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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第六十八章 

 

 ************    ************


 博物館の入口は、ローマの神殿風な、豪華で、巨大なものだった。


「これは、また、もの凄い・・・・・」


 住職が、まさに見たままの感想を述べた。


 教授には、それに付け加えるべき言葉はなかった。


「どうぞ、お入りください。」


 ヘレナリアが、たおやかに、ふたりを誘った。


 ふたりは、20段くらいはある石作りのような階段を上っていった。


 しかし、中村教授は、これが、たとえ特別な石作りにしても、あまりに表面がつるつるで、奇麗すぎる気がしていたのだ。


「これは、何の石でしょうか? 模様もないし、大理石でも無さそうだし、まるで氷のようでもありますが、滑ったりもしない。滑らないと言う事は、つるつるじゃあないということでしょう。」


「これは、石ではありません。しかし、金属という訳でもない。まあ、駄洒落になりますが、これは女王様の『意志』の固まりなのです。物質という訳ではないのです。」


「まあ、いまさら言うのもなんですが、やはり変ですよ。物質じゃないものが、こうして足元にあるはずがない。」


「あなた方は、想像を絶した『意志』の力が生み出した、『物質』によく似たものの上に、いらっしゃるのです。」


「それを、分かれと言う方が、無理ですよ。」


「夢の中の世界という訳ですかな?」


 住職が、また手を合わせながら言った。


「そう考えた方が、分かりやすいかもしれませんが、それでもこれは夢ではないのです。」


 ヘレナリアは、その両手を差し出して、まるで天使のように、二人が前に進むように促した。


      **********  



 受付には、にこやかな女性と男性が二人立っていた。


「いらっしゃいませ。どうぞ、ご自由にご覧ください。当館には、制限時間等はございません。永遠にご覧いただいて結構です。」


「はあ・・それは、どうも。」


「すさまじい、話ですな。」


 住職がしきりに感心している。


「24時間営業というお店はあるが。永遠にどうぞ、と言われたのは、はじめでですな。」


「そりゃあもう、人類始まって以来でしょう。」


「はっは、ぼくも、24時間営業というのは、したことないですなあ。」

 店主が久しぶりに口をはさんだ。


「わたくしは、ご遠慮いたしておきましょう。お三人でどうぞ。受付に戻られましたら、再び現れますので、それまでご自由にどうぞ。なお、ここで、いくらいてくださっても、最終的には、元の時間にもどりますから。ご心配なく。あなたがたも、ここでは年を取りませんから。」


 ヘレナリアは、あいかわらず、いかなる感情の変化も示さないで解説している。


「浦島効果などはない・・・と。しかし、年をとらない、なんて事は、いくらなんでもないでしょう。こうして生きてるんだから。」


「はい、ありません、し、また、実際そうなのですよ。はい。・・・では。」


 ヘレナリアは、『歩いて』、向こうに消えた。


「まあ、行きましょう、滅多にないチャンスですぞ。」

 こんどは、店主がうながした。

 

 彼が、ここでは案内役という事らしい。



***『地球人類文化の歴史』***



 という、コーナーが最初にあった。


 小さな石の加工品らしき物が、単独で展示されている。


「なんでしょうか。解説文がある。日本語ですなあ。」


「ここでは、来ている方の意識を読み取って、その方にとって読みやすい言語が表示されます。」


「自動的に?」


「そうですなあ。」


「むむ。それは、しかし。危険なのでは?」


「悪用しませんから、ご心配なく。だ、そうです。ははははは。」


「ふ~ん。 なになに・・・これこそ、地球の人類の直接の先祖が、初めて自ら作った記念すべき石器そのものである。人類のモノづくり文化の、まさに第1号作品。・・・なあんか、本当かなあ?・・・ アフリカで採取。」


「いやいや、本当らしいですぞ。女王様が、じかに観察していらっしゃったとか。」


「はあ~。」


「これは、次もすごいですぞ。『人類の祖先が、初めて描いた絵である。地面の砂に描いたものを、惑星生体コンピューター「アーニー」が撮影したものである。』 なんですかな。」

