わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第六十三章
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亡くなったはずのレコード屋の店主は、おそらくは、もともとあまり人好きのする性格ではないのだろう。
商売人という感じは全くしない。
技術屋さんか、設計屋さんという感じの人である。
音楽もそうした観点から見ていそうな気が教授はした。
それは、『職人気質』という事から言えば、大いにあり得ることである。
「まあ、来てしまったものは、仕方ないですなあ。」
彼は、ぽつんとつぶやいた。
「あの、それはまた、どのような意味でしょうか・・・」
中村教授は、指がやや震えるような感じがしながら尋ねた。
「いやね、幽霊に会いたいなんて、まあ、誰しも思わない事もないが、実際に会ってしまったら、困るでしょう?」
「あなたは、ゆうれいさん、ですか?」
「ふふふふ。」
店主は不気味に笑ったのである。
「迷われたのか?」
住職は、やや、きつく言った。
「迷ったんではなくて、まあ、メッセンジャーと言うか、お告げというか、警告というか、御案内役と言うか。」
「いやいや、だんだん奥が深くなってます。連れてかないでくださいよ。」
教授が慌てて言った。
「まあ、そうおっしゃらずに。この部屋自体が、すでに異空間に移動しておりますところですから。」
「はああ???」
二人は、同時に声を上げた。
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女王へレナは、死者の意識を肉体から解放して、別の場所に移動させることができる。
彼らの意識を、通常の光では見えない粒子に変換させてしまう。
しかし、彼らはまた、視覚で捉えることができるようにも変化できる。
幽霊と言っても、物理的な存在なのだが、地球人は、まだそこまで観測する技術がない。
「ぼくらは、自分が何なのかは、わからないのです。肉体は無くなったが、有るように見せているし、着衣などもこうして表現ができる。」
「表現ができる?」
教授が繰り返して言った。
「そう。そういう言い方になります。着替えだって可能だ。ほらね。」
店主は、いつの間にかスーツ姿になっていた。
「あくまで見せかけであって、実際には服などないのですが。あるように見えているだけ。」
「それは、何かがそこにあるから見えるのであって、なにもなければ見えるはずがない。」
住職が反論した。
「ご住職は、宗教人らしくはないですな。」
店主があっさりと答えた。
「宗教の問題ではなくて、常識の問題です。ないものは、見えない。」
「あっても、見えない物はある。ダークマターとか言われるものとか。」
「状況証拠はあっても、まだ未知の領域と聞きますが。」
教授が言ったが、確信はない。
「でも、ぼくは見えている。さあ、着きましたよ。外に出て見ましょうか。」
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「弘子さんが言っていることは、ヘレナが言ったことと少し矛盾するんだ。」
シモンズは疑問を呈した。
「君は、ヘレナを滅ぼすために作られたと言う、でも、ヘレナは、君を作ったのは自分だと言っていたし、最高傑作だと自慢してもいたんだ。折り合わないよ。」
弘子=ヘレナは微笑みながら答えた。
「ヘレナは、自分で思っているほどには万能じゃない。それは誤解なのです。」
「それは、どういう意味?」
「本当の女王様は、彼女ではないと言う意味ですわ。」
「ふうん。じゃ、誰が本当の女王様なの? 答えによっては、ぼくの立場が大幅に変わるかもしれない。」
「わたくしが知ってるわけがないでしょう?」
「なんだい、それは、漫画みたいだ。じゃあ、誰が知っているの?」
「宇宙海賊、マ・オ・ドク。」
「はあ? どこにいるの?初めて聞く。こうなったら、海賊でも悪魔でもいいや。」
「さあ・・・」
「お話にならないよ。それじゃあ。」
「そうでもないわ。彼の居場所は、恐らくは、リリカ様が知っていると思う。」
「ほう?ならば、話が違ってくるのかも知れないね。すぐにリリカに会いに行こう。」
「まずは、宇宙警察の警部さんからです。大変な力を持った人物だけれど、正体はいまいちわからないのです。でも、ずっと行方不明になった同僚を探していた方で、その同僚は火星で仮に果てたことが、かつて解ったのですが、それこそがブリューリだったのです。そこはヘレナからも聞いていますが、その先は、わたくしには教えてもらえていないのです。いま2億5千万年ぶりに地球に接近してきているとアニーさんがヘレナ様に報告してきていました。この人の協力をいただきましょう。」
「じゃあ、その人に、すぐ連絡しようよ。」
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女王へレナは、ここが大きな山場になると判断した。
彼女の地球=この宇宙の支配、に関する本当のプランは、まだ非公開である。
当然、弘子=ヘレナにも、ルイーザにも、リリカにも、ダレルにも教えるつもりはない。
なぜ、この太陽系に命が育まれ、人間が生まれたのか?
