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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第五十八章 


 ************   ************


「どう思われますか?ヘレナさん。」 

 元女王へレナが尋ねた。

「あやしいものね。ブリューリが人間の味方になるなんてありえない。そうでしょう?」

「まあ、そうですよ・・・ね。」

「そうよ、絶対にありえない。ブリューリは、最終的には人間を食べなくては生きて行けない。自分の仲間を増やそうとするのは、彼に与えられた宿命です。そこは、もうけっして直らない。」

「直りませんか?」

「直らないわよ。絶対に。」

「まあ、そうでしょうねえ・・・。」


 それでも、二人のヘレナは、少し考え込んでいたのだった。


 ************   ************


「このたび行われる、聖なる『婚約の儀』の式典に当たって行われる、『神聖秘儀』に関して、太古からの伝統にのっとり、あなたに、その行うべき事のご依頼を、ここに申し上げます。」

「承りました。」



 侍従長がやるべきことは、これだけであった。

 王宮と教会で行われる、ほとんどすべての儀式について侍従長は熟知しているが、いくつか関与が許されないものがあった。

 

 それらはいずれも、第一王女、つまり第一の巫女が司る祭儀の中でも、特に秘中の秘とされる儀式であり、そこには教母様でさえ、関わることが許されていないかった。


 さらに付け加えれば、そのうちのいくつかは、そうした儀式が存在していることも秘密であり、他言してはならないものだった。

 侍従長は、そうしたものが存在することだけは知っていたし、そのうちの二つ・・・つまり王女様や王子様の『婚約』と『結婚』に伴う特別な儀式だが・・・・については、形式的に、こうして『大魔王』にその儀式の開祭を依頼しなければならない。