 住職があきれ顔で言った。


「『アーニー』というのは、女王さま専用のコンピューターだそうです。詳しいことは、僕も知りませんが

ね。現在も稼働しているとか。」


 地面の砂の上らしきところに、丸と横線がある。


「これは、太陽と地面を描いたものらしいです。月と地面ではないかとも言われます。」


「むむむ。なんとなく、それらしいが・・・」


 ここには、このような、妖しい展示物が多い。


 人類が初めて自ら起こした、『火種』の写真とかもある。


 当時の夜の星空を撮影した写真も、ついでのようにあった。


 専門家が見たら、現在の空との違いを、すぐに見とっただろうけれども。


「この数字は?なんですか?」


「ええ、どうやら、これらの事象が起こった時を記録した、コンピューター『アーニー』が特定した『人類文化時間』と『地球時間』さらに、『太陽系時間』だそうですがね。起点は、さっきの最初に石器が作られた時と、地球に最初の生命体が現れた時、それと、太陽系に初めての生命が現れた時、なんだそうです。それより前は、マイナス表示だとか。太陽系や、火星や、金星の生命の起源に関するコーナーは、この先にずらっとあるのだそうですが、あまりに遠いのでねぇ。ぼくは、そこまでまだ、行ってないですよ。歩いてたら、100年くらいは、かかるとか。まあ、御希望があれば、人間用の『キャリー・カー』を出しますよ。それなら、1日くらいで行けるとか。」


「はあ、考えましょうか。あの、壁にある表示は、何でしょうか? 『地球人類以前の地球の文明?』 なんだそれは。」


「ああ、それはね、地球人が文明を築く以前にも、火星人とかが地球に来ていたらしいですな。その記録です。これは、まあ、興味のある方には実に面白いし、中には、実に面白くない方も、あるらしいので・・・それから、実際、誰にもおもしろいのは、この上の階にありますですぞ。ギリシア時代の彫刻とか、ほとんどピカピカの織物とか、食器とかもありますが、とくに、エジプトに長く所蔵されていた、沢山の文書とかが、見ものです。ああ、当時の音楽を記録した映像とかも、あります。」


「それは、すごいなあ。」


「はい。さらに、先生にとって貴重だろう物は、ベートーヴェンさんの、『第5・第6交響曲』とか、「第9交響曲」の初演時の映像もありますし、モーツアルトさんの演奏会の映像とかもあります。」


「え?ショパンさんの演奏している映像とかも?」


「ああ、それもちゃんと、あるらしいですよ。ぼくも、まだ見てないけども。ただ、それだったら、ここには、ご本人たちもいますからね。人によっては、リサイタルもしていますよ。時々ね。べー先生あたりは、ゆったりと閉じこもっていて、あまり外には出ないようですがね。」


「はあ?! そりゃあ、すごい。」


「ああ、そうだ、たしか、もうすぐ、タールベルクさんが、このあと、ここのホールで弾くはずですよ。彼はいま、さかんに活躍をしています。」


「なんと、あの、ジギスムント・タールベルク?」


「はい。お聞きになりますか?」


「いやあ、ぼくは、そうしたいがあ。。。。ショパン時代開幕時の大名人ですからなあ。」


 教授は、住職を見た。


「いいですよ、拙僧は、それでよい、そのタール、何とかさまも、聞いてみたいものですな。」



 **********   **********



 警部2051は、太陽系に入る前にプロキシマ・ケンタウリに寄り道していた。

 ここには、火星と金星からの移民団がいるはずである。


 まだ、絶滅していなければ。


 人類にとって、2億年は決して短くはない。


 進化の途中だった人類の事だから、そのままでいるということも考えにくい。


 おまけに、人類は、宇宙全体から見ても、非常に好戦的な種族でもある。


 先住民である、例の『宇宙クジラ』が、どう動いたのかも気にかかる。


 警部2051の心配は、大体当たるものである。


 プロキシマ・ケンタウリ方面は、大荒れになっていたのである。


 人類は、みっつの種族に分かれていた。


 そうして、一億年に渡って闘い続けて来ていた。


 彼らが、これまで地球に目を向けていなかったのは、ほとんど偶然の産物であって、今頃になり、ようやく干渉しようとし出したのには、それなりの事情というものがあった。


 『第1勢力』であった、かのアダモスの子孫たちは、のちに台頭してきた『第2勢力』と『均衡政府』を組んで長く平和を保ってきていたが、『第3勢力』の出現と、その急速な拡大の前に、激しい闘いが始まり、『第1勢力』は、滅亡寸前に追い込まれてしまった。


 地球は、彼らの避難先としては、やはり最高だったのである。


 『宇宙クジラ』には、こうした人類の『闘い』というものは、どうしたって理解ができない。


 ほっておけば、共倒れでいずれ滅亡する事だけは確実だった。


 『宇宙クジラ』は気が長いのである。


 彼らが、外部生命体たちと話し合いをすること自体が、かなり珍しいのだから。


 久しぶりに現れた『警部2051』を、さっそく話し相手として捕まえたのは、奇跡というべきほどのものだったのである。



 

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