一番最初に、この回答に近づきそうなのは、シモンズだろう。
それでも、気がつたついたときには、後戻りなんかできないようになっているに違いない。
『お池の女神様』たちも、『地獄の鬼や亡者達』も、そうして、『真の都』の祝福された人々も、すべては新しい地球の実験モデルだったのだから。
そこには、沢山の副産物だって生まれてきた。
『ミュータント』もそうだ。
ただし、『紅バラ組』は、まったく別である。彼女たちはヘレナの私的な趣味の領域に属している。
地球が最終的な『極楽』になる日は近い。
時間は停止し、未来と過去と現在は統一される。
ヘレナの故郷が、きっと浮かび上がって来るだろう。
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中村教授と住職さんは、きわめて異常な世界に踏み込んでいた。
「ここは、ななな、いったい、なんですか?」
彼らは、空中の展望台にいた。
空の上に空いた、大きなテラスである。
「これが、『真の都』。生きたままの人間でここを見たのは、あなた方が初めてですよ。」
店主がそう言った。
「『真の都』って、いったいなんですか?」
住職があっけにとられたまま、つぶやくように尋ねた。
「やがて、世界はこの都に吸収されます。ここは『真の都』、つまり『死者の都』です。」
「死者?」
「そう、ご住職、あなたの専門分野でしょう。」
「む・・・・」
「普段は女王様以外は扉を開けられない。ぼくになんかは、とても無理。でも、今回は特別ご招待だそうですから。ほら、『使者』がやって来た。字が違いますがね。」
ひとりの、すらりとした女性が、素足で宙を歩いて来るのだった。
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『池の女神様』たちは、アヤ湖に集まって会合を開いていた。
主催者は『アヤ姫様』である。
世界の各地から、池の女神様たちが集まってきていた。
長老もいる。
それは、女王が地球の開拓に乗り出したころからの精霊だ。
そうした中では、紀元後になって生まれた女神様たちは、新しい存在の方だけれど、ここで中心になるのは彼女たちだ。
皆、大きな力は持っているが、中にはちょっとおどけ役の女神様もいる。
日本合衆国から来た『幸子さん』がそうだ。
多少おっちょこちょいだが、全ての女神様たちに愛される、特別な存在である。
日本のお饅頭が大好きで、ここにも大量の『お饅頭』を持ち込んで、皆に配っていた。
「では、再開します。」
アヤ姫が告げた。
「少し、もめましたが、本題に移りましょう。」
「了解!」
幸子さんが叫んだ。
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「ふふふふ・・・・今に見よ。 やましんを苦しめた、悪霊どもめ!!
ふふふふ・・・・・・・・・・・・
あ、寝違えた。。。首が・・・・・・首が・・・・ぎゃあ・・・・罰が当たった!!勘弁してくださあい。、も、しませんからあ! ・・・・・・」
「やましんさん、大丈夫? 相当、うなされてましたよお。」
「あらら、寝てましたか・・・」
「ふん。まあね。ああ、でも、出ましたね。幸子が! ついに幸子が地球を救うのですね!」
「うん・・・・まあ、そうだな。ははははは。」
「やた~~! 楽しみい~~~!」
『どうしよう・・・・・滅亡させようかと思ったりも、していたけれど・・・考え直そうかしらあ・・・・・・』
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