わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第六十九章
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『我が民としては、非常に心配している。』
『宇宙クジラ』が珍しく、内心を吐露するようなことを言った。
『宇宙クジラ』の進出先は、特定はできていないものの、かなり広範囲にわたっていることだけは間違いが無い。
警部「2051」も、遥かな昔に遥かな宇宙空間で出会ったことがあるくらいだから、その歴史は相当なものに違いがない。
『なにが、そんなに心配なのですかな?』
警部2051は、試しに尋ねてみた。
『彼らの進化は予想以上に早く、急激だった。ここの環境が影響したのであろう。すでに、彼らは人類とは呼べない。』
『それは、どっち?』
『第2種の方である。最初の移住人類は住居が金星型の空中都市であったことから、比較的原形のままであった。』
『地上に降りて、分断が進んだか。』
『そう思うぞ。』
『で、心配な点とは、なに?』
『我が民の情報によると、すでに一部が『地球』に侵入した。』
『なんと。』
『彼らは、自分達こそが、地球人類の元祖であると考えている。また、地球は本来自分たちのものであるとも。』
『まあ、ありそうなことですなあ。』
『彼らは、地球を収奪する考えでいるものと、推量できるが、人類はまだ気が付いていない。警告をしたい気もするが、我が民はそうした行為を行うことはタブーである。』
『一切不干渉。観察するだけですかなあ。』
『まあ、そうだ。しかし、あなたなら可能であると思う。』
『ふん。なるほど。良い情報をありがとう、と言うところかな。これから地球に古い知人を訪ねに行くところだったから。』
『あなたの、もっと古い友人が、復活しているが、困難に陥っている。』
『なんと、あいつか?!』
『あなたの、同僚であり、捕獲の対象であったものだ。』
『女王に封じられてしまっていたはずだが。』
『再生している。しかし、苦悩にさいなまれている。』
『ふうん・・・・・それは、早くゆかねば。どこにいるんだろうか?』
『地球の、コアのほとりに。』
『また、やっかいな場所に行ったものだ。』
『データは差しあげよう。あなたの好きにしたらよい。』
『ありがとう。感謝しましょう。何が欲しいですか』
『地球の、『ラーメン』というものを。我が民は欲している。』
『おかしなことですな。相変わらず。どんなもの? まあ、いいですよ。その『ラーメン』とかいうお宝も、ついでに探してみよう。なに、ビュリアさんならば、すぐに見つけて出してくれるさ。』
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女将さんは、番頭さんに連絡を取った。
『警部2051さんに連絡。ぜひ協力を依頼したい件がある。緊急空間トンネル通信をしてください。』
『お急ぎですか? 目下、帝国創立式典と、第1王女様と第2王女様の婚約の儀の準備でおおわらわです。』
『急ぎます。いつ地球に到着なのかも知りたいです。』
『じゃあ、そっちで話してください。回線をこのまま、そちらで開けるようにしますから。』
『お願い、番頭さん。頑張ってね。というか、第1王女様なら、いまここにいらっしゃるんだ。本体だけね。』
『おっと、訳アリと見た。じゃあ急ぎますから。』
「わたくしは、時間が無くなりそうです。この時空に留まれるエネルギーが、もう少なくなっています。」
「わかりました、女王様。急ぎます。」
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「るんるん、温泉は楽しみだなあ!!」
警部2051は例の歌を歌っていた。
そこに、地球からの通信が来たわけである。
「おやおや、これは、番頭さんですなあ。なあんと、懐かしい。信号を見てくれたんだ。いよいよ地球に近づいたと言うことか。よしよし。」
警部2051は空間トンネル通信を開いた。
『はいはい。こちら2051』
『ああ、出た! こちら温泉地球の女将です。』
『おおお、女将さあん! なんと、お元気でしたかあ?』
『はいはい。それはもう、2億5千万何年か、生きておりますよ。急にすみませんが、地球においでになると言うことで、ちょっと、お願いがありましてね!』
