そうなっているから。わたくしは、神ではないから。それ以上説明なんかできない。蚊さんに、なぜ人間の血を吸うのか説明しろと、言っているような感じです。」


「そりゃあ、違うだろ。」


「ほほほほほ。先生はいつも変わらないですね。レッスンも、いつもこんな感じですものね。そこが先生の良いところですわ。」


「師匠をからかうものではない!」


「はい。先生。ごめんなさい。」


「きちんと、説明しなさい。」


「はい。では、博物館に、まずは戻りましょう、2~3歩、そこから下がってくださいな。」


「なに?」


 教授と住職が、少し後ずさりしてみれば、そこはもう、あの博物館の中の、そのままであった。



 **********   **********



「警部さん、お願いがありますの。」


「はいはい、女将さんのお願いとあらば、聞かなければならないですなあ。」


「ご協力ください。」


「はいはい、なにを?」


「女王ヘレナ様が、火星人とともに、地球征服に乗り出したのです。我々地球側の人間としては、征服されたくはないのですけれど、相手がヘレナ様では、歯が立ちません。ただ、火星とは戦いたくないのです。わたくしとしては、ですけれども。ぜひ助けてください。えーと、この場合、ヘレナ様というのは、すなわち、ビュリアさんのことですけれど。」


「ああ・・・ええ? ちょっと、お話が、すぐには飲み込めないですなあ。」


「まあ、あなたは、あの時、途中で宇宙に旅立ったから、なおさら、そうでしょう。」


「ああ、まあ、では、急いで地球に向かいましょう。ビュリアさんにも会いたいんだが・・・」


「そうしてください。でも、まずは、こちらにいらっしゃる、『タルレジャ王国』の王女様とお話しをして下さい。」


「はあ・・・。そりゃあ、もう。あの、『タルレジャ王国』と言えば、ビュリアさんが地球上で立ち上げようとしていた国ですな。」


「はい。その末裔でいらっしゃいます。ただ、事情があって、もう時間がないのです。」


 ヘレナ=弘子が我慢しきれずに、話しに割って入った。


「あの、警部様、タルレジャ王国、第一王女のヘレナと申します。女王ヘレナ様の、よりしろです。」


「ううん・・・そうきたか。」


 警部2051は、うなった。



 ************   ************






































































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