 ただ、大魔王に依頼するのは、いつも、というのでもないのだが。

 今回は、第一の巫女様から、その指示が出ていた。


 まあ、それ以外の『秘密の儀式』に関しては、侍従長でさえ、ほぼ、何も知らないことに、なっていたのだが。


 ただし、この侍従長さんは、歴代侍従長の中でも、最長の経歴を誇る人であったし、また、第一王女からの信頼が絶大だった。

 『不死化』を求められていることからも、いかに第一王女から好かれているのかが、よくわかると言うものである。


 そこで、彼は本来知らないはずの、これら『秘密の中のまた秘密の儀式』の内容についても、実は多少の知識があったのだ。

 第一王女が、なぜかその情報を、遠回しにではあるが、提供してきたのだ。


 それは、本当に『他言無用』の儀式であり、口にすることさえも、憚られるものであったのだが。


   *****     *****


 『大奉餐典』は、この世の中には存在しない人間だった。

 彼にはこの北島にでさえ、住民登録もなく、健康保険なども一切ない。

 納税もしていない。

 賃金も、まったく得ない。

 食料などは、すべて現物支給である。


 要するに、かれは人間としては扱われておらず、その存在すら認められていないのだ。

 ただ、神と『偉大なる女王』にのみ、仕えるのである。


 それでも、彼は、人間なのである。

 幽霊でも、悪魔でもない、あたりまえの人類なのだ。

 なのに、母も父も存在してはいなかった。



 『婚約の儀』は、実のところ、かなり久しぶりである。


 第一王女たちの父、つまり現国王は、外国にいて王室からは事実上離籍していたので、こうした儀式は行われていない。

 その父は、神のお告げによって、儀式の対象からは、外されていたのだった。

 その他の子供たちも、みなそうだった。


 しかし、歴代の王女や王子の中では、この儀式の対象外とされた人物の方が、むしろ圧倒的に多いのである。

 それは、恥とするべきことではなかったどころか、どちらかと言えば、本人たちには、実のところ、ありがたいことだった。


 なにしろ、『婚約の儀』は非常に苦しい儀式であり、あまりよい噂はなかった。


 それは、アヤ姫の例を見ればよく分かる。


 この儀式を受けた王女や王子は、短命に終わることが多く・・・つまり神にひどく魅入られた存在で・・・て、長生きはできないと、されてきている。

 特に、第一の巫女とか第二の巫女などの配偶者は、結婚後、ほとんどが早死にする。

 結婚後、せいぜい2年以内には。

 ただし、優秀な子供だけは、きちんとできるのは、これもまた不思議だったが。


 今回は、今のところでは、神は二人の王女を『祝福』していたのである。

 それは、二人の婚約者が、非常に危ないと言うことでもあった。


 しかし、これは、いずれにせよ、一般の人からすれば、ずいぶんとおかしな話であった。


 第一王女は、第一の巫女であり、神の意志は、最終的には彼女を通じてのみ伝えられる。

 第二の巫女と第三の巫女は、その分身とされている。

 国王は、神そのものに合体しているので、第一王女と第二王女(時たま第三王女)以外には一切接触して来ないし、予言もしない。


 しかし、今、国王は第三王女によって逮捕されており、神格化は事実上否定された格好になってしまっている。

 ややこしい時期にさしかかって来ていたのだ。


 南島の住民は、こうした微妙な事柄でも、自由に好き勝手な議論をしていられたが、北島の住民は、今でもこれらに、一切疑問を持つこともない。


 王室や教会は、それによって長く守られてきていたのだ。


 ここが、遥かな昔、ビュリアによって建設された、地球最古の火星人の移住地であることは、宗教的な伝説としてのみ存在していて、科学的には王国政府自体が、認めてはいないことだったが。


   *****     *****


「準備は、抜かりなく行われなければならぬ。」

 彼は、まだ若い後継者に語った。

「恩師は、この儀式をご覧になったのですか?」

「見た。実際に経験した。おや、信じられぬかな?」

「いえ、わたくしは若輩です。すべての真実は、あなたの中のみです。開示されていない以上、疑問を持つ余地などございません。」

「そうだな。しかし、まあ、わしの存在は、間もなく消えよう。」

「まさか。」

「いや、これは、そなたにだけは伝えておくが、神は、つまり、第一の巫女さまは、そのように予言しておられるのだ。これは、わしの最後の大仕事であると。」

「第一の巫女様の予言となれば、否定のしようもありません。しかし、その後はどうなるのですか?」

「そなたが、継ぐことになろう。」

「いやいや、わたくしは、単なる見習いにすぎませぬ。捨てられた・・・いや、これは失言いたしましたが、・・・正式な存在ではないのです。知識も経験もありません。とてもではありませんが、出来ない事です。」

「正式? 知識? 経験? すべて、不要である。わしが認め、すなわち・・・『第一の巫女様』が許せば、それらは自然に与えられるものである。受け入れる覚悟さえあれば、問題はない。」


「はい。恩師がそのように言われるのならば・・・。」


「まあ、不安ではあろう。わしもそうだった。しかし、もうすでに、あれから3000年はたったのだ。今、そなたに受け継ぐべき時期となったのだよ。これから、今回、いったい何が行われるのかを、そなたに教えよう。なに、実際にはそう難しい事ではない。『調理』をし、一定の格式に基づいて、新郎新婦殿に、それを提供するのみなのだから。ただし、ここでの『食事』は、きわめて神聖なものであり、絶対に世間に出てはならないものだ。まあ、我々から出ることは実際には、ない。そなたも、ここでのみ生き、ここで終わるのだからな。その重荷を背負うのは、ふた組のご夫婦なのだから。」


「なるほど。」

「そうして、この後は、二月ごとの『聖なる儀式』も、そなたに譲ることとなる。」

「なんと、おっしゃるのですか。」

「それほど驚くことではない。内容は、より簡素で、さらに簡略化されてきておるので、世間のいわゆる『食堂』でのお食事のようなものになっている。10万年ほど前までは、それが毎日で、さらに豪華であったが、ここまで縮小されたのには、時代の流れがあったのである。」

「なるほど。」

「では、その具体的な内容を少しずつ、話そう。来なされ。」

「はい。」


 二人は、地中深くにある『聖殿』の中を、ゆっくりと歩きながら移動した。


 ************   ************


 警部2051は、すでに目標の銀河系に突入した。

 実際、あの太陽系は、もうすぐそこである。

 温泉が待っている・・・はずである。


「まあ、あいつの墓参りもしよう。いや、もうないかもな・・・。」

 警部は、真空崩壊の現場を見学してきていた。

 ビュリアさんに、その報告もしたかった。


「予約をしたほうが良いかなあ。まあ、太陽系に入ってからで、いいか。しかし、『温泉地球』さんに、ちょっと連絡入れてみようかな。そこで言えば、2億5千万年ほど経っているわけだが。」


 彼は、空間の隙間から信号を出した。

「届くのかなあ・・・」


 ************   ************


























 


 

 







 




















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