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「総統。間もなく、最後の空間ジャンプを敢行いたします。上手く行けば、これで我が宇宙に帰れるはずです。」
情報局長が言った。
「そうか。長かったな。何年ぶりに帰れそうかな?」
「2億5千万年ですな。細かいところは、未確定です。ピンポイントにはなりません。誤差は1万年というところでしょうか。」
「いいさ、その程度、そう変わらないさ。」
「まあ、我々は、気が長くなってますからな。」
「一応、緊急臨戦態勢。」
「了解。」
空中都市、約1000体が最終跳躍に臨もうとしていた。
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「なんと、来る! 来る! ついに来た!」
デラベラリ先生がうめいた。
「来たか! ついに。」
「間違いないですな。この膨大なエネルギーは他にはない。空中都市が帰って来る。」
「よっしゃ、こんなところで永遠を過ごすなんて、もう、やなこった。嬢ちゃんを助けるぞ。おっと、あんたには、別の目標があったっけか。」
「それは、夢ですから。」
「いいさ、どうせすべて夢だ。こんな悪夢、もう終わりにしようぜ。アマンジャの『一の子分』はどうしてる?」
「くっついてます。あそこも執念深い。」
「よしよし、行こう。久っしぶりに、出迎えてやろう。」
「すぐ、闘うと?」
「いやいや、まずは交渉だ。新しい組合を作らなきゃあな。」
マ・オ・ドクがほくそ笑んだ。
2億5千万年ぶりの、不敵な笑顔だった。
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『ヘレナさん。』
「はいはい、なあに、アニーさん。」
『恐竜は、これで、なんとか全部、片付きましたが。』
「そう、やれやれねえ。よくもこんなに送り込んだもんだ。じゃあ、帰ろうか。弘子さんがちょっと心配だ。」
『あの、その前に。』
アニーは、上手い具合に、時間稼ぎに出た。
「なによ。」
『来ましたよ。』
「うん? お、お、お・・・・・・感じるわ。来たか。『苦痛都市』め。」
『『空中都市』ですよ。これは、もうすぐ、現空間に出そうです。しかし、太陽系からは、ちょっと、はずれますね。でも、それは誤差の範囲です。上手くやりましたね。予想より少し早い。』
「そりゃあまあ、ヘレナリアちゃんが手助けしたんでしょうよ。」
『どの? ヘレナリアですか?』
「知るわけないでしょ。へレナのいるところには、ヘレナリアありだから。」
『まあ、どうせ昔、追放したんでしょ。』
「直接じゃあないわ。」
「ふうん・・・。あなたには。まだ、謎が多いからな。で、どうしますか?」
「まあ、まずは、ドクさまが応対するわ。わしは、それからで、よいじゃろうが。」
「ほう。」
「アマンジャ様の用意をしておく必要があるかなあ。」
「え?」
「いいわ、それは自分でやるからね。ちょっと、帰って来るわね。『真の都』に。」
『はああ、それはもう、どうぞ。どうぞ。ここは、おまかせ下さい。』
「なんか、あなた、うれしそうな。」
『アニーハ、コンピューターですよ。感情はナイデスカラ。ナイ。』
「ふうん、あやしい。ま、いいか。」
ヘレナ本体は、そのまま『真の都』に向かった。
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「やましんさ~ん。どうですか~?調子は?」
幸子さんが、ややこしい体操をしながら言いました。
「まあ、あまりよくないです。季節がうっとおしいです。」
「桜も咲いたし、あったかくなったし。いいじゃないですか。」
「おめ目はかゆいし、お鼻はじゅわじゅわするし、お口はカラカラだし、頭は悪いし、お外に出るのはうっとおしいし。」
「まあまあ、じゃあ、寝ましょう! 寝ましょう!」
「うん。そうする。」
「書くことだけは、ちゃんと書いておいてくださいな。次回は、幸子大活躍の巻ですよね!」
「あ、はい、前向きに考えてます。次次回かも。」
「まあ、そのくらいは、良いですけど。ぱわーあッぷした、・・・・・」
「あああ、はい。はい。なんとかしますから。」
「よしよし。では、お池に行って来ようっと。」
『・・・むむむ、ここで幸子さんに背を向けられると、ほんとに下手したら、孤独死だからな。なんとかしなくちゃね。』
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